雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

もう一日欲しい ・ 小さな小さな物語 ( 888 )

2016-10-12 09:34:29 | 小さな小さな物語 第十五部
激しい天候が続く八月も今日が最後の日です。
すでに二学期が始まっている地域もありますが、多くの小・中学校は今日が夏休み最後の日です。
遥かに遠い昔のことですが、小学生だった頃、ほとんど毎年のように、夏休み最後の日を迎える時には、「あーあ、せめてもう一日夏休みがあればなあ」と嘆いたものでした。もう一日あれば、宿題を全部仕上げられるのに、というわけです。中学生にもなれば、科目ごとの最初の授業日を睨みながら、作戦を練るわけですが、結論は、「もう一日欲しい」でした。

では、本当にもう一日あれば、宿題をすべて完了させることが出来るのかどうか、今考えてみると大いに疑問ですが、おぼろな記憶をたどってみると、夏休みの宿題でとんでもなく恥ずかしい目や辛い目にあったことが思いだせませんから、何とか苦しみながらも仕上げていたのでしょうか。それとも、神様が私たちに与えてくれた最もすばらし才能である「忘れることが出来る」という恵みのせいなのでしょうか。
それにしても、夏休みの最後になって、「もう一日欲しい」とカレンダーを恨むぐらいなら、それもほとんど毎年のことなのですから、その一日をどこかで生み出そうとは考えなかったのでしょうかねぇ。

しかし、これは子供の宿題の問題だけでなく、多くの場面で発生していることではないでしょうか。
東京都の築地市場の移転問題が話題になっていますが、設計上の不備や工事の不明朗な面があるのかどうかはともかく、移転日ぐらいはしっかりしたものを策定してほしいものです。何でも、土壌調査の最終結果が来春だそうですから、そもそも移転日というのはどういうつもりで決定されていたのでしょうか。それとも、土壌検査など始めから答えが分かっていたのでしょうか。
多くの感動を与えてくれたリオ・オリンピックでしたが、その中でも、実況放送や解説者の言葉でも同様の言葉が聞かれました。「惜しくもあと一歩、いやあと半歩でした」とか、「あと5mあれば逆転できましたのにねえ」等々です。これらの場合も、「あと半歩」は最後の部分で登場したわけでもなく、「あと5mあれば」と言われても、水泳であれ陸上であれ、距離は前もって知っているはずですからねえ。

考えてみますと、小・中学生の頃の夏休みの宿題は、出されていた内容などほとんど覚えていませんが、「もう一日欲しい」と思った経験は、実に貴重なものであったかと思うのです。
ただ、同時に思うことは、その後、「もう一日欲しい」といった出来事に数多く出会ってきたと思うのですが、あの夏休み最後の日ほどの真剣さには、どれも及ばなかったようにも思うのです。
このコラムを見ていただいているお方には、小・中学生の方はほとんどいないと思うのですが、夏休み最後の一日の健闘を祈っています。

( 2016.08.31 )
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