雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

すれ違うだけの人 ・ 小さな小さな物語 ( 844 )

2016-10-12 15:21:22 | 小さな小さな物語 第十五部
東京新宿のゴールデン街の火事が大きなニュースとして取り上げられていました。
新宿は、わが国最大の繁華街の一つともいえ、その一角の戦後間もない頃からの木造建築も数多く残されている密集地での火事ですから、一つ間違えば大惨事になるところでした。不幸中の幸いと言うのでしょうか、出火場所が密集地の端に当たる場所であったことや、昼間の時間であったことが幸いしたようです。もっとも、この街の場合は、夜間の方が防犯防火共に昼間より安全なのだという意見を述べられている人もいました。

東京近辺に住んでいない人でも、ゴールデン街という存在は、かなり著名なのではないかと思われます。それも、何となく伝説的な風聞も加わって、他所者には少々近寄りがたいイメージが感じられます。
ところが、最近では、外国人観光客の人気が高く、訪れる人も少なくないそうです。
どのような調査なのか確認していないのですが、外国観光客の東京における訪れたい人気スポットの第一位がこのゴールデン街だそうで、因みに第二位は渋谷のスクランブル交差点だそうです。
インターネットなどで紹介される影響なのでしょうが、その昔、田舎から出て来た日本人が、「東京だよ、おっ母さん」などと案内されたこととは、雲泥どころの差ではないような気がします。

テレビのコメンテーターなどの話の受け売りですが、ゴールデン街の魅力の第一は、大半が十人も入ればギューギューといった狭い空間の中で、気の置けない語らいが出来ることであり、反対に、その混雑の中でたった一人で飲んでいても何の抵抗も受けないことにあるそうです。
第二位の渋谷のスクランブル交差点の方は、外国ではあまり見られない光景であることに人気があるようです。テレビでも時々取り上げられた映像を見ていますと、確かに、大変な数の人々が、四方八方に好き勝手のように歩きだし、しかも衝突することもなく行き交うさまは、まるでマスゲームでも見ているような壮観さがあります。

しかし、考えてみますと、三百店舗ほどもあるというゴールデン街に集う人や、渋谷のスクランブル交差点を縫うように行き交う人は、そのうちのどれほどの人と交流することになるのでしょうか。もちろん、家族連れや親しい人と行動を共にしている人も多いのでしょうが、それを考慮しても、ほとんどの人は、すれ違うだけの人と言える人たちではないでしょうか。
もっともそれは、この二つの人気スポットに限られたことではなく、小さな街の駅前や、ひなびた寺院の境内で出会った人も、そのほとんどは、すれ違うだけの人のようです。
まあ、そうとはいえ、『袖振り合うも多生の縁』という言葉もありますから、前世か、前々世か、あるいはもっと前の世で喜怒哀楽を共にした人も多く含まれている可能性はあるかもしれませんが。

( 2016.04.15 )

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