雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

一宿の恩義・ 今昔物語 ( 2 - 5 )

2017-06-02 08:20:07 | 今昔物語拾い読み ・ その1
          一宿の恩義 ・ 今昔物語 ( 2 - 5 )

今は昔、
仏(釈迦)はシャエ(舎衛)国のある人の家に行かれて、六日間滞在して供養(ここでは、飲食の提供)をお受けになった。
七日目の朝、お帰りになろうとすると、空が曇り風が吹き出し、洪水が山河で発生した。その家の主人は仏に申し上げた。「今日はお留まりください。雨風が難儀でございます。また、ちょうど七日の供養をさせていただきます」と。シャリホツ(舎利弗)・モクレン(目連)・アナン(阿難)・カショウ(迦葉)らの御弟子たちも、「今日はお留まりください」と申し上げると、仏は、「それは駄目だ、そなたたちは極めて愚かである。一言の言葉を交わし、一夜同じ宿に泊まり合わせるような縁は、みな前世からの因縁によるものである。家の主、よく聞きなさい。そなたは前世において、人として生まれたが(この部分は、別の文献では「虱(シラミ)」となっており、その方が正しいようだ。)人に捨てられて寒さのため死ぬところであった。その時、私がそなたを拾って身に付けて、六日の間温めて命を助けたのだ。七日目の朝、そなたは寒さに堪えられず遂に死んでしまった。そのことから私は、今そなたの家で六日泊って供養を受けたのである。そういうことなので、私は今日この家に留まるわけにはいかないのだ」と仰せになって、耆闍崛山(ギジャクツセン・霊鷲山に同じ)にお帰りになった。
家の主人も御弟子たちも、このことを聞いて貴ぶこと限りなかった。

されば、一言・一宿もみな前世の契りによるものだと知った、
となむ語り伝へたるとや。

     ☆   ☆   ☆

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