大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

93条調査報告書様式の改定検討

2013-10-12 08:59:24 | インポート

93条調査報告書の様式改定について考えます。

まず、とっても基本的なところから「93条調査報告書」とは何か?ということを確認します。不動産登記規則93条は、次のように規定しています。

第93条  登記官は、表示に関する登記をする場合には、法第29条 の規定により実地調査を行わなければならない。ただし、申請に係る不動産の調査に関する報告(土地家屋調査士又は土地家屋調査士法 人が代理人として登記を申請する場合において、当該土地家屋調査士(土地家屋調査士法 人の場合にあっては、その代表者)が作成したものに限る。)その他の申請情報と併せて提供された情報又は公知の事実若しくは登記官が職務上知り得た事実により登記官が実地調査をする必要がないと認めたときは、この限りでない。

これにより、調査士が申請に当たっておこなう「不動産の調査に関する報告」を行った場合には、登記官の実地調査を省略する可能性がある、ということになっています。それは、「必ず」というものではありませんが、わざわざ条文上列挙している「省略要件」の冒頭に、詳細な限定をもつけて「調査士による不動産調査報告」が挙げられていることの重みを考えると、それにより「登記官が実地調査をする必要がないと認」める蓋然性は高いものと判断すべきことになるでしょう。これが、「法令に基づく行政事務の実施」のあり方の「筋」であるのだと思います。

しかし、現実においては、わざわざ但し書きの冒頭で詳細な限定をつけて挙げられている「土地家屋調査士による調査報告」の提供があっても、それをもって登記官が実地調査をする必要がないと認め」るに至らず、実地調査が行われることが少なからずあるようです。

これは、「法令に基づく行政事務の実施」のあり方の「筋」からするとおかしなことなので、この現状は改善されるべきです。では、これをもたらす原因は何か?ということになります。

考えられるのは、まず①調査士による調査報告が、登記官が実地調査をする必要がないと思えるような内容になっていない、ということです。もしそうなのであれば、調査士としては反省して、より充実した内容を報告して、実地調査の省略に寄与できるよう努めるべきです。

次に②登記官が調査士の調査報告を読み切れていない、ということが考えられます。申請時点までに現場にいやになるほど行き尽くしている調査士と、申請を受けてはじめて現場のことを書面上で知るにすぎない登記官とでは、その時点での情報量に格段の違いがあります。その上で、調査士が様々な情報を提供しても消化しきれない、ということもあるのかもしれません。

これらの問題については、それぞれ個別に能力の向上を図って問題の解決に向かう、ということが追求されるべきではありますが、それとともに、より書きやすい、より読みやすい環境の設定をも考える必要があります。そのようなものとして「様式」自体を検討しなおすことが考えられて然るべきではないか、ということになります。

この場合、もちろん目指されるべきなのは、不動産登記規則93条のただし書きで敢えて挙げられた「調査士による調査報告」がその所期の機能を果たすようにすることです。その目的が果たされないのなら、わざわざ変える必要はない、ということになります。

また、「目的」ということで言えば、この不動産登記規則93条を含めた不動産登記制度そのものの目的ということを見据えて、不動産にかかる権利の保護のための法的判断を適確に行って適確に表現する役割についても意識しておく必要があります。

これは、特に「筆界」をめぐる問題として、今後さらにはっきりとさせていく必要があるでしょう。現実の問題として、日々の登記手続きの中で、「筆界の認定」を行っているのは誰で、それはどのような内容なのか、そして筆界の認定と公示をするということがどのような法的な意味を持つのか、ということを明らかにして行く方向性が必要なのだと思います。

なお、「93条調査報告書」については、これまで調査士の中では、オンライン登記における表示登記に関する特則としての不動産登記令13条2項における「原本提示」との関係で考えられることが多かったようです。この「原本提示」というのは、オンラインという方式と背反するようなものなので、それとして問題にしていく必要はあるのだと思いますが、本来的には「93条調査報告書」の問題と直接関係のある問題ではないように思えます。その整理をきちんとすることを含めて検討は進められるべきなのだと思っています。