薬屋のおやじのボヤキ

公的健康情報には嘘が多くて、それがためにストレスを抱え、ボヤキながら真の健康情報をつかみ取り、発信しています。

24節気の健康と食養:雨水から啓蟄まで

2017年02月16日 | 24節気の健康と食養

24節気の健康と食養:雨水から啓蟄まで

 立春の次にやってくる24節気が雨水です。毎年2月19日頃(2017年は2月18日)になります。氷や雪が融け、雨水が増えることから、雨水と言われます。
 日増しに気温が上がり、
日射しも強まってきます。大自然の変化で誰しも目に付くのは梅の花です。満開になっている所もあちこちにでてきます。
 これによって、人は、気力が満ちて、やる気も起き、よりいっそう
心が大きくなり、楽観的で前向き、喜びの気持ちが持てるようになります。
 
人の体は立春の頃以降、冬ごもりの態勢から、命生まれる、つまり新陳代謝を活発にする態勢へと生理変化しています。冬:腎の季節(厳密には冬の土用:脾の季節を経由)から春:肝の季節への生理変化です。
 前回、立春のときに、このことについて説明しましたが、今回も春の養生法全般について下記の記事を紹介しておきますので、参照なさってください。
 春は肝の季節、肝臓は小食と運動を願っています。食味は酸味主体の三味で。

 この時期は、まだ寒気団がやってくることもあり、急に寒くもなり、また暖かくもなり、体調不良を起こしやすいです。それに伴って精神状態も不安定になりがちです。
 間もなく年度末の決算期を迎えることになり、ノルマ達成のために忙しく動き回り、心はあせり、不安にもなります。管理職であれば、頭に血が上り激怒することにもなります。心身の季節は既に春になっていますから、肝が高ぶってこうなりがちですが、ここは「激怒」するのではなくて「奮起」する程度に止めたいものです。

 前回も申しましたが、ヒトの体は、立春の頃に暖気運転を始め、雨水の頃に試運転し、啓蟄の頃に本格稼動に入り、春分以降はフル運転といったところでしょうか。
 このように、節気を一つ一つ迎える度に体が順々に動くようになる、と捉えていいのではないでしょうか。
 そこで、前回、まずは立春から朝起きて直ぐ行うとよい体操を一つ紹介しました。
  “金魚体操”で内臓と背骨にも運動を
 今回は、これと同じく既に戦前に編み出され、完成を見た「西式健康法」の一つで、今でも根強いファンが大勢いらっしゃる、おすすめの健康体操の2つ目を紹介しましょう。
 暖気運転に引き続く試運転として、朝の起き掛けにおやりになるといいでしょう。
  毛管運動“ゴキブリ体操” はじめッ!

 雨水から啓蟄までの食養について、特徴的なものを一つ紹介することにしましょう。
 一番最初に芽吹いてくる野草、それはフキノトウです。早春の最も代表的な野草で、雨水の頃に盛んに芽吹きます。なお、フキノトウは、どういうわけか春の七草に含まれておらず、なんとも不思議なことなのですが、これは強い苦味がために七草粥に馴染まないからでしょうかね。
 フキノトウは、冬眠していた熊が最初にあさる食べ物と言われます。熊も人も雑食性ですから、人もこれを見習いたいものです。
 フキノトウの栄養価なり薬効はいろいろ言われていますが、あまり定かではないものの、概ね次のようですから、春の食養として理にかなっているのではないでしょうか。
・カリウムを豊富に含み、ナトリウム(塩分)とのバランスを整え、血圧の正常化、むくみを取るのに効果的
・苦味成分はアルカロイドと抗酸化物質で、肝機能を強化し、解毒の促進、新陳代謝の促進に効果的に働く。
・苦味成分と芳香成分は、健胃薬として働く。

 フキノトウは、栽培ものも出回っておりますが、野生のものとどれだけも有効成分量は違わないと思われますので、大いに食したいものです。
 ただし、けっこう灰汁(あく)が強いですから、たくさん食べるときはどれだけか灰汁抜きが必要になるかもしれません。もっとも、てんぷらにすれば高熱でそれを殺せますから、その必要は
ないです。

 この時期に入手が容易な葉物野菜で旬のものとなると、立春の食養で紹介しましたように、もう旬が終わりがけのものばかりですが、ホウレンソウ、小松菜、春菊そしてネギが主なものとなりましょう。それ以外の白物野菜も免疫力をアップさせる力がありますから、大いにとりたいです。

 これも立春の食養で紹介しましたが、春は肝の季節になりますから、5つの味「五味」についても頭に置いといてください。漢方では、五臓のバランスを整えるため、春は<主・酸味、従・甘味、添・苦味>この三味の組み合わせを最適としています。料理は、この三味を頭に置いて行っていただきたいものです。
 おすすめの料理、これを紹介せねばいかんのですが、ネット検索するも、あまりらしいものがなくて、うちで作っている料理を参考までにあげておきます。春菊を少々混ぜたホウレンソウのおひたしにポン酢をかける、というものです。ポン酢の酸味、ホウレンソウの甘味、春菊の苦味という組み合わせです。
 年中出回っているホウレンソウですが、本当の旬は真冬以降です。寒締めホウレンソウといい、甘味が増し、一番おいしくなります。当然に露地ものです。
 ところで、市場に出回っているホウレンソウの中には、えぐみや苦味を感ずるものがあるようです。これは化学肥料の多用によるもので、なかでも苦味は、窒素肥料の撒きすぎで、溶けた肥料がまだそのままホウレンソウの中に残っていると考えていいでしょう。
 ホウレンソウは化学肥料、有機肥料で味が大きく異なってくる代表的な野菜です。当然、うちは有機肥料だけ(苦土石灰は使いますが)で栽培しています。また、うちの畑は沖積層ですから鉄分が少ないと思われ、使い捨てカイロから取り出した酸化鉄をホウレンソウの畝作りのときに撒いています。ホウレンソウが欲しがる鉄をこうして補給しています。使い捨てカイロは金属類のゴミ出しのときに集積場へ行って監視員の方にお願いすればいくらでもいただけます。難点は、金槌で叩いて粉々にせねばならず、けっこう手間が掛かりますが、これもおいしい野菜作りのため、労力を惜しまず、です。もっとも、近年は年を食ったせいで、夫婦で使ったものだけを少々処理するだけですが。
 

 最後に、今回も、うちの自家栽培野菜などの状況をご紹介させていただきます。
 畑では各種の冬野菜がだいぶ少なくなり、余裕があるのは、春菊、大根、ニンジンそして虫食いから息を吹き返した小松菜ぐらいのもので、他には今年不作のネギを大事に残してある程度です。ホウレンソウは間もなく終わり、キャベツは暫し途切れ、次の収穫は1か月先になりそうです。ハクサイは2箇所の畑でたっぷり作付けしたのですが、1箇所の畑は次々と鳥に突かれて惨めな姿になり、もう1箇所は成育不良で細々と収穫できるだけです。ブロッコリーはもう少し暖かくならないと収穫できそうにありません。
 自家用には、幾種類も何とか毎日
食卓にのぼっていますが、この先少々心配です。
 なお、これからが旬の甘夏がたわわに実っています
。試しに1個食べてみたら、そろそろ収穫して良さそうです。<主・酸味、従・甘味、添・苦味>この三味の組み合わせになっている甘夏です。皆さんも食後のフルーツにどうぞお召し上がりください。 

 次回は、「啓蟄」(3月5、6日頃)の食養です。ご期待ください。

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粗製塩と精製塩そして塩事業センターの“精製塩”に含まれる塩基性炭酸マグネシウム

2017年02月16日 | 正しい栄養学

粗製塩と精製塩そして塩事業センターの“精製塩”に含まれる塩基性炭酸マグネシウム

 2012年8月14日に投稿した 粗製塩が良いのか?「にがり」の功罪を考える。精製塩で良いし、にがりを意識的に摂るのは問題。に昨日付けで表記を内容とする長文の補記をつけました。
 投稿を終えて、改めて補記だけ読んでみますと、これはこれだけでも読者にそれなりに情報提供ができると思え、補記だけを別途投稿することとしました。
 皆様の参考になれば幸いです。

2017.2.15補記)
 最近、食塩について気になる表記をよく見かけますので、それを整理してみましょう。
 
まず、「食塩」の定義ですが、化学においても塩化ナトリウム(NaCl)を食塩と言うことがあり、純度100%の塩化ナトリウムを指すことがあります。
 そして、その昔は「日本専売公社」が独占的に食用塩を製造販売しており、今は「塩事業センター」となりましたが、圧倒的なシェアーを占め、その商品名が“食塩”ですから、これを「食塩」と呼んだり、その純度が99.6%(乾物基準)と高いですから、これを「精製塩」と呼んだりして、他の製造法で作られたものと区別することがあります。
 本稿でも、「粗製塩」と対比させるために、“食塩”を「精製塩」と表記しました。
 ところで、同センターが“食塩”とは違う製法で塩化ナトリウム純度をより高くしたものを作り、これに固結防止剤を添加したものを商品名“精製塩”としていますから、“食塩”と混同する例が多々見られます。申し訳ありませんが、本稿もそのそしりを免れません。
 なお、塩化ナトリウム含有率については、水分を除外した乾物基準で示される場合と、水分を含めた上での表記が混在しており、どちらかと言うと乾物基準で示される場合は少なく、ために、「にがり」の含有率が分かりにくい場合が多いですし、場合によっては「にがり」が多いように見せかけるために水分も含めているケースも見られます。
 例えば、次のような記述です。
 日本では、かつて塩は塩田を用いて作られ、その頃の塩は塩化ナトリウムの含有量が80%を超えるものはわずがしかありませんでした。
 この記述によると、残りの20%が「にがり」と思ってしまいますが、本文(※)中で説明しましたように、うち10数%は水分なのです。
 (※本文:粗製塩の純度(塩化ナトリウム)となると、85%程度に落ちることもあるようです。これは、塩以外のものとして、「にがり」約4%のほかに、付着した海水なり呼び込んだ水(湿り気)が約10%程度含まれることによるものです。)
 
 「食塩」とはなんぞや、ということになると、人の口に供するものですから、食用塩公正取引協議会という業界団体があるように本来なら「食用塩」と言うべきかもしれません。
 しかし、同協議会では公正競争規約
同左ポイント解説で「食用塩」を定義していますが、販売表示名は「塩」または「食塩」としているものの、低ナトリウム塩(塩化カリウム:KClを高配合)を含み、逆に、他の食品が混合された塩(ごましお,抹茶塩,塩こしょうなど)は規約対象の食用塩から除外しているなど、この規程は別目的で定められた特殊なものであって、これを採用することは難しいでしょう。
 他の定義としてはコーデックス規格(国際食品規格)というものがあり、食用塩をNaCl純度(乾物基準、添加物除く)97%以上と定めていますから、これを「食塩」と呼ぶのが一番ふさわしいでしょうが、日本では一般人の認知度が低いようです。
 「NaCl純度(乾物基準、添加物除く)97%以上」ということは、「にがり」が3%未満を意味しています。これでほとんどの食用塩がクリアすることになりましょうが、フランスでは天日塩生産者組合の要請により、NaCl純度(乾物基準、添加物除く)94%以上とされているようです。つまり、フランスでは「にがり」が6%未満なら食用塩としてよいというものです。日本ではどうかというと、
その実態は小生にも分かりかねます。
 なお、コーデックス規格では、含有有害重金属の濃度規制や固結防止剤などの添加規準を定めています。

 近年になって、塩の専売制度が廃止され、民間企業も塩の製造販売ができるようになりました。そこで、登場したのが、「自然塩」「自然海塩」「天然塩」といった名称です。
 これらの名称は誤解を招きやすいことなどから、2008年4月に食用塩公正取引協議会が公正競争規約を策定し、使ってはならないこととしました。そして、海塩、岩塩、湖塩、天日塩、焼塩、藻塩、フレーク塩という名称について、一定の要件を満たした場合に表示できるとしたものです。
 本稿においても、「自然塩」「天然塩」という名称を使ってしまい、
申し訳ありませんでした。この補記を契機に「粗製塩」という言葉に訂正することにしました。

 さて、食塩に関して大きな間違いに出くわすこともたびたびです。
 それは、塩事業センターが製造している商品名“精製塩”やそれと同質の“食卓塩”に添加されている固結防止剤「塩基性炭酸マグネシウム(mMgCO3・Mg(OH)2・nH2O)」についてです。以下、間違いを2つ取り上げます。
*これを摂取すると乳酸菌が正常に活動できなくなる可能性があります。
 これには驚きました。難溶性の塩基性炭酸マグネシウムですが、摂取すれば胃酸によって溶け、Mgはイオン化され、CO3はCO2ガスになります。十二指腸に入ってアルカリ環境にさらされても、元の姿に戻ることはないのです。
*これの存在で乳酸菌がうまく働くことが出来ず、美味しい漬物ができない。
 これについては、乳酸菌発酵で塩基性炭酸マグネシウムが使用された例が今までになく、理論的推測からすると次のようになります。
 漬物は乳酸菌発酵で酸性側に傾いて、より発酵するだろうから、そのとき塩基性炭酸マグネシウムが存在するとアルカリ側に引っ張るから酸性度が弱まり、発酵にブレーキがかかると考えられる。
 しかし、これは実験してみないことには分かりません。
 現実にそれをやってみて、なんと逆の結果が得られたことによって特許をとった例があります。それを紹介しましょう。
 (2004.2.26 わかもと製薬 公開特許広報 抜粋)
 乳酸菌の培養において…高菌数を得るため…添加物として…炭酸マグネシウム…を含む培養液中で培養することで、高菌数の乳酸菌を得る方法。
 炭酸マグネシウムは、乳酸菌の液体培養地成分として使用した例が全く報告されていない。この理由は、炭酸マグネシウムを液体培養地に少しでも添加すると、培地pHが乳酸菌の通常増殖培地pH7~6よりも容易にアルカリ化し…菌の増殖阻害が見込まれる為と考えられる。
 本発明は、乳酸菌数の増大化液体培養方法を提供する目的で古くから用いられてきたペプトン、グルコース、酵母エキスなどの培地成分…に加え、無機塩の最適化を図る目的で炭酸カルシウムに着目し、鋭意検討してきた。そして、炭酸カルシウムに上回る効果を発揮する物質として炭酸マグネシウムを見出し、本発明を完成するに至った。
 炭酸マグネシウム…を単独で添加する場合は1重量%以上…で効果が出る。炭酸マグネシウムの本質は、含水塩基性炭酸マグネシウムまたは含水正炭酸マグネシウムであり、…その分子式は(
MgCO3)4・Mg(OH)2・5H2Oである。
 乳酸菌の液体培養系において培地に分泌された乳酸により培地pHが低下するなどの理由で乳酸菌の成育が抑制され易いことに着目し、…乳酸産生を抑制する要因(引用者注:静止状態ではなく震動する)も加えて培養する…。この方法を創案することによって、現実に高菌数化出来た…(引用ここまで)
 この特許では、塩基性炭酸マグネシウムを培地に対し1重量%以上加えているのですが、塩事業センターの“精製塩”には塩基性炭酸マグネシウムが0.28%しか含まれておらず、漬物全体では無視できるほどの量となって、漬物の乳酸発酵にとって毒にも薬にもならないということができましょう。

 本文、補記を含めて、随分と長文になりましたが、最後までお付き合いいただき、有り難うございました。
 たかが塩、されど塩、です。塩は奥深いものがあります。健康面でも注目される塩ですが、粗製塩と精製塩に対する捉え方は両極端なものがあったりし、惑わされます。
 どちらが正しいか、本稿がその判断材料になれば幸いです。

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24節気の健康と食養:立春から雨水まで

2017年02月03日 | 24節気の健康と食養

24節気の健康と食養:立春から雨水まで

 立春(2月4日頃:2017年は2月4日)は春の始まり。
 数日前に最低気温が底を打ち、気温が上がり始める
時期が立春です。
 この時期、昼間の時間がけっこう長くなり、日射しも随分と強まってきています。
 野山では動植物が早くも春の訪れをキャッチし、活発に活動を始めています。
 人も、気力が満ちて、やる気も起き、心が大きくなり、楽観的で前向き、喜びの気持ちが持てるようになります。
 
それと同時に、人の体は冬ごもりの態勢から、命生まれる、つまり新陳代謝を活発にする態勢へと順次生理変化します。冬:腎の季節(厳密には冬の土用:脾の季節を経由)から春:肝の季節への生理変化です。
 これを踏まえた春の養生法を下記の記事で紹介しています。参照なさってください。
 
春は肝の季節、肝臓は小食と運動を願っています。食味は酸味主体の三味で。

 ヒトの体は、立春の頃に暖気運転を始め、雨水の頃に試運転し、啓蟄の頃に本格稼動に入り、春分以降はフル運転といったところでしょうか。このように、節気を一つ一つ迎える度に体が順々に動くようになる、と捉えていいのではないでしょうか。
 そこで、まずは立春から朝起きて直ぐ行うとよい体操を一つ紹介しましょう。体全体の暖機運転をする、といった体操です。既に戦前に編み出され、完成を見た「西式健康法」の一つで、今でも根強いファンが大勢いらっしゃる、おすすめの健康体操です。
 “金魚体操”で内臓と背骨にも運動を

 次に、春の始まりである立春から雨水までの食養について、まず特徴的なものを一つ紹介することにしましょう。
 七草粥(かゆ)というものがあります。今では、西暦の1月7日に7種類の野草を入れた粥を食べる習慣ができていますが、これから冬本番という時期に、そうそう何種類もの野草が野山で手に入るわけがありません。ちょっと時期がずれています。
 七草粥の起源は、中国の華南において旧暦の正月七日に野草を摘む習慣があり、5世紀頃に書かれた歳時記に「正月七日…七種の菜を以って羹を為る」とあります。
 つまり比較的温暖な地域にあっては、この頃に幾種類かの野草を摘んできて、これを入れた羹(あつもの:熱い汁物orとろりとしたスープor雑煮)を食べていたというものです。一般に野草は葉が硬くて消化に悪いですから、これをすり潰して他の食材に混ぜた雑煮(必ずしも餅が入ったものではない)を食べていたのではないでしょうかね。
そんなふうに思われます。
 旧暦の正月七日は、年によって随分と変化しますが、大ざっぱに言って立春の前後になります。季節感からすれば、立春に七草粥を食べたいものです。

 これは、立春の食養として理にかなっています。
 野生の動物で、草食性なり雑食性であれば、冬越ししている野草なり、早々に芽吹いてきた野草の葉や芽を食べるのは当たり前のことであり、これでもってイキイキ元気になっていくのです。
 ヒトは、本来は草食性で、その後に雑食性になりましたが、原始人は季節折々の旬の野草を盛んに食べていたに違いなく、5世紀の人たちと同様に現代人も、これを見習うことによって、はじめて健康になれるといえましょう。
 そして、野草は現代栄養学で言えば、ビタミン・ミネラルが濃厚ですから、新陳代謝の大いなる助けになりますし、ミネラルは肝臓での解毒作用を促進してくれます。
 また、近年注目されるようになったポリフェノールなどのフィトケミカルが春の野草には多く含まれ、抗酸化作用など有用なものが多いです。なお、アルカロイドを含むものもけっこうあり、これは適量なら薬になります。
 漢方の面から言えば、この時期の野草は苦味があるものが多く、総じて健胃薬になります。また、野草の中には酸味があるものもあり、特に春は肝の養生に酸味が必要ですから、これが最適なものとなりましょう。

 今日では野山の野草はめったに手に入るものではなく、入手が容易な葉物野菜で立春の時期が旬のものとなると、もう旬が終わりがけのものばかりですが、ホウレンソウ、小松菜、春菊そしてネギが主なものとなりましょう。
 この中で、最近の中医学(中国)で立春に最も適したものとして勧められているのが、ネギ、加えてニラです。「ネギは、発汗して邪気を取り除き、寒を散じて陽を通わし、殺菌解毒、血液循環を促進し、消化液の分泌を増やし、食欲を高める。ニラはまたの名を起陽草と言い、古くから長寿の野菜とされ、肝臓を温め、陽を助け、精を固め、脾臓や胃を強め、逆気を降ろし、鬱血を散じ、元気をつける。」と言われます。

 こうした葉物野菜や、それ以外の白物野菜もこの時期は大いにとりたいです。
 と申しますのは、前回の「
大寒から節分」で書きましたように、この時期も厳しい寒さがためにインフルエンザに罹患することがまだまだ多くなりますから、免疫力をアップさせること、体の抵抗力を落とさないこと、これが重要になり、そのためには免疫力をアップさせる力がある白物野菜が大切な食材になってくるのです。

 さて、立春から春となり、肝の季節ですから、5つの味「五味」についても頭に置いといてください。漢方では、五臓のバランスを整えるため、春は<主・酸味、従・甘味、添・苦味>この三味の組み合わせを最適としています。料理は、この三味を頭に置いて行っていただきたいものです。
 特に、酸味は肝に効き、肝が喜びますから、酸っぱい梅干を朝に1粒いただきたいものです。梅干が広まったのは鎌倉武士からです。「梅干を1個食べ、いざ出陣!」 これで、活動的になれます。春、活発に動き回るようになるのですから、おすすめです。梅干の主成分であるクエン酸は、血液をサラサラにして血流をよくし、エネルギー産生回路に働いてエネルギー産生を円滑にし、活動的にしてくれるのですからね。
 ところで、鎌倉武士は出陣に当たって「腹が減っては戦ができぬ」とばかり、梅干入りのおにぎりでも食べたのでしょうか。いえいえ、胃の中を空っぽにして、つまり空腹状態で挑んだのです。当時は武士も庶民も1日2食の朝食抜きでしたから、前の晩に食べて以来、何も口にせず、そうであっても少なくとも午前中は目一杯の活躍ができたのです。
 これは現代人にも言えることであり、そうしているスポーツ選手もいます。下記記事で、それを紹介していますので、ご覧ください。皆さんにおすすめします、朝食抜き。
  不謹慎ですが、被災は断食のチャンス

 最後に、今回も、うちの自家栽培野菜などの状況をご紹介させていただきます。
 畑では各種の冬野菜がだいぶ少なくなり、小松菜は晩秋の暖かさがために虫が付きすぎて食べられるものはほんのわずかです。でも、ホウレンソウはまずまず残っており、春菊は大豊作です。肝腎のネギはというと「徳田ねぎ」という有名ブランド品の産地であることもあって大量作付けしていますが、昨年の夏から初秋の長雨により根腐れを起こし、例年の3割の出来となんとも寂しい状態です。ニラも栽培していますが、この時期は葉っぱが硬くて食べられそうにないですし、品種によっては枯れてしまっています。
 白物野菜としては、大根は豊作ですが、ハクサイ、キャベツは不作で、何とか自家消費には足りるといった状態です。
 そしてニンジンが
まだ残っていますから、毎日幾種類もの野菜が食卓にのぼります。
 なお、ブロッコリーも少し栽培していますが、寒さで花芽の成長がどれほどもなく、もう少し暖かくなればどんどん収穫できましょう。

 果物についても紹介しておきましょう。
 立春から旬となるすぐれものがあります。それは、甘夏です。
 うちの庭に1本ある甘夏の木に実がたわわと生り、黄色く色づいてきました。今年は大豊作でして、それがために太い枝が1本枝折れしてしまいました。
 甘夏は、肝臓が欲しがる酸味がたっぷりとれます。加えて甘みがあります。さらに好都合なことに、中袋を噛むとかすかな苦味があります。<主・酸味、従・甘味、添・苦味>と、実に理想的な味の配合になっていて、これでもって体全体の臓器のバランスを整えることができようというものです。
 もう少し日にちが経ったら食べようと思っています。
 というのは、晩生みかん(オレンジがかかったもの)が大豊作で、ここ当分の間毎日これをたっぷりいただかねばならず、それを食べ終えてから甘夏です。

 次回は、「雨水」(2月19日頃)の健康と食養です。ご期待ください。

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食養の基本は「食べたいものを食べる」に行きついてしまう?

2017年02月02日 | 食養

食養の基本は「食べたいものを食べる」に行きついてしまう?

 このブログで一番重点を置いているのは「食養」でして、小生の生涯研究課題でもあります。何が正しいか、何が間違っているか、様々な角度から、これを論じ、健康で長生きし、生涯現役を通し、ピンピンコロリと逝くことができる食養法を極めたいと。

 さて、小生の今までの努力を完全に無にする食養法が目に飛び込んできました。
 最近発売された週刊現代に<「逆さま健康法」 これで元気に100歳だ>が載っていて、そのなかに「食べたいものを食べる」と題して、イシハラクリニックの石原結實氏ほかの話があったのです。まず、それを紹介しましょう。
(注:丸数字とアンダーラインは、のちほど解説するために小生が付したものです。)
 (石原氏)「現在、世界一の長寿は117歳のイタリア人ですが、小さい頃から毎日卵を3個食べてきたそうです。コレステロールなんか気にしていないんですね。史上最高の長寿者であるジャンヌ・カルマンさんは、野菜が大嫌いでした。その代わりに週に1kgものチョコレートと赤ワイン、肉などを好んだそうです。それで122歳まで生きてしまった。
 そもそも食べ物の好みは体質によって決まっているんですよ。冷え性の人は生野菜やビールよりも体を温める肉や赤ワインを好むのです。」
 つまり、自分の体が欲しいと感じているものを食べることこそ一番健康にいいのである。ホスメック・クリニック院長の三好基晴氏も食べ物にガマンは禁物という。
「腹八分目と言いますが、目の前にある食べ物を残してまでダイエットするのはかえってストレスになる。よく噛んで食べろとも言いますが、30回も噛んでいたら食事は楽しみではなくストレスになってしまいます
 巷で体にいいと言われている食べ物にも、本当は効果がないものがたくさんあります。例えばブルーベリーは目にいいとよく言われますが、これは第二次世界大戦中に暗がりでも目が利くパイロットの食生活を調べたら、ブルーベリーをよく食べていたというだけの話。科学的にはまったく根拠がありません。あふれる健康情報に惑わされないで、自分の五感で判断すべきです。自分が好きな食べ物はそもそも五感で選んでいるものなので、健康につながるはず
 最近流行しているダイエット法に糖質制限がある。しかし、高齢者がこれをするとリスクが大きい。前出の石原氏が語る。
「血糖が下がって、倒れる危険性が増します。100歳以上の高齢者に好きなものを聞くと『甘いもの』と答える人が非常に多いですよ。増えすぎた体重を落とすためには有効かもしれませんが、高齢者が真似する必要はありません。…」
 前出の伊達氏(?)も高齢者の糖質制限に反対だ。
「糖質の摂取をあまり制限してしまうと、たんぱく質が筋肉にならずに、エネルギーとして燃焼するために使われてしまうのです。ですから、極度の糖質制限は筋肉量を減らしてしまうことになりかねない。
 一方、高齢者が良質のたんぱく質を取ることは大切です。健康志向の人は鶏肉をよく食べますが、これは必ずしも正しくない。豚肉や牛肉のほうが鉄分などのミネラルやビタミンが豊富です。牛や豚の赤身は効率よく必要な栄養素が取れるのです。鶏肉も地鶏であれば運動をしますが、ブロイラーはほとんど運動しないメタボな肉なので、一般にイメージされているほどヘルシーではありません」
 栄養のことを難しく考えず、美味しいと思うものを好きなだけ食べる。それが健康長寿への近道だった。(引用ここまで)

 いやーあ、まいりました。言う人は言うもんだ。それぞれ一理あるものの、これ皆、現代の日本人全てに適用できるものではありません。
 今回の週刊現代の記事<「逆さま健康法」 これで元気に100歳だ>は、8テーマ取り上げられていて、概ね万人に適用できるのですが、このテーマ「食べたいものを食べる」だけは、高齢者、それも後期高齢者に限って、それも部分的に言えるだけのことでしょう。
 若い方や中年の方が真似されたら、いろいろと問題が起きてしまいそうです。
 そこらあたりを順次解説することにします。その前に「…」と省略した箇所がありますが、あまりにも幼稚で間違った理由付けになっていましたから、引用を削除しました。

①記事のとおり高コレステロール食品を取っても問題なしです。コレステロールが多すぎるから食べるのを控えるようにずっと言われ続けていた卵ですが、最近、厚労省もこれを言わなくなりました。というのは、摂取する量の数倍も体内生産されますから、摂取制限に全く意味がないからです。
 ちなみに20年以上前の面白い調査研究があります。台湾で行われたもので、対象者は大学生。毎日卵を3個食べる群と卵を全く食べない群に分け、その後にコレステロール値を比較したら、卵を3個食べる群のほうが値が低くなったというものです。
 卵を全く食べない群は、きっと肉中心の中華料理で腹を膨らかしたことでしょうから、高カロリーとなり、それでもって高コレステロールになったのではないでしょうか。
 肉の代わりに卵にすれば、脂肪分が少なくヘルシーで、どうやら長生きできそうです。もっとも、動物性たんぱく質はそうそう多く取る必要はないですけどね。

②野菜が嫌いで、チョコレート・ワイン・肉が大好きで長生きとは恐れ入りました。このジャンヌ・カルマンさん(フランス人)についてネット検索しましたが、詳細は判明しなかったものの、次のことが言えましょう。
 野菜嫌いであっても、フランスの料理には野菜をよく煮込んだスープやソースがふんだんに使われますから、生野菜なり野菜の煮物を全く食べなくても問題はそれほどないのではないでしょうか。ワインはアルコール量が問題になりますが、フランス人は日本人に比べてアルコール消化酵素が格段によく出ますから、肝臓への負担は少ないことでしょう。肉も西欧人は体がまずまず慣れていましょう。
 チョコレートの多食にはビックリさせられますが、フランスのチョコレートは甘味を抑えたものが多そうで、豆を多食していた、と捉えてもいいのではないでしょうか。
 ところで、彼女は愛煙家でもあったようで、亡くなる数年前までタバコを吸っていたとのことです。それでも122歳まで生きられたとは、ほんとオバケのような人ですね。

③基本的には、そのとおりですが、少し付け加えて解説しましょう。
 ビールは体を冷やす食品ですし、冷たくしてがぶ飲みすることが多いですから、より体を冷やします。ワインは体を温める食品で、冷たくしたところでチビチビと飲みますから、酒好きの冷え体質の方にはもってこいでしょう。
 肉は全般に体を大きく温める食品で、年を食って低体温傾向になってくると、胃が丈夫であれば肉を求めるように体質変化するのが一般的です。
 ところが、生野菜については、少量食べるだけの食生活ですと体を冷やす方向に働きますが、生菜食中心の食生活に切り替えると、最初は極度に体が冷えてきますが、慣れてしまえば腸内環境の変化によりグンと体が温まるようになり、若い方の抜本的な冷え症改善はこれしかないようです。つまり、体質は食生活の変化によって大きく変わるものなのです。このことについては、「生菜食の是非について考える。完全生菜食で信じられない健康体に!」で解説しましたので、ご覧になってください。

④30回噛んで食べる、については小生も実行しているのですが、ストレスは全く感じていません。さらに、新谷式食事法で有名な新谷弘実医師によりますと、50~70回くらい噛みましょう、と言っておられ、ご本人も実行されているようです。ここまでは小生もとても真似できませんが。
 現代人はますます忙しくなり、食事もゆっくり食べていられないから、三好基晴氏がおっしゃるようなことになるのでしょうが、夕食ぐらいはゆっくり食べたいものです。ゆっくり味わって食事を楽しむ、これくらいの余裕は持ちましょうよ。すると、一日の疲れも取れます。特に、食事をしながら楽しく家族団らんとなれば、幸せ感が満喫でき、知らず知らず一日のストレスも霧散するというものです。

⑤中高年ともなると、体温低下や胃腸の働きが弱くなることもあって、食べ物の趣向が変わってきますから、若い頃に偏食傾向になかった方は好きなものを食べる、ということでもいいのでしょが、若い人の偏食はいただけません。
 何でも食べる、という中から、特に何々が好きだ、という程度に留め置くべきでしょう。
 極度な偏食は五感を狂わせていますからね。狂った物差しで判断しては体を壊しかねません。ヨーグルトなりアイスクリームが好きで好きで毎日大量に食べている方、けっこういらっしゃるようですが、これは物差しが狂っているいい例です。喉が渇いたら砂糖入り清涼飲料水なり缶コーヒーを1日に何本も飲むという方も同様です。

⑥偏食していない高齢者は何を食べたらいいかをまずまず五感で判断できましょうから、良質のたんぱく質(ここでの例示は豚肉・牛肉)なるものをあえて取る必要はないです。魚だっていいですし、大豆や豆腐好きなら、それだけでも十分です。また、豆類にとどまらず穀類にだってたんぱく質は思いのほか多く含まれていますし、各種野菜もたんぱく質は決してゼロではありません。
 高齢者が良質のたんぱく質にこだわるとすれば、それは羊肉です。体内エネルギーを円滑に生み出し、そしてボケ防止になるカルニチンをたっぷり含むのが羊肉ですからね。漢方でも羊肉は一番体を温める食品になっています。
 次の別立てブログで、それを紹介していますのでご覧ください。
 http://kmiyake.blog.fc2.com/blog-entry-122.html

⑦「食べたいものを食べる」、これがこの記事の本題になっているのですが、偏食せずにまずまず理想的な食生活をなさっている方には、そう言えないこともないでしょうが、さて理想的な食生活とはどんなものかとなると、これはなかなか難しいです。
 理想的な食生活として極端な例では、肉・魚・脂なしの完全生菜食というものがあり、これをずっと続けていると、すこぶる健康になって、それぞれの生野菜の味が格段に美味しくなり、たまに付き合いで懐石料理を食べようなら、魚を食べただけでも体調が悪くなるといいますからね。そのように体質が大きく変化してしまっているのです。これはヒトと祖先を同じくするチンパンジーやゴリラの食生活に近いものです。
 現代における理想的な食生活として世界的に有名なのが、1977年に米国で発表された「マクガバン報告」の中で示されている日本の江戸・元禄時代以前の「玄米菜食」です。ここら辺りの食生活に馴染んだ体質でもって「食べたいものを食べる」というのが無難な食べ方かもしれませんね。下記ブログ記事を参照なさってください。
 
健康な食生活の原点は“朝食抜きの玄米菜食”=元禄時代以前の食生活

 以上、週刊現代の<「逆さま健康法」 これで元気に100歳だ>に掲げられていた「食べたいものを食べる」についての反論、“逆さまの逆さま”になってしまった箇所がけっこう多くなりましたが、小生の見解を述べさせていただきました。
 この世の中、何が正しいのか、政府・医学会あげて意図的に間違った情報が流されたりしていますから、ご自身で的確に判断することが求められます。
 特に食に関しては正反対のものであふれかえっています。ここは、古の知恵、太古の昔の食生活はどうだったのか、という観点から考察するのが基本となりましょう。
 このブログでは、そうした情報を中心にして発信してまいりたいと考えています。
 どれだけかでも皆様の食生活の参考になれば幸いです。

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春は肝の季節、肝臓は小食と運動を願っています。食味は酸味主体の三味で。

2017年02月01日 | 漢方五季の食養

春は肝の季節、肝臓は小食と運動を願っています。食味は酸味主体の三味で。

 2017年2月4日は立春、春の到来です。
 でも、春といっても、漢方の世界における春です。その春は、立春(2月4日頃)から始まって穀雨(4月20日頃)の4日ほど前の4月16日頃までです。一般的に考えられている春よりも約1か月早く始まり、ど真ん中で終わりを告げます。
 なお、その後、4月17日頃に「春の土用」に入り、立夏(5月5日頃)の前日までの18日間ほどが「春の土用」です。漢方での「土用」とは季節の変わり目をいい、「春の土用」であっても「春」にあらずとなります。
 ところで、これは中国の中心部での話です。日本列島では、おおむね九州から関東の平野部までが該当することになりましょう。北日本では遅い春となるのは当然で、桜(ソメイヨシノ)が散り終わってからが「春の土用」入りと考えてよいかもしれません。

 さて、この春においては、自然界では順々にあらゆるものに命が宿りだし、活動を始めていきます。立春の頃には昼間の時間がけっこう長くなり、日射しも随分と強まってきています。すでに野山では所々で万物の息吹が感じられます。一部の草木が芽吹き、花を咲かせるものも出てきます。そして、雨水、啓蟄と節気が進むにつれ、梅が咲き出し、フキノトウ、ツクシが勢いよく芽吹いてきます。春分を過ぎれば春爛漫、桜の開花を迎え、さらに清明、穀雨へと節気が向かえば、あらゆる草木はものすごい勢いで芽吹き、花を付け、春たけなわとなります。
 この時期、自然界は、こうして猛烈な変化を遂げていきます。
 人の体も同様で、冬ごもりの態勢から、順次、命まれる、つまり新陳代謝(細胞の生まれ変わり)を活発にする態勢へと生理変化していきます。立春の頃には、まだ
暖気運転といったところでしょうが、順次、試運転に入り、そして本格稼動に入っていくのです。
 また、野山に本格的な春が来た、これを実感することによって、人は、気力が満ち、やる気も起き、心が大きくなり、楽観的で前向き、喜びの気持ちが持てるようになりますし、心がウキウキしてきます。

 春も後半になった4月1日から新年度となり、進学、就職、異動でがらりと生活環境が変わることが多いです。大いなる期待が持てる一方で、緊張し、不安にもなります。
 この頃には、「春眠暁を覚えず」という体調になったりします。体が重だるくて寝床からなかなか出られないのです。また、「木の芽時(どき)は健康に注意を」と言われます。たびたび頭痛がしたり、目が充血(花粉症とは別)したりと、この時期に特有の症状が出ることも多いです。そして、イライラしたり、逆に落ち込んで鬱(うつ)になったりと、精神が不安定になるのも、この時期が圧倒的に多いです。
 これら身心のトラブルは、年度替りの時期であることも影響しています。
 でも、9月が年度替りでこの時期は年度の途中にある中国でも、こうしたことが言われていますから、トラブルの原因は他にもありそうです。

 春は、「肝」の季節です。これからの1年間を健康で過ごすために、肝臓が肝細胞をリフレッシュしようとして、盛んに働こうとする季節、それが春なのです。
 ところが、今までずっと肝臓が酷使され続け、お疲れさん状態になっていると、肝臓はウオーミングアップがうまくできず、盛んに働こうとしても空回りし、寝起きが悪くなったり、気分が沈みがちになったりするのです。でも、肝臓は、春が来たから頑張らなくっちゃと、必死に働こうとしますので、逆に精神が高ぶってイライラしたり、動悸がしたり、のぼせたり、寝汗をかいたりするようになるのです。
 
ここまでに挙げた症状がどれか一つでも感じられる方は、肝臓が無理してくれているんだなあと思ってください。この季節、肝臓は無理してでも、これからの1年間の生命維持を確かなものとするために、猛烈に頑張ってくれているのです。
 肝臓は「沈黙の臓器」と言います。酷使されても決して音を上げるようなことはないのです。「肝臓さん、ごめんなさいね。毎日、懸命に働いてくれて、ありがとう。これからの1年間、よろしくお願いします。」と、感謝したいです。

 そこで、肝臓さんに何か手助けをしてあげねばなりません。
 肝臓さんが喜んでくれることは何でしょうか。
 第1に、肝臓に無理をさせないことです。飽食が大敵です。
 吸収された栄養は、全て肝臓に送られ、分解、再合成、解毒されてから、体中に配給されます。過食すれば、肝臓は大忙しになります。加えて、引き取り手がない栄養は、肝臓で蓄えるしかなく、脂肪肝になって肝臓の働きを悪くします。
 春は、自然界には食べ物が極端に少なく、本来は断食の季節ですから、小食を心がけたいものです。
 特に、春に特有の症状が出て、食欲が落ちたら、肝臓がオーバーワークで疲労困憊していると考えてください。その場合は、極力小食とし、1日1食にしてもかまいません。
 でも、いきなり1日1食にしては体を壊しますから、まずは朝食抜きをおすすめします。最初はこれまで取っていた朝食より消化によいものを少量食べるだけにし、それに慣れたら量を半分、これにも慣れたら一口だけ、といった塩梅で進めて、最後は朝食抜きにするのです。朝食を抜くなんて身体に悪い、と一般に言われていますが、それは逆です。
 (参照 → 朝食有害論の歴史的推移
 第2は、肝臓に酸素をたっぷり供給してあげることです。血液をサラサラにし、血流を良くするしか方法はありません。小食、断食で、これが可能となりますが、それ以外の方法もあります。そうです、運動です。外へ出て体を動かすのが一番です。新鮮な空気を美味しく感ずるということは、肝臓がたっぷりと酸素が貰えて喜んでいるからでしょう。
 第3は、肝臓が欲しがる物を差し上げてください。春が旬のものなどを召し上がっていただくと良いです。これについては、このあと詳しく説明します。

 春先の肝臓の最重要な仕事は、解毒です。冬の間に溜まった毒素を分解し、尿として排出できない毒素は汗として排出しようと、懸命に働き始めます。
 なお、解毒を促進するためには、小食や断食が必要になります。
 太古の人は、冬場は木の実や芋がまだ食べられたでしょうが、春になると、これらが底を尽き、芽吹きだした木の芽や草を食べるしかないですから、自然と小食になりますし、雨の日はじっとして断食したでしょうから、よりいっそう解毒も進みます。
 こうして、体全体がリフレッシュされ、特に肝臓が蘇ります。これで、これからの1年間を健康に暮らしていける体づくりの基本的な準備が整うというものです。

 でも、現代においては、このような食生活は不可能です。どうしたらよいでしょうか。
 これは、いつの時期についても言えることですが、まずは旬の物をいただくことです。
 でも、春先の野草で食べられるものは、フキノトウ、ツクシくらいしかなく、山菜はまだ小さくて採れません。野菜では、今は冬野菜となっている春菊くらいなものでしょう。
 なお、これらは皆、灰汁(あく)が強い植物です。特に、ツクシや山菜は、灰汁抜きが必要になります。でも、本来は、あれこれ少しずつ食べるものですから、その必要はなく、かえって、その灰汁が体に良いのではないかと、小生には思われます。
 と言いますのは、「灰汁」とは、昔の人がうまく名付けたもので、「植物を燃やしてできた灰から溶け出したもの」つまり「各種ミネラル」なのですから、これを捨ててしまうのは、いかにも勿体無いです。春の野草や山菜には、ミネラルがぎっしりと詰まっていると考えて良いでしょう。もっとも、灰汁抜きをしても、ミネラルがそれほど溶け出すことはなく、多くは可溶性のアルカロイドなどが溶け出すのでしょうが、そのアルカロイドなども、大量に口にすれば、湿疹が出たり、胃を荒らしたり、下痢したりするものの、少量であれば、何らかの形で有用な働きをすると考えて良いのではないでしょうか。毒も少量であれば薬になることが多いのですからね。

 そうは言っても、これだけでは食べられるものが大幅に不足します。ゼロに等しいと言ってよいです。であるから、この時期に断食すると効果が高いのですが、飽食時代の今日にあっては、到底それは不可能なことです。
 加えて、どんな食材でも年がら年中手に入る時代ですから、ここは、偏食に気を付け、露地物の野菜を中心にして、あれこれ食べるしかないですね。
 これでは、一般的抽象的無内容なアドバイスになってしまい、お叱りを受けることになりますが、この春の時期に、肝臓がイキイキ元気に働いてくれる、良い食事、調理法を漢方栄養学からお話しましょう。

   

 肝臓が欲しがるものは、酸味です。
 この時期、酸っぱいものを意識的に摂るようにしたいです。梅干を朝にぜひ1粒いただきたいものです。そして、とっておきの果物があります。それは、この時期が旬となる柑橘類の甘夏あるいは夏みかんです。
 もっとも、当然にして限度というものがあって、過ぎたるは及ばざるが如しでして、酸度が強すぎれば、胃を荒らすことになりますから、ご注意を。
 いずれにしても、酸味は
胃に負担をかけますから、胃を守るために、少々甘みのある食材を足すと良いです。これに苦味のある食材を添えると、より良くなります。
 こうすると、体全体の臓器のバランスを整えることができるからです。
 避けたいのは辛味です。肝臓は、辛味でダメージを受けやすいからです。
 なお、塩味は、ほどほどであれば気にする必要はありません。
 ここに漢方の五味(ごみ)を登場させましたが、これは日本料理の調理法の基本にもなっています。隠し味と呼ばれるもので、酢の物であれば、酸味が強いですから、甘味を少々足し、苦味のあるものがさりげなく添えられます。
 
春は、<主・酸味、従・甘味、添・苦味>この三味の組み合わせを最適とします。料理は、この三味を頭に置いて行っていただきたいものです。

 以上3つの対処をしていただけば、肝臓の働きに余裕が出てきて、さわやかに目覚め、新鮮な気持ちになり、心の奥底から楽しくなることでしょう。
 
それでも体調が思わしくないという場合には、漢方薬の助けを借りたいものです。
 肝のエネルギーがぎっしり詰まったのが胆石で、牛の胆石「牛黄(ごおう)」が、肝臓にとって最高の滋養強壮になります。また、弱った肝臓には田七人参が機能回復の大いなる助けになります。

(追記)
 ところで、春は長いです。そこで、「24節気」ごとの健康と食養について、うちで採れる野菜などもおりまぜながら順次紹介してまいります。併せてお読みいただければ幸いです。
 24節気の健康と食養:立春から雨水まで
 24節気の健康と食養:雨水から啓蟄まで
 24節気の健康と食養:啓蟄から春分まで
 24節気の健康と食養:春分から清明まで
 24節気の健康と食養:穀雨から立夏まで(春の土用)

(備考)この記事は、次の過去記事を2016.2.3に編集し統合しました。これにより過去記事は消去することにします。
 2011.3.11 春、肝臓の季節です。肝臓が欲しがる食品を少量ずつ食しましょう。
 2011.3.29 春、肝臓が求めているものは?肝臓は小食と運動を願っています。そして、肝臓にいい食品。
  なお、2017
年から、毎年部分修正をかけていきます。

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