天燈茶房 TENDANCAFE

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いるということと、いないということ

2009-03-03 | 日記
写真:国立天文台大赤道儀室の65cm屈折望遠鏡(許可を得て撮影)

イナガキタルホの神戸トアロードの先に広がる小説に登場しそうな、或いはプラハの古城でルドルフ二世を伴ったティコが得意げに覗き込んでいそうな。
三鷹の国立天文台・天文台歴史館(大赤道儀室)に眠るカール・ツァイス製屈折望遠鏡です。
製造から80年以上経った今日も機能を喪失していませんが、
いかんせん職人級の操作手腕が必要で(初心者だと「一晩中悪戦苦闘しても、金星や木星を視野に捉えることすら出来ないでしょうね」とのこと。天文台の若き天文学者さん談。恐るべし…)、
今となってはこの魅惑的な筒を自在にぶん廻せる職人が皆さん引退されてしまい、
そのまま望遠鏡も夜空を見上げるのをやめてしまった、とのこと。

そんな訳でこの65cm屈折望遠鏡は、現在となってはその鏡筒に彼方の星の光を宿すことはもうありません。
でも、今この瞬間も、星達から飛び出した光は地球目指し遥かな旅を続けています。
望遠鏡の中に星がいなくなっても、星の光は確かに今も飛び続けているのですね。

でも、その星の光が望遠鏡や僕の眼のなかに飛び込んで旅を終える頃には、星そのものは既に燃え尽き死んでいる…そんなこともあるでしょう。
星の光は確かに届くのに、夜空には確かに星が見えるのに、でもその星は、実はもういない…そんな星もきっと沢山、夜空に輝いているのでしょうね。

職場の方が昨日、亡くなられました。
僕はその人とは時々休憩所で会って雑談をする程度の付き合いだったんですが、
それでもそんな付き合いを入社以来10年も続けてきました。
先週、旅行のお土産の海外製ラーメンを「家族が喜んでたよ」と言ってくれたのが最後の会話になりました。

ご冥福をお祈りします。

人間も、星の光みたいなものなんだな…そんなことを、ちょっと想いました。


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