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ベータ・カロチンの悲劇:生活習慣病予防に優れているのに“嫌煙運動”の犠牲に

2013年01月05日 | たばこと健康

ベータ・カロチンの悲劇:生活習慣病予防に優れているのに“嫌煙運動”の犠牲に

 ベータ・カロチン(カロテン)はカロチノイド(カロテノイド)の一種で、カロチノイドの代表的なものです。カロチノイドとは何かと言いますと、二重結合を2つ持つ炭化水素であるイソプレンが8個繋がった有機化合物及びその誘導体(例えばHがOHに入れ替わったもの)の総称で、イソプレンとはCH2=C(CH3)CH=CH2の分子式を持っています。
 少々専門的すぎて分かりにくくなりましたが、その最大の有用性は、
抗酸化作用を有することにあります。カボチャやニンジンなどの橙色色素であるカロチン、甲殻類の皮や鮭の肉の赤色色素であるアスタキサンチン、ホウレンソウやケールなどの青色光を吸収するルテイン、トマトやスイカなどの赤色色素であるリコペンなどがあります。
 なお、抗酸化作用で、もう一つ有名な有機化合物はポリフェノールで、これは通常ベンゼン環が幾つも繋がったもので、一般的には芳香性を持つ色素になります。
 そして、植物は、カロチノイドやポリフェノールその他フィトケミカルとして知られている物質でもって、強烈な紫外線から生ずる活性酸素を無害化し、生体を維持しているのですし、人や動物がその植物を食べることによって、これらの抗酸化物質が得られ、体内で発生する活性酸素の消去に役立てたり、ホルモン様物質として利用したり、ビタミンAに変換したりしているのです。

 さて、カロチノイドのうちカロチンは、アルファ・カロチン、ベータ・カロチンのほかにも4種類知られていますが、化学式はC40H56と皆同じで構造が少しずつ違うだけです。
 カロチンの中で最も有名なのがベータ・カロチンで、ビタミンAに変換されやすい性質を持っています。そして、カロチンは体内脂肪中に備蓄が可能で、ビタミンAが不足すれば、不足分はカロチンがビタミンAに変換されます。
 つまり、ベータ・カロチンは体内におけるビタミンAづくりに欠かせないものなのです。
 また、先に述べましたように、ベータ・カロチンそのものが抗酸化作用に優れていて、体内で発生する過剰な活性酸素の消去に役立っているのです。
 なお、ベータ・カロチンを過剰に摂取すると、体内備蓄量が増え、その色素が原因して、肌が黄色っぽくなりますが、健康を害することはないです。
 ところで、ベータ・カロチンの所要量はと言いますと、これは他のカロチノイドやポリフェノールと同様に必須栄養素ではないですから、所要量を定める性質のものではないのですが、体内でビタミンAに変換されることを考慮して、ビタミンAの所要量から推計すると、1.8mgの摂取が勧められます。そして、活性酸素の消去を考慮すると、その倍の3.6mgが望ましいのではないでしょうか。ちなみに、ヨーロッパでは推奨摂取量として4.8mg、米国では同3~6mgとされています。

 日本には、“冬至に南瓜(かぼちゃ)を食せば夏病みせぬ”ということわざがありますが、これは、冬至の頃は緑黄色野菜が少なく、その頃まで保管が利き、大量に食べることができる南瓜ですから、これを冬至に食せば、南瓜に高含有のベータ・カロチンでもって、冬場のみならず夏まで健康を維持できるというものです。少々大げさ過ぎるものの、昔の人は、体内備蓄が可能なベータ・カロチンの力を経験的に知っていたのでしょう。
 戦後において、近代栄養学が大きく普及し、各種ビタミンと併せてベータ・カロチンの摂取も強く啓蒙されるようになりました。そして、高度成長後においては、生活習慣病(当時は成人病)予防にベータ・カロチンは欠かせないものとして主要なサプリメントとなり、単品として、また、配合品として人気を博しました。
 さらに、20年以上前には、各種がんの予防に良いという調査研究が幾つも出され、個々のがんについても、例えば、
ランセット(権威ある医学雑誌)で、“ベータ・カロチンを摂っている人は、喫煙していても肺がんになる確率が低い”と発表されもしました。
 また、この発表のときかどうか不明ですが、手元にあるランセットの資料では、次のように書かれています。(19年にわたって2000人を追跡調査)
  1日に4mg以上のベータ・カロチンを摂っている人の肺がん発生率は0.5%
  1日に2.3mg以下のベータ・カロチンを摂っている人の肺がん発生率は3.5%
 この調査は、標本数が少なすぎて(罹患者がそれぞれ1人と7人)、統計学的には有意ではないですが、他のがんに比べて肺がんの発生率に7倍と顕著な開きがでたことから、注目を集めました。
 そして、1993年に発表された中国での大規模調査(3万人)においては、ベータ・カロチン・セレン・ビタミンEのサプリメント投与群は、非投与群に比べてがん発生率が13%少ないという、統計学的に有意な結果が出て、ベータ・カロチンが脚光を浴びたのです。

 ところが、1994年、米国国際がん研究所・ヘルシンキ大学の共同調査において、思わぬ結果が出てしまいます。(調査地はフィンランド)
 調査対象は、ヘビースモーカー2万9千万人で、これを4グループに分け、ベータ・カロチン20mg/日、ビタミンE50mg/日、両方の投与、そして非投与の4群について、5~8年間追跡したもので、その調査結果の概要は次のとおりです。
  ・両方のサプリメント投与群は非投与群に対して肺がんの発生率が18%多かった。
  ・ベータ・カロチンだけの投与群も同様な結果となった。
  
・ビタミンEだけの投与群は、非投与群との差はなかった。  
 つまり、ベータ・カロチンやビタミンEという抗酸化物質を十分に摂れば、肺がんの発生が抑えられるであろうはずが、ベータ・カロチンを摂取することによって、逆の結果となってしまったのです。(この調査に使われたべータ・カロチンは天然物ではなく合成品)
 また、1996年に発表された米国での大規模調査(1万8千人)においても、同様な結果が出ました。調査対象は、喫煙者、喫煙経験者及びアスベストに曝された労働者で、これを2グループに分け、ベータ・カロチン30mg/日・ビタミンA25000IUの投与群と非投与の2群について、4年間追跡したもので、その調査結果の概要は次のとおりです。(この調査に使われたべータ・カロチンが天然物か合成品かは不詳)
  ・サプリメント投与群は、肺がんの発生率が28%多かった。

 大規模調査の結果が、中国、フィンランド、米国と相次いで発表されたのですが、この結果をどう評価するかです。
 まず、中国の調査における全がん発生率0.87倍という値は、統計学的に有意と言えども、95%信頼区間は0.75~1.00倍であって、3種類のサプリメントの総合作用として“確かに発がんを抑えた”と言い切ることは決してできないですし、ことさらベータ・カロチンの有用性を証明したものでもありません。
 次に、フィンランド、米国の肺がん発生率の1.18倍、1.28倍について、95%信頼区間がどうなっているのか知らないのですが、調査人数からして中国の調査と同程度、あるいは肺がんに特定したことにより罹患者の絶対数が少ないでしょうから、より幅を持ったものとなっていることでしょう。
(2013.1.14日追記:フィンランドの肺がん発生率の95%信頼区間は1.03~1.36倍、米国の肺がん発生率95%信頼区間は1.04~1.57倍)
 よって、確かなことは言えないわけですが、米国においては、フィンランドの調査結果を踏まえ、“ベータ・カロチンを大量投与すると発がんを促す恐れがあるかもしれない”とされてしまい、大規模調査は途中で打ち切られてしまいました。

 こうしたことから、調査結果の一人歩きが始まり、遂にはベータ・カロチンが悪者にされ、“ベータ・カロチンをサプリメントとして摂取すると、喫煙・非喫煙に関わらず、あらゆるがんの危険が高まる”と受けとめられるようになってしまったのです。
 これに対して、ベータ・カロチン擁護派からは、フィンランドの調査(2013.1.14日追記:米国の調査も同様とのこと)は“天然物ではなくて合成品を用い、かつ、必要量の10倍という、あまりにも過剰な投与をしたからだ”と反論されたのですが、追試験しようにも、肺がん発生を促す恐れがあるものを飲ませるわけには参らぬとなって、実施されていません。
 ただし、動物実験は行なわれ、小生が知る1例では、アルファ・カロチンには発がん抑制効果があるが、ベータ・カロチンには確たる効果はないと出ています。
(2013.1.14日追記:合成品のベータ・カロチンはトランス型で、天然物もトランス型が多いようですがシス型も含まれていて、シス型に抗酸化力が強いとも言われます。)

 いずれにしても、こうしたベータ・カロチンの危険性が一旦大きくマスコミに取り上げられると、いくら擁護派が反論しても完全に無視されてしまいますから、健康志向の消費者がベータ・カロチンのサプリメントを飲まなくなって、日本においては、製薬・健食メーカーともに、順次、単品の販売中止、配合品からの削除に追いやられてしまったのです。

 ところで、小生は、ベータ・カロチン擁護派でして、当店のお客様や身内で、天然物のベータ・カロチンのサプリメントを飲んでいる方の生活習慣病の改善やがんの再発防止に大きな効果あったものですから、しぶとくベータ・カロチンを追い求め、お客様にも勧めているところです。(がんの再発防止には、アルファ・カロチン他の配合品) 
 しかし、ベータ・カロチンは国内メーカーから嫌われ続けて、とうとう米国からの輸入品であるネイチャーメイド:ベータカロチンしか当店では入手できなくなってしまいました。それも、目安量は従前の半分以下(1日2粒:3.6mg)とされてしまっています。加えて、この商品は、めちゃ安い上に利益が少なく、積極的に売ろうという気にはなれず、今では、ヘビースモーカーである小生と、1、2の喫煙者の方がお飲みになっているだけです。

 先に述べましたとおり、ベータ・カロチンは、過剰に摂取すれば肌が黄色っぽくなり、容易に自己診断ができ、また、そこまで過剰な摂取であっても経験的に健康を害することはないことが分かっているのですし、加えて、冬至南瓜のことわざにあるように生活の知恵としてもベータ・カロチンは非常に重要なものです。
 ただし、合成品は効き目がないでしょう。ベータ・カロチンでの比較実験は知りませんが、ビタミンCについては知られています。天然物のビタミンCには効き目があるが、全く同じ構造のものであっても合成ビタミンCの効き目はガクンと落ちる、と。また、ビタミンEについても同様のことが言われています。なお、現在市場に出回っているベータ・カロチンはまず天然物ですが、ビタミンCやビタミンEは合成品がほとんどです。

 がんを含めて生活習慣病の改善や予防には、過剰な活性酸素を消去してくれるポリフェノールとカロチノイドがフィトケミカルの両翼を担う重要な物質であることに変わりはなく、今日の食生活の乱れやますます高まるストレス社会にあっては、より重要性が高まってくるものです。よって、カロチノイドの代表選手であるベータ・カロチンを決して悪者扱いすることなく、正当な評価をしていただきたいものです。

 最後に、これは小生の推測ですが、“喫煙者がベータ・カロチンをサプリメントで摂ると肺がんの恐れが高まる”と、米国や日本でことのほか強調されるようになったのは、背景として先に記事にしました異常とも言える“嫌煙運動”との絡みがあり、“喫煙者はどんな健康法を取ったとしても肺がんを防ぎ得ない”とダメ押ししたいがためのことであったのではないでしょうか。
 これは、調査開始時点からのことと思われ、ために天然物のベータ・カロチンを使わず、効果があまり期待できない合成品を使っての調査が「仕組まれた」とも勘ぐられます。
 なぜならば、ベータ・カロチンの摂取によって喫煙者の肺がんが防げるとなると、それは“喫煙のすすめ”となってしまい、“嫌煙運動”に大きく水を注すことになるからです。
 ここに、“ベータ・カロチンの悲劇”の根源があるように思われるのですが、いかがなものでしょうか。
 今回も随分と長文となってしまいましたが、最後までお付き合いいただきまして感謝申し上げます。

 本文の一部及び2013.1.14日追記分は、下記文献を引用しました。
  カロテノイド.info
  水谷民雄:抗酸化剤神話、「抗酸化剤神話」の崩壊をめぐって
 

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2017-01-12 21:31:07
ガン予防に人参ジュースを飲んでいます。

ネットサーフィンをしていましたら、ベータカロチンはガンになるという記事を書いていたポータルサイトがあって大変驚きました。サプリメントがよくないという区分けしたお話ではなく、ベータカロチンそのものが喫煙者のガンリスクが高まると主張する記事です。

それならば喫煙者はかぼちゃも人参も危険ということになりますが、そんなばかげた話はありません。

先生の解説を確認して、天然物はだいじょうぶだと再確認しましたが、健康サイトはいい加減な記事が多くてホント困ります。
ベータカロチンについて (薬屋のおやじ)
2017-01-13 12:54:19
小生の記事を参考にしていただき、有り難うございます。
ところで、「ガン予防に人参ジュースを飲んでいます。」とのことですが、これでもって、どれだけガン予防になるか、疑問です。
多くのガンは「心の病」と捉えたほうがいいからです。
また、たまには人参ジュースもいいでしょうが、毎日となると偏食となりますから、ベータカロチンを意識なさるのなら、カボチャであったり、青菜(ホウレンソウや小松菜にけっこう高含有)であったりと、色々召し上がられるほうがいいのではないでしょうか。

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