雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

『頑張って』と胸を張って ・ 小さな小さな物語 ( 987 )

2017-07-15 08:41:54 | 小さな小さな物語 第十七部
九州北部の豪雨は、甚大な被害となってしまいました。
多くの人が亡くなり、今なお行方不明の人も多数いる状態です。幸い命を守ることが出来た人々にとっても、報道される被害地の様子を見ますと、今後の生活の立て直しを考えますと、茫然となってしまうのではないかと痛ましい限りです。
つつしんでお見舞いを申し上げ、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。

被害地の一部には、すでにボランティアの方が支援に入った地域もあるようですが、まだほとんどの地域では、自衛隊員や消防隊員などの専門的な訓練を受けた人でないと危険であり、作業も困難な状態のようです。
しかし、大きな被害を受けた地域の中でも、個人の家の多くは立ち入れるようになっている様子で、親せきや知人、そしてボランティアの人などが作業を手伝っている様子が報道されています。
犠牲者を出してしまった人や、家屋などが大破してしまった人たちに、近しい関係であればあるほど、どのように声をかければよいのか、見舞いに行く方もかける言葉に躊躇してしまいがちです。下手な慰めなど、何の役にも立たないことを経験している人であれば、なおさらのことです。
けれども、そのような時こそ、自らの思いを込めて、『頑張ってください』と胸を張って励ますべきではないでしょうか。

直近の災害の後のお見舞いに関する報道の中で、安易に『頑張って』という言葉を使ってはならない、といったご高説を述べておられる方がおりました。被害の後片付けをしている人の多くは、心身ともに限界に近い状態にあるのに、さらに『頑張って』などというのは酷であり、絶対避けるべき言葉だというのです。
『頑張る』については、ずっと前にも当ブログで取り上げた記憶がありますので、重複する部分も多いと思いますが、何としても『頑張って』という言葉を擁護したくて取り上げました。
一般的な辞書では、『頑張る』の意味としては、「①我意を張り通す。 ②どこまでも忍耐して努力する。 ③ある場所を占めて動かない。」とあります。この三つだけでも相当守備範囲の広い言葉だということが分かりますが、私たちが日常で用いられる場合の意味は、さらに幅広いものです。
確かに、スポーツなどにおいて、「倒れるまでやり抜け」といった意味で使われることもありますが、「ほとんど何の意味もない、挨拶代わりみたいなもの」として使われることも多く、時には、「恋人たちが、恋の成就を誓い合う言葉」としてさえ使われることがあるのです。

かつて、社会的に弱い立場にある人や、厳しい病状と戦っているような人に対して『頑張って』という言葉をかけることは、「これほど努力しているのに、まだ足らないというのか」ということになるので、絶対に避けないといけない言葉だ、という意見を述べられた高名な方がいたようです。それ以来、テレビのコメンテーターの方なども、この意見に賛成したかのように、時々耳にするようになりました。
しかし、言葉というものは、『頑張って』に限ったことではありませんが、発信者と受信者の心のつながり方によって意味が違うことは当然のようにあるものです。被災されて懸命の後片付けをしている人に対して、近しい人が、「倒れるまで作業をするんだよ」といった意味で『頑張って』などと声かけするものでしょうか。また、声をかけられた人が、そのように受け取ることなどあるのでしょうか。
『頑張って』という言葉は、実に多くの意味を秘めているすばらしい言葉なのです。苦しい立場にある人に対して、心を込めて呼びかける『頑張って』という心情を上回る表現方法など、そう簡単には見つからないはずです。
私たちは、もっと自信を持って、『頑張って』と胸を張って語り合おうではありませんか。
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