夢と知りせば<10>

2017-07-12 | ss(夢と知りせば)
※平安・高彬×現代・瑠璃のパラレル設定です。苦手な方は閲覧ご注意ください。





「高彬、いらっしゃ・・、い・・・」

車宿りまで出迎えてくれた融は、ぼくの後ろに佇む瑠璃さんに気が付くと、途端に言葉を途切れさせた。

口をポカンと開け、瑠璃さんを見ている。

瑠璃さんはと言うと、ぼくが言った「恥ずかしがり屋で人見知りする姫」にでもなり切っているつもりなのか、小首を傾げ伏し目がちに、あるかなきかの微笑みを湛えている。

何だ、こんな風にも振る舞えるのか。

だけど、瑠璃さんらしくなくて、何となく笑いを堪えていると

「高彬!」

融に隅っこに引っ張られてしまった。

「何だよ」

「何だよじゃないよ。誰?あの姫」

「・・う、うん。まぁ・・」

「まさか高彬の恋人の姫なの?」

「いや、うーん、まぁ、何て言うか・・」

この場で、瑠璃さんの正体を明かすわけにもいかないし、どこまで融に話すかも、考えて見たら決めてなかったので、曖昧に返事をすると

「いいなぁ、高彬。可愛い姫、見つけたね」

「え」

融は肘で突いてきた。

「いや、だから・・」

「隠さなくていいよ、高彬。さ、部屋に行こう」

融は少し気取った仕草で歩き出し、瑠璃さんに(行くよ)と目配せをすると、ぐっと腕を掴まれた。

「何、こそこそ話してたのよ、2人で」

「融が瑠璃さんのこと、可愛い姫だってさ」

そう言うと

「へぇ!」

瑠璃さんは目を丸くして

「なかなか素直で良い子じゃない。融って言うの」

ふむふむ、なんて頷き、次いでニッと笑うと

「子分にしーちゃお」

変な節を付けて言い

「子分て・・。瑠璃さん、恥ずかしがり屋の姫の線で頼むよ」

「分かってる、分かってる。任せなさいって」

後ろ手に手をヒラヒラさせながら、子分の待つ、いやさ、融の待つ部屋へと向かい歩き出す。




******



融はいとも簡単に子分になり下がった。

かと言って、瑠璃さんが何かを言ったとか、させたとか、そんなんじゃない。

人間には、生まれながらの関係性が存在するんじゃないかと思えるほど、融と瑠璃さんの上下関係はあっけないほど、すぐに決定した。

でも、よくよく考えてみたら、それも無理のない話で、融にしてみたら<初めてみる同年代の姫>なわけで、そうなれば自ずと気を遣うことになるし、融の元々の性格からして、初対面の相手に主導権を握るとは考えずらい。

「少し、お邸の中を見て回ってもいいかしら?」

「う、うん。今日は父さまはいないから、いいけど・・・」

思ってもみなかった瑠璃さんの提案に、面喰ったように融は頷き、瑠璃さんはスックと立ち上がると部屋を出て行った。

「お邸探検が趣味な姫でね」

慌てて説明すると

「へぇ・・。顔は可愛いのに、変わってるんだね」

「うん。少しね」

瑠璃さんは何かの手掛かりを探してるはずで、見つかって欲しいような、欲しくないような複雑な気持ちだった。

融と世間話をするうち、しばらくすると瑠璃さんが戻ってきた。

ぼくを見ると、小さく頭を振り、何も見つからなかったようだった。

「じゃあ、今日はこれで帰るよ」

「うん。また、おいでよね」

「ねぇ、融」

「へ?!ぼく?」

瑠璃さんに名前を呼ばれた融は、自分の鼻の頭を差して言い

「何よ。融って名前じゃないの?」

「そうだけど・・」

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

瑠璃さんが融に向き直った。







<続>

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2 コメント

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Unknown (かのこうママ)
2017-07-12 23:58:37
千年後の瑠璃さんには、
融という名前の弟はいないんですね
(違う名前の弟ならいるかもしれないけど)
瑠璃さん、子分て(笑)
高彬くんは子分じゃないのに、
融くんは、いきなり子分認定(笑)
可哀想な融くん……
>>かのこうママさま (瑞月)
2017-07-14 12:53:52
かのこうママさん、こんにちは。

守弥が出てきたら、きっと守弥も子分認定だと思います(笑)

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