バレンタインのその前に。

2017-02-13 | ss(バレンタイン)
社会人編のバレンタインネタです。
本編に挟み込めなかったので、こちらにSSとしてアップします。




*********



「あぁっ!」

唐突にあることを思い出したあたしは、ここがカフェであることも忘れて、大きな声を上げながら立ち上がってしまった。

少し離れたテーブルでは、高彬が驚いたような顔であたしを見ている。

もちろん、他のお客さんも、何事が起ったのかと、じろじろとあたしを見てる。

「・・・すみません・・」

小さく呟きながらイスに座ると、直後に

【どうした】

高彬からメールが入ってきた。

【何でもない】

すぐにそう返信はしたけれど、あたしは内心

(どうしようーー!)

と焦りまくっていた。

明日、バレンタインだと言うのに、まだ何の準備もしていないじゃないの!

もちろん、バレンタインだと言うことはわかってはいたのよ。

でも、ずっと仕事が忙しくて、やれ企画書だ打ち合わせだ、日帰り出張だ、と毎日バタバタと過ごしてて、そのうちそのうち・・・と思ってるうちに、コロッと忘れてしまっていた。

あー、どうしよう。

付き合って最初のバレンタインだし、ここは気張って手作りチョコでも渡して、あたしの株をどーんと上げてやろうと思ってたんだけどなぁ。

タイムリミットは今日一日。

あたしみたいなお菓子作りの超初心者が、今日の今日で、いきなり上手に作れるのかしら?

まさか、このためだけに小萩を東京に呼びつけるわけにも行かないし。

かと言って職場の女子にでも聞いたりしたら

「誰にあげるの?」

なんて興味津々で聞かれるに決まってるし。

はぁ・・・・

どうしよう・・・



******



「───で、ぼくに白羽の矢がたったと、そう言うわけ?」

その日の夜、あたしは高彬のマンションのキッチンに立っていた。

「・・うん」

あたしは神妙に頷いた。

「つまり、ぼくは、瑠璃さんがぼくにくれると言う、そのチョコを一緒に作ると、つまりはそういうことだよね」

「・・・うん」

「・・・・」

あの後、いくら考えても、チョコ作りを教えてくれそうな人が見つからず、万事休すと思い掛けた時、ふと思い浮かんだのが高彬の顔だったのだ。

いつだったか、一緒に朝ごはんを作った時、案外、手際が良かったし、高彬本人も

『多分、瑠璃さんよりは料理は上手だよ』

なんて言ってたくらいだし。

確かに、万事そつなくこなす高彬なら、チョコの一個や二個、ちょちょいのチョイで作るんじゃないかしら・・・

「それでね、敵の手を借りるのは何とも無念とは思ったんだけど、期限は明日だし、もうこうなったら背に腹は代えられないと思って・・・」

「敵・・・」

高彬も、一体どんな顔をしていいのか判らないみたいで、何だか2人してキッチンに佇んでしまったけれど、でも、さすが仕事の出来るオトコの切り替えは早かった。

「いろいろ突っ込みどころはあるけど、とにもかくにも瑠璃さんが今日中にチョコを作りたいと言う事だけはわかった」

そう言うとパソコンの前に立ち、あたしを手招きした。

「材料は何を買ってきたの」

「チョコ、生クリーム、ココアパウダー、グラニュー糖、アーモンドダイス、リキュール・・・」

あたしの言葉を聞きながらカタカタと入力して行き

「トリュフチョコならいけそうだよ」

「いいわね、それで行きましょ」

ワイシャツの袖を捲り、包丁でチョコレートを刻む高彬の手付きはなかなかのもので

「上手ねぇ」

なんて手元を見てたら

「瑠璃さん、お湯沸かして」

「生クリーム、ボウルに出して」

と色々指示を出してくるので、その都度

「はーい」

といい返事をして、有能な助手ぶりをアピールしておいた。

そうこうするうちに部屋中に甘い匂いが充満してきて、無事、トリュフチョコが完成し

「すごい!売ってるやつみたい!」

あたしは歓声を上げた。

これを綺麗にラッピングすれば、買ってきたと言っても通るくらの出来栄えで、あたしはつくづく高彬の器用さに感じ入ってしまった。

「すごいわぁ、高彬。この腕前があれば、どんな人のハートも射止められるわね」

ついつい言わずもがな、なことまで言ってしまうと

「自分のハート射止めても仕方ないけどね」

高彬は笑い

「まさか、自分用のチョコを作る事になるとは思ってもみなかったよ」

肩をすくめてみせた。

「・・・さて、と」

時計を見ると10時半を回ったところで

「片付けて、そろそろ・・・」

洗い物をしようと水を流し始めると

「まさか瑠璃さん、このまま帰るとか言わないだろうね」

「・・・・」

「チョコ作りをさんざん、やらせておいて」

「・・・・」

「プレゼントがチョコだけってことはないよね」

「えーと、厳密に言うと、バレンタインは明日で・・・」

「後1時間もすれば、明日だよ」

「・・・・」

「1時間くらい、すぐ経っちゃうんじゃないかなぁ」

「・・・・」

「敵の手を借りたんだろ?」

「・・・」

「このまま借りを作ったまま帰るなんて、瑠璃さんらしくないなぁ」

「・・・・・」

ふと、キッチンの台に置いてあるラッピング用の赤いテープが目に入った。

後ろを向き、チョーカーみたいに首に巻いてリボン結びにする。

そうして振り向いて目を閉じ

「・・・どうぞ、お好きにお召し上がりください」

そう言うと、高彬が声を出さずに笑う気配が伝わってきた。

「では、遠慮なくいただきます」

笑いを含んだ声で高彬は言うと、するりと首のリボンを解き、ついでに服までするりと脱がし、出来るオトコの手際の良さで、あっと言う間にあたしをベッドに運んだのだった。




<終>

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4 コメント

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Unknown (みそ)
2017-02-13 20:42:47
みずりんさん、こんばんは。

さすが『出来るオトコ』は違いますね~。
自分宛のチョコまで手作りしてしまう。(笑)
これぞ『スパダリ』ですよね♪( *´艸`)
そして瑠璃の武士っぷり。
なんとも可愛らしい。(((*≧艸≦)

……はっ。((゚□゚;))
もしや、この後は生クリームで……!?(笑)
Unknown (ベリー)
2017-02-14 03:17:57
もう、この後二人でチョコまみれで❤️
とにもかくにもイチャイチャしたいんですね
やっぱ高彬の腕まくりは何度読んでもキマすね。
ごちそうさまです!笑
>>みそさま (瑞月)
2017-02-14 20:39:50
みそさん、こんばんは~。

>これぞ『スパダリ』ですよね♪( *´艸`)

ですよね~(*^^)vなんて素敵な高彬!

そしてオトコ前(?)な瑠璃。

>もしや、この後は生クリームで……!?(笑)

続きは後程~~!
>>ベリーさま (瑞月)
2017-02-14 20:41:50
ベリーさん、こんばんは~。

>とにもかくにもイチャイチャしたいんですね

そりゃあ、バレンタインの夜に2人っきりですもんね!

>やっぱ高彬の腕まくりは何度読んでもキマすね。

私も大好きなんです。
何回でも書いちゃいますよ~(笑)

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