(今年の秋はあまりにも暖かく、いや暑くって「霜降」の節気に入っていたことをすっかり忘れており、遅がけの投稿となってしまいました。失礼の段、お許しください。)
24節気の健康と食養:霜降から立冬まで
24節気を約5日ずつ3区分した「七十二候」というものがあり、気象の動きや動植物の変化を知らせています。「略本暦」に掲載された七十二候で、本節気は次のとおり。
霜降 初候 霜始降(しも はじめて ふる)霜が降り始める
次候 霎時施(こさめ ときどき ふる)小雨がしとしと降る
末候 楓蔦黄(もみじ つた きばむ)もみじや蔦(つた)が黄葉する
寒露の次にやってくる24節気が霜降で、毎年10月23日頃(2023年は10月24日)になります。前節気の寒露もそうですが、今節気の霜降となると、日本の大半の地域の気候から随分とずれて感じます。10月下旬に霜が降りるとは、です。
これは、24節気が作られたと言われる中国戦国時代(紀元前3~4世紀)の前の時代も後の時代も現在の西安(昔の長安)辺りが中国の中心地であり、温度差が大きい大陸性気候のその地域の気候でもって命名されたからでしょう。
ちなみに西安の月別平均最低気温を東京と比べると次のとおりです。
10月:9.3℃(東京:14.8℃)、11月:2.6℃(東京:8.8℃)
霜降を過ぎると、朝の気温は日本の大半の地域ではやっと寒露(一つ前の節気)といったところでしょうが、それでも快晴の朝は放射冷却で気温が10度を軽く下回るようになり、秋が深まりつつあるな、と感じます。
この時期は、後から説明しますが、季節の変わり目に相当するものの、晩秋という捉え方もでき、朝晩はカラッとした大陸の冷たい空気でもって、秋の臓器である肺が痛みつけられる恐れがあります。肺は乾燥を嫌いますから、肺が弱い方は肺に潤いを与えるべく、保湿器を引っ張り出したり、マスク(変なところでコロナ対応が役立ちます)などを着装されるといいでしょう。
さて、漢方5季(春夏秋冬と土用)の区分では、霜降から立冬までは、季節の変わり目である秋の土用(10月20日頃~立冬の前日まで)と概ね一致します。
よって、『24節気の食養:霜降から立冬まで』は、投稿済みの次の記事と大きく重複しますから、先ずはこれをご覧ください。
秋の土用は土用食を。先ずは甘味ですが、重労働をするときだけに。
これに少々補足します。
秋の土用の頃は、保存食糧の収穫シーズン真っ盛りとなります。日本では米の収穫がそうですか、畑ではサツマイモの収穫が始まり、山では栗の収穫が続いています。
よって、秋の深まりを感ずると同時に、ますます食欲が湧いてきます。この時期、食欲煩悩を抑えるのは至難の技ですから、旬のサツマイモや栗をおいしくいただきましょう。
第一生命の「サラリーマン川柳」に次のものがあります。
やせてやる!! コレ食べてから やせてやる!! (栗饅頭之命[くりまんじゅうのみこと])
これは、ダイエットの失敗例ですが、“秋の土用が過ぎ、冬になったら、やせてやる!!” でいいのです。→冬ヤセ、夏ヤセで毒だし!おすすめします1日断食の繰り返し
このことについては、前々回(秋分)、前回(寒露)でも申しましたが、四季がある地域に住む動物は、冬の食糧不足と寒さ対策のために、この時期に限って飽食します。ヒトも同じ動物ですから、秋に飽食したくなる体質になっており、大いに食欲の秋を満喫していいのではないでしょうか。ただし、冬になったら腹八分かそれ以下にすべきですが。
この時期、海の幸もいいですね。前にも取り上げましたが、サンマ、イワシ、サバがおいしい季節です。調理法は塩焼きが一番。これら青背の魚には体にいい油脂(DHAとEPA)がたくさん含まれ、大いに摂るとよいと言われますが、今の日本人は油脂全般にあまりにも摂りすぎですから、旬となって脂の乗った青背の魚は、昔の調理法のとおり十分に脂を切って食べるべきものなのです。油脂はバランスが重要ですから、「足りない油脂を足すのではなく、過剰摂取の油脂を引く」と、心得ておいたほうがいいです。
果物では、何と言っても柿が旬です。前回(寒露)でも申しましたが、“柿が赤くなれば、医者が青くなる”という言葉があります。それだけ栄養価が高く、抗酸化力があったり、免疫力を付けたり、ということになりましょうが、毎日ほどほどの量を、ということになりましょう。特に、柿は冷性の食品ですから、食べ過ぎると体を冷やしますので、ご用心を。でも、旬のものですから、冷え症の方も少しは食べましょう。体にこもった熱や炎症で生ずる熱を取り去る力が柿にはありますから。
次回は、「立冬」(11月7日頃)からの健康と食養です。