雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

便利な言葉 ・ 小さな小さな物語 ( 991 )

2017-07-27 08:24:37 | 小さな小さな物語 第十七部
『便利な言葉』ってありますよね。
国会辺りでは、「記憶にない」あたりがその横綱格のようですが、最近では、寄ってたかってこの言葉を悪者扱いしている気がして、実に不愉快です。
二日間にわたって行われた国会の閉会中審査においても、再三、「記憶にない」という答弁が登場していましたし、質問する方からは、「記憶にない」とはどういうことか、それは、「あったかもしれない」ということですね、と攻め寄る場面も見受けられました。
これ、かなり乱暴な議論のような気がします。確かに、答弁者の「記憶にない」の中には、真実の隠れ蓑に使うこともあるのでしょうが、普通の人間は、「記憶にない」ということはあるものです。それを、まるで錦の御旗を振りかざすが如くに、「記憶にない」という現象などないかのような発言は、見ていて不愉快になりました。

それはともかく、本稿は国会の審議そのものを論評するのは目的ではありませんので、話を『便利な言葉』に戻させていただきます。
ある先輩に、やたら「(何々)的」という言葉遣いをする人がいました。言葉の中には、「的」を付けないと成立しない言葉もあるにはありますが、必要がない場合でも「(何々)的」とすることで、言葉の持つ意味が微妙に変化させることが出来ます。ただし、その変化は、フォークボールみたいなところがあって、使用者の意思とは違う方向に行く可能性もあります。
この「的」という言葉は、辞書で調べてみても、今一つ納得出来ないような説明がされているようです。私だけかも知れませんが。
ある時、酒の勢いも借りて、その先輩に「どうして、片っ端から『的』という言葉を付けるのか」と恐る恐る聞いたことがあります。すると、その先輩曰く、「調味料だよ、調味料」と、笑って答えてくれました。

『便利な言葉』は、他にもたくさんあります。
当コラムで何度か取り上げさせていただいている「頑張れ」も、その一つです。
「私たち」という言葉、自分の考えや主張を、さりげなく一般化してしまう働きがありそうです。私自身度々使っていますが、少々ずるい言葉といえます。「我々は」と言い換えても当然同じですし、「みんなが言っている」「誰も賛成しないぞ」などというのも、同じ仲間のようなものです。

『便利な言葉』の多くは、受け取り方によって微妙な差が出る物がほとんどです。強すぎるものを薄めたり、他の言葉ではなかなか表せないような繊細な味わいを持っています。先輩が言っていたように、「絶妙を生み出す調味料」なのかもしれません。
ただ残念ながら、あまり役立たないことも知らないで、悪意を包むオブラートとして使われていることも多いようです。
カタコトの日本語を話す外国人が、「アリガトゴザイマス」と話してくれているのを聞くと、横で見ていても嬉しくなってきます。「アリガトウ」こそが、究極の『便利な言葉』なのかもしれません。
どのような言葉でも同じなのでしょうが、結局、言葉は、話し手と聞き手の関係によって姿や味わいを変えるということなのでしょうね。
願わくば、憎々しげに投げつけるような言葉は、出来るだけ聞かなくて済むようにしたいものですねぇ。
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