夢と知りせば<12>

2017-07-17 | ss(夢と知りせば)
※平安・高彬×現代・瑠璃のパラレル設定です。苦手な方は閲覧ご注意ください。





「はい、今日も元気に行ってらっしゃ~い」

物忌みが開けた日の朝、瑠璃さんは車宿りまでぼくを見送りにくると、乗り込むぼくに向かい、陽気に両手を振ってみせた。

歳の行った回りの女房たちは、そんな瑠璃さんを(可愛くて仕方がない)とでも言うような目で見ている。

(お・ん・みょ・う・じ)

目が合ったぼくに向かい、瑠璃さんは口だけ動かして言い、ぼくも(わかってる)と口だけ動かして言い頷いた。

牛車の中で、まずは誰に話を持っていこうかと当たりを付ける。

千年後から人が来たたことを伝えるわけだから、誰でも彼でも話していいと言うわけじゃない。

優秀で口が堅く、いざと言う時には高名な陰陽師に話を付けてくれそうな人───

あれこれ考えて、安倍吉行に絞った。

父が高名な陰陽師であり、本人の人望も篤いから、相談するには彼が打ってつけのように思われる。

午前中は仕事に忙殺され、陰陽寮に出向いたのは午後になってしまった。

入り口で名を告げ呼び出してもらうと、ややあって安倍吉行が顔を出した。

年齢は安倍吉行の方が上だけれど、位階はぼくの方が上なので、吉行はぼくに向かい、深々と頭を下げてくる。

「私に何か・・」

外に連れ出し、回りに誰もいないことを確認してから、ぼくは事の一部始終を話し始めた。

笑われるかと思っていたけど、吉行は最後まで真面目な顔で聞き、それどころかかなり真剣な態度で熱心にぼくの話に聞き入っている。

「なるほど・・」

最後まで聞き終えたところで、吉行は腕を組み難しい顔で考え込むと

「確かに我々の専門分野だと思われます。少々、お時間をいただいてもよろしいですか?」

「もちろん、構いません。・・・何か、宛てがありそうなんですか?」

「はっきりしたことは言えませんが、私一人の手に負えることではなさそうですので父に相談してみます」

「お父上に」

吉行のお父上は、高名な陰陽師で、道摩法師との妖術対決に勝利した人物としても有名で、他にもたくさんの逸話を持つ当代きっての陰陽師である。

「よろしくお願いします」

吉行に頭を下げ陰陽寮を後にする。

吉行から「父が詳しい話を伺いたいと言っている」との連絡が入ったのは、その三日後だった。

千年後から来た人物、つまりは瑠璃さんに会ってみたいと言うので、鴛鴦殿に安倍親子を呼ぶことになった。

「いいかい、瑠璃さん。高名な陰陽師だから、失礼のないようにね」

「任せといて」

「間違っても子分にするとか言わないように」

「言わないわよ」

釘を刺すと、瑠璃さんは頬を膨らませ

「ねえ、こんな格好でいいの?十二単とか着なくて平気なの?」

「大丈夫だよ。一応、扇で顔くらい隠しておくれよ」

「え、やだ。陰陽師の顔、見たい」

「瑠璃さんは扇の陰から、ちらりとでも見えるから」

そんなやりとりをしてるうち、安倍親子の来訪を告げに女房がやってきた。







<続>

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