雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

朝廷の処断 ・ 今昔物語 ( 巻23-13 )

2015-09-23 09:13:10 | 今昔物語拾い読み ・ その6
(第一話から第十二話までは欠文です)

          朝廷の処断 ・ 今昔物語 ( 巻23-13 )

今は昔、
一条天皇の御代に、前下野守平維衡(サキノシモツケノカミ タイラノコレヒラ・伊勢平氏の祖)という武者がいた。この人は、陸奥守平貞盛という武者の子である。
また、同じ頃、平致頼(タイラノムネヨリ・当時は無官)という武者がいた。共に武威を競っていたが、双方の言動を相手に悪しざまに告げ口する者共がいて、二人は敵視し合うようになった。

両者は共に伊勢国に住んでいて、致頼の方が先んじて維衡を討とうとして合戦を仕掛けたが、双方の子孫や一族や郎党・従者が多勢加わり、互いに射殺されて多くの死者を出した。
しかし、勝負がつかないまま、維衡は左衛門府の弓場に召喚され、致頼は右衛門府の弓場に召喚され、共に尋問を受けたが、両者ともに自ら罪を認め罰せられることになった。
そこで、罪科が決められることになったが、明法博士は法に照らして、「先に仕掛けた致頼の罪が最も重い。すみやかに遠い国に流されるべきである。受けて戦った維衡の罪は軽く、他国に一年間移すのが妥当である」と答申した。
これにより、天皇は宣旨を下されて、致頼は遠い隠岐国に流され、維衡は淡路国に移された。

これより後のことであるが、藤原致忠(フジワラノムネタダ・備後守、陸奥守など歴任)という者がいたが、美濃国へ下る途中で、前相模守橘輔政(タチバナノスケマサ)という人の子と郎等を射殺すということがあった。
輔政はその事を朝廷に訴え出たところ、宣旨が下され、検非違使の大夫尉(ダイブノジョウ)である藤原忠親並びに右衛門志(ウエモンノサカン・尉は三等官、志は四等官)の懸犬養為政(アガタノイヌカイノタメマサ)らをその国に派遣して、事の起こりを調査し糾問させた。致忠が罪を認め罰せられることになり、罪科を決定するにあたって明法博士の答申に従って、致忠を遠くの佐渡国に流された。

このように、昔も今も、かくのごとき罪がある場合には、朝廷が必ず処罰を行うのが常である、
となむ語り伝へたるとや。

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