雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

ひとつの『いのち』 ・ 小さな小さな物語 ( 861 )

2016-10-12 13:22:31 | 小さな小さな物語 第十五部
今月三日の朝、五月二十八日から行方不明になっていた小学二年生の男の子が発見されたというニュースは、何と表現すれば良いのか分からないほど嬉しく、関係者の方々、とりわけ本人である男の子に拍手を送りたいと思います。
この事故が発生して以来、報道機関は大々的に取り上げ、世間でも様々な意見が交錯したようです。
発見に至るまでの警察・消防・自衛隊などを中心とした捜索は規模も大きく、自衛官が横に手をつなぐようにして、それこそ一寸の隙間も見逃さないように原野に入って行く姿は、テレビの報道だけで胸が熱くなりました。
そして、無事発見ということで、ドクターヘリが病院に到着するときの映像などは、何だかんだと文句は言っていますが、「ああ、私たちの国は素晴らしい」としみじみと感じました。

七歳の男の子が、薄着で食物も持たず、夜間の温度がまだ低い山林に迷い込み、六日間を水だけで堪えて無事保護されたというニュースは、海外にも伝えられ、中には速報として伝えた所もあったそうです。
多くは快挙として伝えられたようですが、中には、保護責任についての意見もあったようです。何でもアメリカなどは、まだ幼い子供を放置するということに対しては特に厳しい見方がされていて、そうした非難も少なくなかったようです。
国内においても、著名な評論家が、「これはしつけではなく、虐待だ」といった意見を述べられたり、「いや、このまま育って、電車などに石を投げつける子供になったらどうするのか」と、強く父親を擁護する意見もありました。
本コラムでは、この面に関する意見は差し控えさせていただきますが、七歳の少年の頑張りが、本人自身はもちろん、それ以上に父親を救ったことに拍手喝采したいと思います。

『いのち』という言葉を使う時、多くの場合、私はその文字を選ぶのに思案します。『いのち』が良いのか、『命』が良いのか、『生命』が良いのかと。たいていの場合、一生懸命考えるほどの問題でないようなのですが、やはり、この言葉には重さを感じるのです。
「人の命は地球より重い」などという表現が用いられることがありますが、個人的にはあまり好きな表現ではありません。「あの子の命を返してほしい」などという痛切な声は、他人事であっても切ないものです。取り返すことも、何かに代用したり、何かと比較することなど出来ないものはきっとたくさんあると思うのですが、命はその代表なのかもしれません。
今回の男の子を捜索するニュースは、『いのち』の重さや切なさを、ずしりと伝えてくれたように思います。

無事発見された時の、男の子が自衛官からもらったおにぎりを手にしている写真は、本当に素晴らしい写真だと思いました。おそらく、あの写真で、心が豊かになったり、いつもより少しばかり優しくなったり、心の奥にしみてくるような力を貰った人は、私だけでなく数多くいたのではないでしょうか。
このところ、苦々(ニガニガ)しい事件に、憎々しい笑顔で苦々しい言葉で対応する姿を散々見せられてきただけに、その思いはひとしおです。
願わくば、これまでも男の子に様々な経験をさせるなどして育ててきていると伝えられる父親が、自信を無くすことなく、男の子と、男と男の末長い付き合いを続けてくれることを祈っています。

( 2016.06.08 )
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