哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

この人に訊け!(週刊ポスト2005年4月15日号)

2014-02-08 10:16:05 | 時事
今回の書評対象は、『哲学の冒険-「マトリックス」でデカルトが解る』(集英社インターナショナル)という本で、哲学入門的な本に対してはいつも手厳しい池田晶子さんが、本書については好評価であるのが珍しい。


いつものように池田さんは、哲学を易しく解説するかのような本には注意を促す。しかしこの本は本物だと言う。

「・・・謎を捉えもせずに語り口のみ易しくしてごまかした「易しい哲学本」なるものも出回っているので、偽物に注意したい。解説に終始して、自ら考えられていないもの、真贋は一目瞭然である。
 その点、本書は本物である。映画好きの著者、イギリスの哲学教授らしいが、この人はSF映画に世界の謎を見る。優れたSFとは、世界の謎そのものである。我々がふだん現実と思っているもの、時間あるいは自己というもの、それらがどのように単なる思い込みであるかを示すものである。哲学することを好む者なら、触発されないはずがない。」(掲題書評より)


確かに映画「マトリックス」を最初に見たときは衝撃的であった。コンセプトの斬新さはもちろんのこと、映像の革新性も話題になったようにに思う。例の、飛んでくる弾丸をのけぞって避けるシーンをスローモーションで表現するあれだ。確かビールかなんかのCMでもパロディ化されたし、最近でもアポロシアターだったかで日本人ダンサーが舞台で表現して話題になったりしているので、やはりあの映像の革新性についてはパイオニア的存在と言っていいのだろう。

さて、哲学としては映像の革新性は問題ではなく、現実と思っていたものが実はまったくバーチャルなものであったとする斬新なアイデアが秀逸だといえる。いやアイデア自体はもしかしたら以前からあったのかもしれないが、映画としてその世界を完璧に表現したことが凄いのかもしれない。池田さんの言葉を再度引けば、「現実とは、自分がそれを現実だと思っているだけのものではないのか。まさしく「マトリックス」の世界ではないのか。」ということになる。


映画を見て哲学するという、映画とコラボした哲学というのも案外良いかもしれない。