大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

読んだ本―「キラキラネームの大研究」(伊東ひとみ著:新潮新書)

2015-07-05 16:08:33 | 日記
元々は違う本を買うつもりだったのですが、ちょっとした手違いで手許に来たので読んでみました。特に、この問題に関心があったわけではないのですが、最近私の知り合いで生まれた子の名前を聞くたびに「へえー」と思うことが多いので、少しは興味があった、ということでしょう。

「光宙」と書いて「ピカチュウ」と読ませるような名前を付ける親がいる、という「話」があるそうです。この「話」は安倍首相(当時は野党自民党総裁)の耳にまで入っていて「ペットではないのだからそういう親も指導しなければならない」と講演の中で言われたこともあるそうです。

もっとも、この「話」(=「光宙」と書いて「ピカチュウ」と読む)は、現実にそういう例があることを確認できているわけではなく、一種の都市伝説なのではないか、とも言われています。「楽太(るんた)」、「愛夜姫」(あげは)、「紗冬」(しゅがー)、「心」(ぴゅあ)、「空翔」(あとむ)という名前がある、といわれていることについても同様のように思えるので、眉に唾をつけながら聴いておくべきことでしょう。

しかし、このように極端なものではなく実際にあるものでも、結構すごい名前(読み方)があります。本書では、秋田県のある市の広報誌の「お誕生おめでとう」欄に乗っていた名前が届け出順に紹介されています。
男の子 凌真(りょうま)遥斗(はると)尋(ひろ)琉生(りゅうせい)羽琉(はる)禮示(ひろし)奏和(かなと)
女の子 咲愛(さくら)楓花(ふうか)珠世(たまよ)栞來(かんな)杏(あん)優維(ゆい)心結(みゆ)
なんの選択もしないで初めから7つを順番に並べただけで、これだけ珍しい名前、読めない名前がでてくるのですから、名づけの現実は結構「進んでる」と思わされます。

このような命名の方法の「方程式」を本書では次のように分析しています。①漢字の訓読みの一部を切り取る(例:希愛=のあ)、②漢字の音読みの一部を切り取る(例:美桜=みお)、③難しい読みを用いる(例:颯太=そうた)、④珍しい名乗りを用いる(例:栞來=かんな)、⑤置き字を用いる(例:蒼空=そら)。⑥漢字のイメージで読む(例:陽葵=ひなた)、⑦熟字訓を分解して読む(例:奏和=かなと)、⑧外国語読みにする(例:月=るな)、⑨外国語の音に感じを当てはめる(例:澄海=すかい)等というわけです。分析の仕方、という問題として面白いですね。

もっともこのような命名法は、特に新しいものであるわけではなく、結構昔から、たとえば①の方法は「修巳=おさみ」のように、②の方法は「有美子=ゆみこ」のように、③の方法は「木綿子=ゆうこ」のように使われていた、ということですので、分析してみると目新しいことではない、ということにもなります。

これは、わが国における命名とその読み方に関する決まり(どんな読み方をしてもかまわない)に直接の根拠があり、さらに言えば「声の文化」と「文字の文化」との分裂、という文化論的な問題にまで行き着くものだとされています。 
元々、さほど関心があって読んだものではなかったとは言え、予想を超えて奥深い問題だ、ということがわかって、面白かったです。


別の話。最近、このブログに「コメント」を寄せてくれる人がいますので、そのことについて。
ブログの開設の頃に、「コメントが来れば読むし、基本的に削除もしないが、特に対応はしない」というのを原則的な対応方針としました。今回もそういう対応にします。
なんらかの対応をしようかと思ったこともあるのですが、「炊き出しで豚汁を振舞ったら、豚汁の中に入っていた牛蒡のことを木の根が入っていると難癖をつけてきて騒ぎ出している」みたいなレベルなものなので、相手にするのも「筆の汚れ」と思い、やめることにしました。
事実無根のデマによるケチつけで、投稿者にとっても冷静になって読み返すと恥ずかしいものかもしれませんが(冷静になることのある人だったら)、どこの誰かも知らない人のことなのでそこまで気にしてあげることもないかと思い、削除もせずに置いておく、という基本方針通りの対応としておきます。