大分の土地家屋調査士ブログ

「土地家屋調査士の業務と制度」を中心に、それに広い意味で関連する様々なことについて一人の人間として思うところを書きます。

「ミクロコスモス」

2017-03-07 18:26:56 | 日記
今月号の「登記情報」誌(664号2017.3)の巻頭言で加藤新太郎元判事が「不動産登記の世界は、通達や先例により規律されているミクロコスモスである」と言っておられるのを読んで、なるほど、と思いました。「ミクロコスモス」「小宇宙」というのは言い得て妙だと思います。
加藤元判事は、「不動産登記関係訴訟において判決をしたが登記ができないという事態が稀に生じる」という事実があることに対して、「登記実務と理論・裁判実務をつなぐ」努力をしなければならない、という方向で述べられていることなのですが、このような事態が生じる場合には双方の努力が必要なような気がします。「小宇宙だから・・」ということでは済まないのではないか、と思えるのです。
それは、「通達・先例で規律されている」小宇宙というのは、しっかりとした規律があって首尾一貫している、という意味合いだけでなく、あまりにも窮屈な融通の利かない、さらに言ってしまえば世の中の常識に適合しないようなものになってしまっている、という面もあるのではないか、ということです。

最近私自身が遭遇した事例で次のようなことがありました。
ある土地に「大正5年設定」の地上権の登記がありました。この地上権は「存続期間」を「大正5年10月7日より同14年2月末日」とされているものであり、なおかつ「範囲」を「現反別8畝14歩の内南西の部分1畝歩」としたものです。この土地の、東側部分220㎡(昔風に言えば「2畝6歩くらい」ということになります)ほどを分筆したい、というのが依頼の趣旨でした。
しかし、このような場合東側220㎡の分筆はできない、ということになっています。土地の一部についての権利に関する登記があるときには「権利の存する部分と存しない部分とに」分筆しなければ、その他の分筆はできず、その分筆のためにはその権利についての登記名義人の「承諾を称する書面」を添付しなければならない、となっているから、ということです。

「大正5年」というと1916年ですから100年以上前になります。100年以上前に、10年に満たない期間の「地上権」の登記を、全体の8分の1にも満たない範囲に設定してしまうと、100年以上経った現在においても分筆登記ができず、したがって土地の一部の所有権移転登記もできない、ということになってしまう、ということなわけです。(もちろん、「ミクロコスモス」の外での手続きを取れば分筆は可能なので、そのような努力をしてはいますが・・・。)

このようになることについては、「ミクロコスモス」の住人にとっては、当たり前のことのようなのです。でも、一般的な常識からすると納得いかないのではないか、と思えてしまいます。
「通達や先例により規律されている」ということは、「裁量の余地をなくす」という意味を持っていて、それによって行政の首尾一貫性が確保される、ということなのかとも思いますが、それが過ぎて「合理的な裁量」ということそのものを排除するようになってしまうと困ったことになってしまうのではないか、と思えます。

それは、社会全体として高度な教育を受けた人びとを多く生み出しながら、結局のところその教育成果を「宝の持ち腐れ」にしてしまう、という閉塞の構造でもあります。
もっとも、融通無碍な裁量を許すと「森友学園」のようなことをしてしまうのが「行政」なのだとすると、仕方ないことなのかもしれませんが・・・。
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