大分の土地家屋調査士ブログ

「土地家屋調査士の業務と制度」を中心に、それに広い意味で関連する様々なことについて一人の人間として思うところを書きます。

連載7・・・「境界問題」番外編

2017-06-28 14:55:49 | 日記
「境界問題」について、明治初期の「筆界の誕生」を見てきたのですが、ちょっと中休みで、実際的なことについて書きます。

つい最近、私のおこなった業務で「境界の専門家としての土地家屋調査士」ということを考えさせられる案件がありました。

まずは、非常に直接的・即自的なところで言うと、「境界問題というのは素人の寄せ集めで処理されているものだな」ということをあらためて痛感しました。
そこからもう少し前向きに考えると、「唯一『専門家』っぽい存在である土地家屋調査士がしっかりしないとメチャクチャになっちゃうな」ということになります。
少しきれいに言うと、「やはり『境界の専門家』と言いうるのは土地家屋調査士しかない」ということと、「『境界の専門家』としての役割を果たすためには今のままでは足りないのであり、もう少ししっかりとした態勢を作っていく必要がある」ということになります。


もう少し具体的に話すようにしましょう。

3年ほど前に分筆登記の行われた土地についての(再)分筆の依頼を受けました。資料を見ると、分筆時の地積測量図は当然「全地測量」のもので、街区基準点にもとづく測量がおこなわれたものとされています(もちろん土地家屋調査士作成のものです)。また、道路との境界確認書もあります。
それらを見たときには、「実に簡単な案件だな」と思ったものです。

しかし、この「地積測量図」が実にメチャクチャなものでした。分筆前の一筆の土地について「筆界」として表示されているものが、①公図の形状と一致しない、②既提出の地積測量図と一致しない、③現地の土地利用状況状況と一致しない、④街区基準点の測量成果と一致しない、のです。
つまり、通常考えられる「一致すべきもの」と何一つ一致しないわけです。こんなものが通用していいのか!?が率直な感想です。
しかし、事実の問題として、このような図面は、道路管理者たる市役所との「境界確認」を経て、分筆登記の際に利用され(つまりその形で「筆界認定」され)、登記所に備え付けられることによって公示されているわけです。

これってどういうことなのだろう?と思ってしまいます。
まず④の「測量成果と一致しない」ということについては、境界確認を行う市役所の道路管理部門も法務局の表示に関する登記審査部門も、実際に測量を行うわけではないので、仕方ないと言えば仕方ないこと、になるのかもしれません。要は「調査士さんを信じるしかない」ということになるのかもしれないわけです。こういう時だけやけに持ち上げられて「国家資格をもって責任ある業務を行うのが調査士さんなのだから」などと言われたりもします。しかし、実際に測量を行わないまでも、書面上のチェックでもできることはあるわけですから、それはちゃんと行うべきでしょう。私たち土地家屋調査士の側から言っても、「真実性の確保(虚偽性の排除)」のための自主的な努力をもう少し行うべきなのだと思うのですが、「調査報告書の改定」にあたっても、むしろ「責任の軽減」を図って後退さえしてしまっているわけで、やはり問題がある、とすべきでしょう。

②の既提出の地積測量図との関係については、この土地は昭和51年に道路拡幅の分筆が行われているものでその際の地積測量図があります。その地積測量図では分筆した土地はカーブを描いているのですが、現況は、当該分筆対象地の部分についてはまっすぐ側溝が入っています。その隣接の土地については地積測量図通りにカーブの形状をしており、隣接地と分筆対象地とを合わせてみると地積測量図の示す線が現地のどこにあるのかは明らかになります。しかし、3年前の分筆の際には現況のまっすぐの形で市役所との境界確認が行われ、それに基づいて分筆登記も行われてしまっているわけです。
この点について、市役所に「3年前の境界確認の際に既提出の地積測量図を考慮しなかったのか?」と質問したところ「古い地積測量図なので誤っているものと判断した」ということでした。「何となくもっともらしいけど何の根拠もない素人判断」とでも言うべきものです。

①と③の「公図と現況と合致しない」については、この案件の場合、公図と現況とは合致していました。したがって、通常であればそれにもとづいて「筆界」の判断はされるはずです。それと異なるものが出てくる、とは通常考えられないのですが、本件の場合どうしてこういうことになってしまったのか、と見てみると、3年前の分筆の時には「全地測量」であるにもかかわらず分筆だけが行われていて地積更正が行われていません。土地台帳の地積を引きついでいる土地(一度昭和51年に道路拡幅の分筆が行われていますが、その時は当然のことながら残地・差し引き計算です)で、分筆前の土地の登記地積が実測面積と合致する、というのは通常考えられないことですが、この案件では「合致する」ものとされていました。つまり、「確認(認定)された筆界の位置で一筆の土地の地積を算出する」のではなく、「『筆界』の位置を登記地積と合致する位置にする」ということが行われていたわけです。だから、「筆界」の位置を公図とも現況とも一致しない位置にしてしまったわけです。
先に④に関するところでも言いましたが、たしかに「審査」をおこなう人たちは実際に現地での測量などの調査を行うわけではないわけですから、判断をするための材料が必ずしも十分ではない、ということもありうることです。しかし、それならそれで、何らかの形でのチェックを行うようにしなければならないはずです。
そして、もしも実際的な問題として、そのようなチェックをなしえないのだとすれば、「審査をする」という看板自体を下したほうがいいのではないか、と思えます。

このように、「素人ばかりが寄ってたかっている境界問題の世界」において、土地家屋調査士は「唯一の専門家(っぽい存在)」としてあります。現状からすると「調査士への信頼性」こそが「正しい境界問題の処理が行われていること」を唯一担保するものでさえある、と言える状態です。
こんなことでいいのか?とも思いますが、実情がそうなのであれば、それにこたえるようにしなければならない、というのが私たちの責務だと考えるべきなのでしょう。
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