雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

勝敗ライン ・ 小さな小さな物語 ( 862 )

2016-10-12 13:21:24 | 小さな小さな物語 第十五部
「勝敗ライン」という言葉は、何も選挙専用の言葉ではないのでしょうが、他ではあまり使われないようです。
プロ野球などでも似た言葉が使われますが、たいていは「優勝ライン」と言った意味で、勝率が50%以上なら勝敗ラインを越えているともいえますが、あまりそのような使われ方はしないようです。また、当然ですが、1対1での戦いの場合もあまり使われません。最近のニュースなどでは、アメリカの大統領予備選挙で、獲得代議員数が「勝敗ライン」つまり指名獲得まであと何人と再三報道されました。

さて、この言葉の活躍場所は、わが国の参議院選挙に移りました。
早速に、各党代表者や報道機関などが様々な「勝敗ライン」を披露しているようです。なかなか手の内を見せないのも選挙戦略の一つだと思うのですが、伝えられている数字を見てみますと、なかなか興味深いものがあります。
首相は、与党で、つまり自民・公明で今回の改選定員の過半数が「勝敗ライン」としているようです。首相は大変厳しい数字を「勝敗ライン」として、消費税引き上げ延期の民意を問いたいと言っているようです。民意を問うということであれば、過半数の支持を得ることが指示を受けたということになるのですが、参議院議員を選ぶのには、他の選択肢もありますから微妙です。それと、首相が発言された与党で改選議席の過半数という数字が、ご本人は、本当に厳しいと思っているのか、その程度は取れるでしょう、と思っているのかで、かなり様子が違ってきます。
野党第一党の代表は、改憲を推進する勢力の参院での2/3を阻止するのが「勝敗ライン」らしいことを発言されたようで、そうだとすると、もしかすると、与党も野党も「勝敗ライン」を突破して、両方が勝利するということもありそうです。

「勝敗ライン」などというものは、もっと明確に勝・敗を区切るラインだと思うのですが、実際の社会においては、微妙なところにラインを引くということはあるようです。
海外のことになりますが、大接戦となっていたペルーの大統領選挙は、どうやら決着がついたようですが、その差が「0.何%」という結果のようで、すばらしい選挙戦であったと言えないことはありませんが、これほど拮抗したところに「勝敗ライン」があったとなれば、今後の国政運営は大変ではないかと、他国のことながら心配してしまいます。
また、イギリスでもEUからの残存・離脱を決める国民投票の予想が大接戦になっているようで、これも「勝敗ライン」が50%に近くなればなるほど、どちらが勝っても今後の政権運用は大変ではないでしょうか。

多数決は民主主義による政治運営の最も基本的なものです。
しかし、その勝敗の分疑点、つまり「勝敗ライン」が高くなればなるほど意見は対立していることになりますから、その後の融和は難しい課題となります。「2対8」とか「3対7」ほどの差がつく場合には、なるほど多数決はすばらしい手段だと思うのですが、「50.01対49.99」などの場合は、多数決で決めてよいのかどうか考え込んでしまいます。わが国でも、重要とされる案件には、多数決ではなく、2/3の賛成が必要とされる制度が見られるのは、このあたりのことを配慮してのことかと思われますが、それはそれで、どうも民主的でないような気もします。
さらに言えば、間もなく行われる参議院選挙の場合でも、そもそも一票の格差など選挙制度が公平なものかという問題もあります。「もっとすっぱりと人口割にすればよい」という意見もあれば、「大都市選出の議員ばかりになって、わが国の広い海域を護ることが出来るのか」という意見もあります。選挙制度、定員の割り振り、などを考えるだけでも、どうも多数決は万能ではないような気がしてならないのです。
何か、魔法のようにすばらしい「勝敗ライン」の設定方法はありませんでしょうか。

( 2016.06.11 )
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