漢方五味と主要5ミネラルの味の関係
中医学(漢方)では何もかも5分類する「五行論」の世界です。
よって、漢方に登場する味は、酸味、苦味、甘味、辛味、塩味の5つの基本的な味だけです。そして、それぞれの味がそれぞれの臓器に対応し、順番に肝、心、脾、肺、腎と密接な関係にあるとするものです。酸味は肝が喜ぶ、苦味は心が喜ぶ、といったぐあいです。また、季節とも対応し、春、夏、土用、秋、冬との関わりが深いものとなり、春は酸味、夏は苦味、といったぐあいです。
冬は塩味を求め、これを美味しいと感ずるのは、腎がそれを求めていることもありますが、食塩(塩化ナトリウム)をたっぷり取ると体がぐんと温まることが大きく影響していると思われます。東北地方において高度成長期以前は塩分摂取が多かったのですが、これは寒さしのぎで高塩分になっていたのではないでしょうか。
なお、漢方では夏は塩味を控えよとなっていますが、これは夏に高塩分食をとると体に熱がこもり、熱中症になりかねないからと言えます。
春になると酸味を求め、それが美味しいと感ずるのは、いったいなぜでしょう。
小生思うに、これは身体がカリウムを求めているのかもしれません。
カリウムイオンの味は、塩味っぽかったり多少苦味がかったりするようですが、どうやら酸味がかった味がするようです。
春にカリウムが必要なわけは、考えてみるに、冬場の摂取が食塩つまりナトリウムイオンに偏向したせいで、ナトリウム・カリウムのバランスが崩れてきて、身体がカリウムを欲する状態になっているからではないでしょうか。
ナトリウムイオンとカリウムイオンは、細胞から出たり入ったりしながら、対になって生命活動を維持していますから、そのバランスはことのほか重要ですからね。
こうして、冬に求めた塩味によってナトリウム過剰の体を、春にカリウム摂取で平衡を保とうとする力が働き、味覚が変わると考えるのが素直な感がします。
次に夏です。夏は苦味を求めることになるのですが、これはマグネシウムイオンの味です。汗をかくと様々なミネラルを損失しますが、そのなかで一番問題になるのはマグネシウムの損失でしょう。これが欠乏すると筋肉の痙攣を引き起こし、限度を越えれば心臓麻痺で命を落とすことにもなります。
よって、汗をかく夏場は身体がマグネシウムを求め、苦味を欲することになるのではないでしょうか。
ところで、マグネシウムイオンとカルシウムイオンは、細胞から出たり入ったりしながら、対になって生命活動を維持していますから、そのバランスはことのほか重要です。カルシウムイオンが不足すれば骨を溶かせば容易に調達できるのに対し、マグネシウムは大半を口から補給するしかなく、苦味食品を求めることになるのでしょう。
次に季節の変わり目である土用。土用に甘味を求めるのは、ミネラルからするとそれはカルシウムと考えられます。カルシウムイオンそのものは、苦味、塩味、エグ味が混ざったような複雑な味のようですが、食塩などに含まれた状態ですと、カルシウムが多いと味がまろやかで甘味を感じたりするようです。
これを求めるということは、土用に農作業という力仕事をすることによって骨に荷重がかかって骨の発達が進み、つまり骨太になろうとカルシウムを要求していると考えてよいのではないでしょうか。
最後に、秋に辛味を求めるのはどうしてでしょうか。ヒトが必要とする主要5ミネラル(正確には塩素を含めて6種類になりますが塩素は食塩=塩化ナトリウムとして1つとしてカウントします)は、今までに挙げたナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの4つの他にリンがあります。これで5つとなり、「五行論」と足並みがそろいます。
リンは他の4つのミネラルと性質が異なっており、対になって働く相手は持ちませんし、多すぎても少なすぎてもいけないミネラルです。
さて、辛味といえば、唐辛子のカプサイシノイドです。その含有量は、リン酸肥料の施用量に影響を受け、リン酸が欠乏していても過剰であってもその含量は低くなります。つまり、ほどよい濃度のリンが唐辛子に入り込むと辛味が増すのです。
ということは、ほどよい量のリン摂取の求めが、辛味を欲するという味覚要求になっていると言えるのではないでしょうか。
少々苦しい説明になりましたが、秋は、食糧が乏しい冬に備えて食欲が増す時期であり、食欲増進のために胃を刺激する辛味を自然に摂るようになったと考えたほうが素直でしょうね。でも、「五行論」にこだわりを持つと、このような説明になってしまいます。
何もかも5分類する「五行論」を、今まで外野席から冷ややかに見ていましたが、主要5ミネラルの味というものを各季節に当てはめてみましたら、ヒトの身体が要求するものと、あまりにもうまく符合することとなって、正直びっくりしているところです。
主要5ミネラルを「五行色体表」にはめ込んだものは見たことがないのですが、紀元前に完成をみた「五行論」をアンタッチャブルなものにしておくのではなく、近代科学で新たに得た知見をこうして付け加えるのも面白いと思うのですが、いかがなものでしょうか。
ということで、小生の新説、珍説をここに紹介させていただいたところです。
(2017.2.3追記) 冬の項について後2文を挿入
数年前から健康のため 玄米を食べるようになりました。まさに そのまま炊飯器で1時間で焚き、それを『体に良いから食べなさい』と嫌がる子どもに食べさせておりました。確かに、私の顔色が以前より土色になっております。年齢的なものかと諦めておりましたが、これが原因かもしれませんね。教えて頂けて、本当にありがとうございます。
牛乳、ヨーグルトの記事も読ませて頂きました。牛乳は毎日、強制的に学校で飲んでおりますが、背を伸ばしたい娘は、毎朝ヤクルトの『ジョア』を飲んでおります。
この『ジョア』に関しては如何でしょうか?
背を伸ばすためには、たんぱく質も大切だと思うのですが、1日に必要なたんぱく質を食べさせる事が出来ません。
そのため、身長への効果もあらわれません。
もしよろしければ、おすすめな食材や、漢方などもありましたら教えて頂けますと幸いです。
これからも勉強させて頂きます。
そのためには、おいしいものでなければなりません。
それをよく噛んでゆっくり召し上がっていただくことです。
体にいい物を詰め込むというやり方が一番悪い方法です。
子供が食べ物への感謝をもって食事をするようになれば、その家庭での食文化が花開き、これが「おふくろの味」として継承されていきます。
これを、まず踏まえておいてください。
嫌がる玄米は止めにしたほうがいいです。せいぜい週に1回、混ぜご飯なり、おじやなりで、玄米の味を隠されてはいかがでしょう。
白米ではなく、七分搗き(今、我が家はこれ)にするとか。
雑穀米が望ましいのですが、麦飯(以前、我が家で食べていました)であっても、炊き方でおいしくもなったり、まずくもなったりします。
かなり熟練しないと、おいしい麦飯なり雑穀米は炊けないようです。
七分搗きの白米とて同様です。水加減がむずかしい。やや硬飯にするとおいしいです。硬飯であれば、よく噛むしかなく、これによって旨味を感ずることができますからおすすめします。
毎日食べるご飯ですから、貴女も研究なさって職人技を発揮できるよう努力なさってください。
ご飯は単にカロリーを得るもの、玄米ならビタミン・ミネラルが豊富だ、といった近代栄養学を物差しにした調理は、もう卒業されてはどうでしょうか。
同じ食材で、いかにおいしく調理するか、その付加価値が本当の栄養になる、小生はそのように思っております。ただし、調味料でのごまかしはダメです。
乳製品全般に、子供も大人も不要なものです。乳糖耐性のある西欧人にとってもヒトの代替食糧ですから、本来のヒトの食糧から外れます。
骨はコラーゲンとカルシウムからできており、タンパク質が充足していれば、骨コラーゲンが十分にでき、そこにカルシウムが張り付き、骨は成長します。
戦後、子供の平均身長が伸びたのは、米国食糧援助の脱脂粉乳のお陰だとか言いますが、単に食糧事情がよくなって、あれこれの食材からタンパク質が充足しただけのことです。
日本の歴史を振り返ってみたとき、けっこう身長が高い時代もあったのです。それは地球が温暖化していて食糧事情が良かった時代です。
身長は同じ食事をしていても、民族差、個人差が大きく出るものです。今の時代は普通の食事で十分過ぎるほどタンパク質が摂取できていますから、背を伸ばす方法などないでしょうね。せいぜい屋外で飛んだり跳ねたりして大いに遊ばせ、骨に負荷を与えてやれば、骨芽細胞の代謝が高まり、ヒトによっては骨が伸びるかもしれません。まあ、骨太になる可能性のほうが大でしょうが、これはいいことです。旧字で「骨へん」に「豊」とかいて「体」と読むのですから、健康体になります。