雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

仏を廻る ・ 今昔物語 ( 1 - 36 )

2017-03-22 08:22:45 | 今昔物語拾い読み ・ その1
          仏を廻る ・ 今昔物語 ( 1 - 36 )

今は昔、
仏(釈迦)は、シャエ城に入って乞食(コツジキ・托鉢)をなさった。
その時、城中に一人の婆羅門(バラモン・古代インドの四姓制度の最上位に位置付けられた僧侶(司祭)階層)がいて、場外からくる間、仏を見奉っていたが、仏は光明を放って巍々(ギギ・高く厳めしさま)としておられた。
婆羅門はこれを見奉って、歓喜して仏の回りを一周して、礼拝して去っていった。

すると仏は、微笑(ミショウ・ほほえむ。但し、拈華微笑という言葉があるように、何らかの意思伝達も含まれているらしい)して、アナン(高弟)に告げられた。「あの婆羅門は、私を見て歓喜して、清浄の心で以って仏を一回り廻った。この功徳によって、これより後、二十五劫(コウ・劫は時間の単位で無限に近い長さ)の間、三悪道に堕ちることなく、天上・人中(ニンジュウ・人間界)に生まれて、常に楽しみを受けるだろう。二十五劫の後は、辟支仏(ビヤクシブツ・仏に一度聴法した後、山林などに籠り独学自修して悟りを得た聖者)となって、名をジシナギリという」とお説きになった。

されば、この事から分かることは、もし人が、仏や塔を廻れば、五種の徳を得ることが出来るということである。その一つは、生まれる時に常に端麗な容姿を得ることが出来る。二つには、生まれる時には常に美しい声を得ることが出来る。三つには、常に天上に生まれることが出来る。四つには、常に王家に生まれることが出来る。五つには、涅槃(ネハン・煩悩を消滅した安らかな悟りの境地)を得ることが出来る。
されば、仏を廻り、塔を廻ることは容易いこととはいえ、その功徳は限りなく大きい。ひたすら一心に仏を廻り奉るべし、
となむ語り伝へたるとや。

     ☆   ☆   ☆
ジャンル:
その他
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 仏の御名を唱える・ 今昔物... | トップ | 音楽を手向ける ・ 今昔物... »

コメントを投稿

今昔物語拾い読み ・ その1」カテゴリの最新記事