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MIUコンサルティングオフィス・社会保険労務士三浦剛のブログです。

コンプライアンス経営へ No.61(休業手当)

2011年03月27日 | 会社の法律ミニレッスン
 会社の法律ミニレッスン企業へのコンプライアンス(法令遵守)の要請は高まっています。
 「知らなかった」では済まなくなってきています。日曜日、「会社の法律」をお勉強!

 第61回は、「休業手当」です。

 労働基準法第26条(休業手当)
『使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。』

 このたびの東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)で被害を受けた事業場(会社)では、事業が続けられないことや著しく制限される状況にあります。被災地以外でも、鉄道や道路等の途絶から原材料、製品等の流通に支障が生じていることや計画停電の影響で休業をしなけれなならない会社もあると思います。にわかに「休業手当」という言葉を目にするようになった方も多いのではないでしょう。今日は、休業手当について確認をしていきます。

 さて、労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業により労働者が就業できなかった場合には、その休業期間中、平均賃金の6割以上の休業手当を支払うことを使用者に義務つけています。

■「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは、どこまでの範囲でしょうか。
 使用者の故意、過失または信義則上これと同視すべきものよりも広く解釈されます。
 しかし、不可抗力によるものは含まれません。  

 次のような場合は「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しません。
(1)このたびの地震のような天災事変などの不可抗力による休業
(2)労働組合が争議をしたことにより、同一事業場の労働組合員以外の労働者が労務提供し得なくなった場合にその程度に応じて労働者を休業させる場合
(3)使用者が各法令を順守することによって生ずる休業
 なお、(3)の例としては、労働安全衛生法第66条による健康診断の結果に基づいて、休業や労働時間の短縮を行った場合などがあります。

 ストとともに最も多く問題となるのが、いわゆる経営障害の場合です。
 資材、設備等の欠陥がもとになる休業は営業設備の範囲内の事故となり、原則として「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当します。
 例えば、~通達(昭和23.6.11 基収第1998号)から~
 親会社からの資材資金の供給を受けている事業を行う下請工場が、親会社の経営難により資材資金を獲得できず休業した場合でも、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するとされています。

 今回出された「地震に伴う休業に関する取扱いについて」の一部を再度掲載します。
 なお、本ブログは3月23日分で記載しています。

■Q4
 今回の地震で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け労働者を休業させる場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たるでしょうか。
□A4
 労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。ただし、天災事変等の不可抗力の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。ここでいう不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。今回の地震で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられますので、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられます。なお、Q2、A2もご覧ください。

■Q5
 今回の地震により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていませんが、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能となったことにより労働者を休業させる場合、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たるでしょうか。
□A5
 今回の地震により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていない場合には、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当すると考えられます。ただし、休業について、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たす場合には、例外的に「使用者の責に帰すべき事由」による休業には該当しないと考えられます。具体的には、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要があると考えられます。なお、Q2、A2もご覧ください。

■Q6
 今回の地震に伴って計画停電が実施され、停電の時間中を休業とする場合、労働基準法第26条の休業手当を支払う必要はあるのでしょうか。
□A6
 今回の地震に伴って、電力会社において実施することとされている地域ごとの計画停電に関しては、事業場に電力が供給されないことを理由として、計画停電の時間帯、すなわち電力が供給されない時間帯を休業とする場合は、原則として、労働基準法第26条に定める使用者の責に帰すべき事由による休業には該当せず、休業手当を支払わなくても労働基準法違反にならないと考えられます。なお、Q2、A2もご覧ください。

■Q7
 今回の地震に伴って計画停電が実施される場合、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて1日全部を休業とする場合、労働基準法第26条の休業手当を支払う必要はあるのでしょうか。
□A7
 計画停電の時間帯を休業とすることについては、Q6の回答のとおり、原則として、労働基準法第26条に定める使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられますが、計画停電の時間帯以外の時間帯については、原則として労働基準法第26条に定める使用者の責に帰すべき事由による休業に該当すると考えられます。ただし、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められる場合には、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて、原則として労働基準法第26条の使用者の責に帰すべき事由による休業には該当せず、休業手当を支払わなくても労働基準法違反とはならないと考えられます。

震災で内定取り消しの学生救え 東武鉄道が65人募集へ

2011年03月26日 | 社会保険労務士
【震災で内定取り消しの学生救え 東武鉄道が65人募集へ】
 《asahi.com 2011年3月25日》より
 東武鉄道グループは25日、東日本大震災の影響で内定が取り消された大学生や高校生などを対象に、正社員を65人募集すると発表した。5月半ばに採用試験を実施し、7月1日に入社してもらう。

 厚生労働省と文部科学省が22日付で、日本経団連など258の経済団体と大手企業に被災した学生などの積極採用を要請していた。東武鉄道グループの採用担当者は「要請を受け、秋に実施予定の中途採用枠の一部を、内定を取り消された人向けに募集することにした」と話している。

 募集対象は全国の高校、専門学校、短大、大学を卒業して3年以内の人で、地震の影響で失業した人も含む。正社員を募るのは、駅での案内業務をする東武ステーションサービスが最大50人、鉄道電気設備の保守点検をする東武エンジニアリングが最大10人、車両の検査修繕をする東武インターテックが最大5人。志望会社を明記し、履歴書を4月30日までに郵送する。勤務は東京都内のほか、埼玉、千葉、栃木、群馬の各県内。問い合わせは同グループ採用担当(03・3621・5122)。

   ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 各新聞やWebでの内容から…
 東日本大震災に関連し、今春の採用予定者の内定取り消しに関する事業主相談が増えています。厚生労働省のまとめでは、ハローワークへの相談が地震発生から18日までの8日間で、全国93社からあったそうです。同省によると、内訳は、津波などで大きな被害を受けた福島16社、岩手9社、宮城5社など。「会社が被災し予定通りの採用が難しい」「入社時期を繰り下げたい」といった内容ということです。
 また、被災地の事業者から岩手労働局などに寄せられた従業員の解雇などに関する相談は、約700件以上に達していることが分かりました。このうち、内定取り消しについての相談は事業者、学生双方から少なくとも十数件あったそうです。

 「当面、営業は再開できず、採用延期も難しい」「会社は原発から5キロ以内にあり、再開のめどが立たない。そんな状態で待ってもらうのは忍びない」「原発事故で仕事が95%減り、休業せざるを得ない」…
 
 厳しいですね。
 それぞれの企業が精一杯対応をしようとしているでしょうが、本当に難しく厳しい状況です。そんな中での東武鉄道の発表には、拍手を!そして、この動きが広がっていくことを期待します!

 記事にある要請は、細川厚労相と高木文科相の連名で22日に出されています。
(1)採用内定を得ている被災地の学生・生徒等が、可能な限り入社できるよう、また、可能な限り予定していた期日に入社できるよう最大限努力する。
(2)被災地の学生・生徒等の入社予定日等について柔軟な対応を行う。
(3)来春卒業予定の大学生等の採用に当たっては、被災した学生からのエントリーシートの提出期限を延長する。
(4)震災の影響を受けた学生・生徒等を積極的に採用する。
となっています。

 最後に、両大臣の連名のメッセージです。
「今後、就職のことで困ったことがあれば、一人で悩まずに学校やお近くのハローワークにご相談ください。政府は、皆様の就職を全力で応援します」

就職内定率 大卒77%、高校生83%

2011年03月21日 | 雇用
 2012年春入社に向けた新卒者の採用活動を遅らせる企業が相次いでいます。多くの企業で採用選考を6月以降に延期するようです。

 一方、この春卒業予定者の2月1日時点での就職内定率が77.4%となったことが文部科学省と厚生労働省の調査で分かり、18日に発表されました。
 77.4%は、前年同期を2.6ポイント下回っており、比較可能な1999年度以降では最低の内定率になります。まだ2.6ポイント下回っていますが、昨年との差が縮まってきています。4月には昨年同期の91.8%を上回るとの見方が出ていましたが…。
 この調査は東日本大震災の発生前に実施されています。「地震の影響で東北以外でも企業が内定を取り消したり、採用を控えたりする懸念がある」(文科省)ことは十分に考えられます。就活がより一段と厳しさを増しそうです。

 推計になりますが、2月1日時点で内定を得ていない学生は、全国で
 大学…9万人、専修学校…5万9千人、短大…1万9千人、高校…2万7千人に上ります。

□大学生の内定率(男女別・文系理系別)
  男子…78.9%(前年同期比1.2ポイント減)、女子…75.7%(同4.2ポイント減)
  文系…76.8%(同1.9ポイント減)、理系…80.3%(同5.9ポイント減)

□大学生の内定率(地域別)
  北海道・東北…78.3%(同0.5ポイント減)、
  関東…79.9%(同2.7ポイント減)
  中部…70.7%(同6.6ポイント減)
  近畿…80.3%(同1.3ポイント減)
  中国・四国…76.3%(同1.1ポイント減)、
  九州…70.5%(同4.7ポイント減)、

□高校生の内定率(1月末現在)
  83.5%(前年同期2.4ポイント増)
  男子…87.0%(同2.3ポイント増)、女子…78.7%(同2.2ポイント増)
 なお、求人倍率は1.15倍(同0.02ポイント減)

□都道府県別に
 高いのは…富山95.3% 石川94.4% 福井93.6%
 低いのは…沖縄55.6% 北海道66.8% 宮城70.9%

 高校生は地元中小企業への就職が多いです。被災地では心配です。

コンプライアンス経営へ No.60(未成年者の労働契約)その3

2011年03月20日 | 会社の法律ミニレッスン
 会社の法律ミニレッスン企業へのコンプライアンス(法令遵守)の要請は高まっています。
 「知らなかった」では済まなくなってきています。日曜日、「会社の法律」をお勉強!

 第60回は、「未成年者の労働契約」その3 です。

 前回は、年少者(満18歳未満の者)の保護規定の一つ「年少者は原則として深夜業禁止」を見てきました。今日は、ここからスタートします。

■原則的に、変形労働時間制や時間外・休日労働を行わせることはできません。
 年少者は、肉体的・精神的に未成熟で一般の労働者と比べて特別に保護される必要ありとして、
 原則的に、変形労働時間制や時間外・休日労働、4週4休の変形休日制が禁止されています。
 週44時間労働が認められている特殊対象事業場でも週40時間1日8時間になります。

 ただし、労働時間については
(1)1週間のうち1日労働時間を4時間以内に短縮した場合
   …他の日に10時間まで労働時間を延長することができます
 例えば、月…4時間、火・水・木…6時間、金・土は9時間労働がOKです。
  (月から金6時間、土10時間はダメです。4時間以下がないので)
 ※これは、年少者の話です(念のため)

(2)1日8時間1週48時間を超えない場合
   …1ヶ月単位または1年単位の変形労働時間制を適当することが可能です。
  ▽1ヶ月単位
    1週の上限…原則:なし、年少者:48時間
    1日の上限…原則:なし、年少者:8時間
  ▽1年単位
    1週の上限…原則:52時間、年少者:48時間
    1日の上限…原則:10時間、年少者:8時間

■危険有害業務の就業制限(労働基準法第62条)
 一定の危険な業務や厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務への就業禁止です。
 (例)ボイラー(一定の小型ボイラーを除く)の取扱業務、溶接の業務
    クレーン、デリック又は揚貨装置の運転業務
 有害な原料等を取り扱う業務や安全、衛生または福祉に有害な場所における業務も禁止。

その他
■坑内労働の禁止(同法第63条)
■帰郷旅費(同法第64条)
が定められています。 

正社員採用増を見込む企業、2年連続で拡大

2011年03月10日 | 雇用
 採用に関する話題を…

 日本経団連は企業の採用に関連する就業体験に自主規制を設けます。今は大学3年(大学院は修士1年)の夏ごろ実施していますが、これを採用活動開始(採用に関連する就業体験・会社説明会)を同12月1日以降に改めます。
 大学生の就職活動が長期化している問題への対策の一つですね。

 採用に関連する就業体験は「インターンシップ」と呼ばれていました。しかし「インターンシップ」には採用とは関係のない一般的な就業体験の意味もあります。今後は学生の混乱を避けるため、採用に直結する就業体験についてはその他と区別し、「インターンシップ」の呼び名も使わない方が望ましいとしています。12月1日から実施は、採用に関連する就業体験のことを言います。

 トヨタ自動車の11年度採用(一般職を除く)は1300~1400人と10年度計画より増える見通しのようです。

 帝国データバンクは3日「2011年度の雇用動向に関する企業の意識調査」を発表しました。調査結果によると、11年度中に入社する正社員が「増加する」とした企業の割合は、前年調査と比べ5.2ポイント上昇の19.5%となりました。経営環境の改善を背景に、2年連続で拡大。一方で「採用予定なし」が約4割超と依然高い水準にあり、同社は「優秀な人材確保のチャンスであるものの業績は厳しく、採用に悩む企業の姿が示された」(産業調査部)としています。

 2011年度(2011年4月~2012年3月入社)の正社員(新卒・中途入社)の採用状況
 「増加する(見込み含む)」…1万990社中2,142社(19.5%)
  ※2010年度見込み(2010年2月調査)…14.3%

 業種別にみると、増加を見込むのは「農・林・水産」が26.8%で最高。「サービス」や「製造」が続いた。「不動産」は、採用を予定していない企業が54.2%と高水準で、業況の低迷が目立っています。

 一方、2011年度の非正社員(派遣社員、パート・アルバイトなど)の採用状況
 「増加する(見込み含む)」…1万990社中962社(8.8%)
 「採用予定はない」…同50.8%(5,579社)、3年連続で5割超
  ※非正社員の採用状況は依然として厳しい状況です。

 非正社員から正社員への切り替えをする企業が増えていますが、半数以上の企業は非正社員の採用を見送るという状況が続いています。