徒然なるままに

日常を取り留めなく書きます

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ミツヤ君とヨウコさんシリーズについて

2009-07-13 23:16:53 | 空想
とりあえず、今日でブログに書くのは終わりにします。
この後、衝撃のラストが!
なんてね。
そのうちどこかでまとめます。
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つかの間の休息 2

2009-07-13 23:11:42 | 空想
 大広間は座敷で五十名くらい収容できるスペースがあった。朝食はバイキング形式で入り口に朝食バイキング千円と書かれた立て札があった。
 奥の方に長いテーブルが二列あり、盛りだくさんの料理が並べられている。クワタ刑事はテーブルの方に向かい、ロッカーキーを手首から外し、側に立っている係員のおばさんに渡した。ロッカーキーにはバーコードがつけられており、おばさんは手に持った機械でバーコードを読み取った。
 健康ランドに入る時、クワタ刑事が、ロッカーキーで清算すると言っていたのは、このことだったのか。おそらく館内の買い物や食事は、ロッカーキーのバーコードを読み取ることによって集計され、帰りに清算されるのだ。
 これなら、お金を持ち歩く必要がない。合理的だと思った。
 私もおばさんにロッカーキーを渡し、バーコードを読み取ってもらい、盆と皿を取った。
 料理は豪華というか、種類が多かった。
 レタス、タマネギ、トマトなどの生野菜。ポテトサラダ。卵焼き、焼き魚、ウインナー、唐揚げ、野菜炒め、納豆、生卵、いろいろな惣菜、果物―など、実に種類が豊富で、私の皿はあっという間に料理で山盛りになってしまった。
 さらにご飯、味噌汁を取ると、私の盆は皿が置けなくなるくらいになった。
 クワタ刑事は大広間の真ん中あたりのテーブルに座っていた。私は料理を落とさないよう、ゆっくりと歩いて、クワタ刑事の正面の席に座った。
 クワタ刑事の盆の上には、サラダと小皿に料理が数種類あり、ご飯もほんの少しだけだった。
 クワタ刑事が私の持ってきた料理を見て、微かに微笑んでいる。私は少し恥ずかしかった。
 「わたし、バイキングだと、つい食べ過ぎちゃうのよね」
 クワタ刑事は小さな声でそう言った。
 「ちょっと取りすぎたかな」
 私が苦笑いしていると、クワタ刑事が言う。
 「食べられる時に、思いっきり食べるってのはいいと思うよ」
 私はクワタ刑事の言葉の意味がよく分からなかった。刑事は食事をとる暇もないほど、忙しいのだろうか。
 とにかく、私は、たっぷりと、腹いっぱい食べた。食事の後は、クワタ刑事に教えられて、仮眠室のリクライニングチェアーで横になった。しばらくうとうとしていたが、昨日からの疲れもあり、やがて私は深い眠りについた。
 ◇◇◇◇
 私はおそらく相当深い眠りの中にいたのだろう。夢はほとんど見なかった。
 突然、私の目の前に、薄暗い仮眠室の天井が浮かび上がった。そして、右側から人の声がする。
 ―ってますよ。
 はあ?。
 ―鳴ってますよ。
 えぇ?
 ―だから、携帯が鳴ってるって。
 ようやく、私は、リクライニングチェアーの脇に置いた自分の携帯が鳴っているのに気づいた。右隣の男の不機嫌な表情が見えた。
 「すみません」
 私は慌てて、リクライニングチェアーから飛び起きて、携帯を持って、仮眠室を出た。
 どれくらい眠っていただろうか?
 私の最後の記憶は大広間で朝食をとっていた時のものだった。携帯の液晶画面を見ると、電話番号が表示されていた。私の携帯には登録されていない番号だ。
 もしもし―。
 ああ、すみません、ミツヤさんですか?わたし富士吉田のスズキ病院のミヤハラというものですけど―。
 女性の声だった。慌てている。
 あの―、その―、トモミさんが、トモミさんが、いなくなりました―。
 もしもし、ミツヤさん、聞いていますか?
 トモミさんが、どこかへ消えてしまいました―。
 女性の声は繰り返す。私は硬直してしまって、言葉を発することができなかった。
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つかの間の休息 1

2009-07-13 00:43:02 | 空想
 私は、病院の看護師に、しばらく外に出ることを告げて、トモミさんに何かあった場合や精密検査の結果が分かった場合に、携帯に電話をしてもらうように頼んだ。
 外に出るとまだ日は昇っていないが、辺りは完全に明るく、ヘッドワイトを点灯する必要はなさそうだ。カーナビで富士吉田から、石和の健康ランドを検索すると、到着予定時刻は午前六時頃だった。およそ一時間弱の行程になる。
 「クワタさん、その健康ランドっていうのは、こんなに朝早くから行っても入れるものなのでしょうか?」
 私はこれまで、健康ランドという施設を利用したことがなかった。先ほどクワタ刑事から、ちょっと豪華な銭湯みたいなもので、食事や仮眠が取れる施設だということを聞いた。
 「大丈夫、たぶん二十四時間営業だから、いつ行っても、入場できるはず」
 クワタ刑事は何故かうきうきしているようだった。
 「クワタさんは、そういう所によく行くんですか?」
 彼女の風貌からは、とても想像できない。銭湯なんて、もっと年とった老人が好んでいくように思えた。
 「最近の健康ランドっていうのは、ただお風呂があるわけじゃないのよ。マッサージやエステ、ネイルアートのお店、後、そうそう岩盤浴なんていうのもあるの。
  わたしは岩盤浴に結構はまってて、よく行くのよ」
 クワタ刑事は目を輝かせながら言った。私はトモミさんのことが頭から離れなくて、クワタ刑事のように明るくなれない。
 「でも、まだ時間が早いから、岩盤浴は入れないかな?」
 クワタ刑事はまるで旅行にでも行くようにはしゃいでいる。
 富士吉田から中央高速に乗って、一宮御坂インターで降り、国道二十号を少し走ったら、もう石和の町に着いた。目的の健康ランドは石和温泉街から少し離れたところにあった。
 健康ランドに着くころには、東の空から太陽が顔を出していた。今日は雲ひとつなく、いい天気になりそうだった。
 私達は石和健康ランドの広い駐車場に車を止めた。平日の朝早い時間帯のためか、駐車場はがらがらに空いていた。
 クワタ刑事が先に歩き、健康ランドの建物に入った。思ったより大きな建物だった。ホテルも併設しているようだ。
 クワタ刑事は慣れた足取りで玄関に入り、ブーツを脱ぎ、靴ロッカーに行く。私もそれを見て、同じように行動する。クワタ刑事は館内に入るとフロントに向かう。私が迷っていると、クワタ刑事が私の方を見ながら、手を振っていた。
 フロントで入場料を支払った。フロントでは腕に巻くタイプのロッカーキーらしきものを渡された。クワタ刑事は館内施設が書かれたボードを見ている。
 「クワタさん、これからどうすればいいのでしょうか」
 私は初めてなので勝手が分からない。
 「えーと、男湯はあっちね。タオルとかはお風呂場に用意してあるから。まず、お風呂で一汗流しましょう」
 クワタ刑事が指差す方に男湯と書かれた暖簾が見えた。私が男湯の方に歩いていこうとすると、クワタ刑事が言った。
 「ミツヤさん、ロッカーキーは必ず身に着けていて。館内の清算はすべてロッカーキーだから」
 私は最初クワタ刑事の言っている言葉の意味がよく分からなかった。清算をロッカーキーでする?しかし、その時はあまり気にすることもなく、ただ頷いて男湯に向かった。クワタ刑事は女湯の暖簾をくぐって入っていった。
 男湯に入って、自分のロッカーキーの番号と同じロッカーを探す。ロッカーは無数にあり、探すのに少し時間がかかった。
 ロッカーの前で、私はワイシャツとTシャツを脱いだ。昨日から着ていて、少し汗臭かった。風呂に入って、さっぱりするのも悪くはないと思った。
 浴室の扉を開けて中に入ると、そこは、私が想像したより、遥かに大きな空間があった。なんと小さいがプールまである。それに数え切れないほど多くのお風呂が所狭しとならんでいる。私はちょっとした感動を覚えた。こんな施設があったのか。
 私は、まず体を洗い、その後、子供に戻ったように、わくわくしながら、その多くのお風呂に浸かった。昨日からの蓄積された疲れが、体から放出されていく心地よさを感じた。
 特に朝日を浴びながら入る露天風呂は気持ちがよかった。私は広い岩風呂に浸かりながら、空を見てみた。青い空がどこまでも続いていて、私の悩みを解放してくれる。ああ、これが温泉で癒されるということなのだろうか。
 三十分以上、温泉に浸かっていたと思う。体がぽかぽかと芯から温まっている。まだ気温は高くなく、時折涼しい風が私の体を撫でる。私は、露天風呂に置いてあるデッキチェアに横になって、しばらくまどろんでいた。
 私が浴室から出たのは、午前七時を過ぎたころだった。ロッカーで、浴室の入り口で渡された青い館内着に着替え、男湯の暖簾をくぐって外に出る。あまりの気持ちよさにクワタ刑事のことを忘れていた。
 私はクワタ刑事を探そうと、受付をしたフロントの方へ向かって歩いていく。すると不意に後ろから肩を叩かれた。振り向くとクワタ刑事がピンクの館内着を着て立っていた。
 「ちょうど、わたしも出たところ。ああ、さっぱりした。朝風呂は最高ね」
 そう言って、彼女は私の方を見て笑った。シャンプーの匂いだろうか。何ともいえない素敵な匂いが、彼女の洗い立ての髪から、私の方に流れてきた。少し化粧を落としたクワタ刑事の顔は、まるで少女のようだった。
 「ミツヤさん、腹減ってない?大広間で朝飯が食べられるみたい」
 クワタ刑事はそう言って、大広間に向かって歩き出した。私はすっかり忘れていたが、昨日はほとんど何も食べていない。それを思い出すと、急に食欲がやってきた。私はクワタ刑事の後に続いて大広間を目指した。
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サンタの冒険 6

2009-07-12 08:26:34 | 空想
 まず、小柄な老人が、ゆっくりとした足取りで部屋に入ってきた。黒スーツの大男の頭はつるつるに剃りあげられていた。その大男も老人に続いて部屋に入ってきた。私は二人の雰囲気に圧倒され、口を開けたまま、呆然としていた。
 サンタは表情も変えずに二人を見て言った。
 「よくここが分かったね」
 小柄な老人が答える。
 「今日で四日目ですよ。そろそろ帰りましょう」
 老人の言葉は丁寧だったが、その声は低く、妙な迫力があった。
 「そうだな、うん、そろそろ、帰ろうかと思っていたところだ」
 サンタはそう言って、立ち上がった。
 私はサンタに小声で聞いた。
 「サンタ君、この人達は―?」
 「俺の保護者だよ、ミツヤさん。俺、何も言わないで出てきたから心配になって迎えに来たんだ」
 そういえば、サンタは十五歳の少年だ。本来は学校に行っていなければならない。私はトモミさんのことで頭がいっぱいになっていて、サンタのことをすっかり忘れていた。
 「さあ、帰りますよ。もうこんな事は程々にしてくださいね」
 老人が言う。言葉は相変わらず丁寧だ。まるで大金持ちの家にいる執事のように見えた。
 「ミツヤさん、そういうことで―。俺も帰ります。続きはまた話しましょう」
 老人は私の方を見て、小さくお辞儀をした。私も慌てて立ち上がり、お辞儀を返す。
 「すみません。私が気がつかなくて―。その―、あの―、連絡もせずにサンタ君を引き止めてしまって―」
 私が狼狽しながらそう言うと、老人は顔の前で手を振りながら言った。
 「いや、あなたは関係ない。この子が自分の意思でしたことです」
 老人はそれだけ言って、くるりと体の向きを変え、部屋の入り口に向かって歩き出した。サンタは私の顔を見て、軽く右手を振って、老人の後に続いた。
 スキンヘッドの大男は一言も話さずに、サンタの後に続いて、部屋を出て行った。
 大男が部屋の扉を乱暴に閉めると、その音で隣に寝ていたクワタ刑事が顔を起こした。
 「うーん、何なのよ。うるさいわね」
 クワタ刑事は顔にかかった髪を手で振り払いながら、私の方を見ていた。
 「いや―、サンタ君の保護者が来て、彼を連れて帰ったよ」
 クワタ刑事は目をこすりながら言う。
 「あら、そうなの。そういえば、あの子まだ中学生だったよね。すっかり忘れてたけど」
 「家に何も言わないで、出てきたらしい。ぼくもうっかりしていた。サンタの心配もするべきだった」
 クワタ刑事はそれを聞くと、笑いながら言った。
 「あの子の心配はいらないと思うけど―。保護者って両親が来たの?」
 「いや、何か怪しげな二人組みの男だった。こう言うと何だけど、ちょっと堅気には見えないような―」
 突然、クワタ刑事は大きなあくびをした。彼女はわりと整った顔をしている。その顔が突然大あくびをしたため、私は目のやり場に困ってしまった。
 ふーん、あの子、何か不思議よねぇ、と言いながら、彼女は大きく伸びをした。
 「それにしても、ミツヤさん、これからどうするの?朝になったら、この部屋、病院が使うんじゃない?」
 私はここに残ると言ったものの、どこにいるべきか、そんなことは考えていなかった。
 「廊下の椅子にでも、座っているよ」
 私は半ばやけになって、言う。
 「わたし、疲れた。ミツヤさんも疲れたでしょ。トモミさんの検査は時間がかかると思う。それまで少しでも横になって眠りたい」
 確かにトモミさんの検査の結果がすぐに出るとは思えなかった。おそらく相当精密な検査をするのだろう。もしかすると今日中に結果が分からないかもしれない。
 クワタ刑事は、目を閉じて、何か考えているようだった。
 「こんな時間からホテルには入れないし―。あっ、ラブホなら入れるか。でもそれはちょっとまずいな」
 とんでもないことを言う。私はドキッとしてしまった。私が何か言おうとすると、クワタ刑事が先に言った。
 「そうだ、ミツヤさん、健康ランドにでも行きましょう。あそこなら、お風呂も入れるし、休憩もできる。うん、そうしましょう。石和の方にいいところがあるの」
 クワタ刑事は新しい玩具を買ってもらった子供のような無邪気な顔をしていた。
 
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サンタの冒険 5

2009-07-11 19:58:08 | 空想
 ブログが最初に書かれたのは、五月六日、ゴールデンウィークの終わりの日だ。
 わたしが生きていくだけで、多くの人を傷つけている――。
 最初からそうなのだが、トモミさんのブログは、すべてにわたって、自虐的だ。
 『彼』との関係が知られることを何故か恐れている。『あの子』に知られてしまうことを恐れている。何故だろう?
 許されない恋?不倫か―、そんな言葉が頭に浮かんだ。
 『あの子』はトモミさんに彼と別れるように言っている。『あの子』がヨウコさんだと仮定する。トモミさんは言っている。ヨウコさんにとって、『彼』は、トモミさんと『彼』との関係より、特別だと。
 分からない―。
 私は、まったく分からない。このブログから読み取れるのは、トモミさんとヨウコさんと『彼』の三角関係―?
 私には、ヨウコさんに、私以外の、特別な関係を持つ異性がいたとは、到底思えなかった。
 ヨウコさんの死のことは、あの子が死にました、という簡潔な文だけで綴られている。
 私には分からない。ヨウコさんとトモミさんにいったい何があったのだろう。そして、『彼』の存在が、私の心に不安を与える。その不安はまるで、静かな水面に落ちた小石が作りだす波紋のように、ゆっくりと、しかし、確実に、私の心に広がっていく。
 私がトモミさんのブログを読み直している間、サンタはまた窓から外を見ていた。クワタ刑事は机の上に頭を伏せて寝ていた。
 ふと窓の外を見ると、白々と夜が明けてきていた。時刻は午前四時を過ぎたところだった。
 「サンタ君、君はトモミさんのブログを見て、何を思った?」
 ぼうっと窓の外を見ていたサンタは、突然の私の言葉に驚いて、急に我にかえったようだった。サンタはゆっくりと私の座っている部屋の入り口の方に近づいてきた。
 「俺も、今、それを考えていたんだ」
 サンタはそう言って、私の隣のパイプ椅子に座った。
 「トモミさんの『彼』っていうのは、ヨウコさんにとっても、特別な存在だった―」
 私は、つぶやくように言った。
 「まず、このブログは本当にトモミさんが書いたものなのか?
  俺はそれを確かめたい気持ちもあった。だから、樹海へ行った。樹海でトモミさんを見つけて、それは確実になった」
 「君は、そんな疑いを持ちながら危険な樹海へ入ったのか!」
 私はあきれた顔をしていた。しかし、よく考えてみれば、そうなのだ。このブログをトモミさんが書いたということは内容からの推測に過ぎない。
 「そうだな、このブログがまったくのデタラメかもしれない可能性もあったわけだ」
 「でも、実際に樹海でトモミさんを見つけた。だから俺はこのブログはデタラメではなく、トモミさんが書いたもの、それも空想や妄想なんかではなく、事実を書いているのだと思う」
 サンタは、自信を持って、そう言い切った。
 「それじゃあ、君は、トモミさんが書いている『彼』は誰だか見当がついているのか?」
 私はサンタの自信に満ちた顔を見て、思い切って聞いてみた。
 「いや、それは―、まだ分からない。でも『あの子』ってのは、ヨウコさんのことだよ」
 そう、それは間違えない。そんなことは私にも分かる。
 「それは、ぼくにも分かるよ。君は今、まだ分からないって言ったよね。いつ分かるの?」
 私は、馬鹿にされたような気がして、思わず、サンタの言葉尻を捉えて、不愉快な質問をしてしまった。
 しかし、サンタは私の質問を不愉快には感じていなかった。
 「だって、トモミさんがいるじゃん。彼女に聞けば分かる」
 それは、そうだが―。それはそうだが、彼女の心は閉ざされているではないか。だから、だから、私は考えているのだ。
 もし、トモミさんが、一生このままだったら―。
 私はそう言おうとしたが、声にならなかった。サンタは私の顔を見ている。それはサンタも分かっているようだった。
 その時、突然会議室の扉が乱暴に開けられた。
 扉の外には、百八十センチはあろうかという黒いスーツを着て、黒いサングラスをした大男と、やはり黒いスーツを着た小柄な白髪の老人が立っていた。老人の目はサンタの方に向けられていた。
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サンタの冒険 4

2009-07-10 16:38:51 | 空想
 私達は二階の会議室のような部屋にとぼとぼと入った。部屋は真っ暗だった。クワタ刑事が入り口の近くのスイッチを見つけて、明かりをつけた。
 部屋の机はこの字型に並べられていた。私が入り口の近くの席に座り、その周りにサンタとクワタ刑事も無言で腰をおろした。
 私は深いため息をついて、机の上に肘を乗せ、頭を抱えた。しばらく沈黙が流れた。
 「リハビリをすれば、回復することもあるんだ」
 サンタがポツリと言った。
 「高次脳機能障害が軽度であれば、回復することもあるだろうけど―」
 クワタ刑事が、その後の言葉を飲み込んだ。
 「まだ、詳細な検査結果が出ていない。だから、ミツヤさん、そんなに悲観することはないと思う」
 サンタは明るい声で言った。しかし、私の心は落ち込んだままだった。
 トモミさんは両親がいない。親戚もあまりいないらしい。天涯孤独ってことなのだろうか?
 病院に親族の人は誰も来ていない。私はトモミさんが孤独で、可哀想に思えて、また涙が出てきた。
 その時、会議室の扉が開いて、ハヤシ課長と、トモミさんの職場の先輩のコマツという男が、部屋に入ってきた。ハヤシ課長は先ほどより、顔色は若干よくなったが、表情は暗く、重苦しかった。
 「ミツヤ君、我々はいったん会社に戻ることにするよ、君はどうする」
 ハヤシ課長は疲れきった声で言った。
 「トモミさんの容態が心配なので、もうしばらく残ろうかと思います」
 「そうか、私もこちらにいたいのだが、今日の午後、重要な会議があってね。詳細が分かったら病院から連絡をもらうことにした」
 「我々がいても、どうしようもない。トモミさんのために何もできないのだから―」
 コマツがハヤシ課長の言葉に、そう付け加えた。何だか私は帰れと言われたみたいで、気分が悪かった。
 「それは、そうですけど―。ぼくはせめてトモミさんの精密検査の結果が出るまで、ここにいようと思います」
 そうかー、ハヤシ課長は、力なく言った。私はハヤシ課長に聞こうと思っていたことを思い出した。
 「トモミさんの親戚の人には連絡がとれないのですか?」
 部屋から出ようとしていたハヤシ課長が振り返った。
 「ああ、トモミさんの叔母さんにあたる人が静岡市に住んでいる。昨日から何回か電話したけど、つながらない。連絡がとれないんだ」
 トモミさんには叔母がいたのか。私はハヤシ課長に連絡先を聞いた。
 「私からも連絡してみます。連絡先を教えてください」
 ハヤシ課長は手帳を1ページ破って、トモミさんの叔母さんの連絡先を書いてくれた。
 「じゃあ、とりあえず、我々は帰る。みなさん、ありがとう」
 そう言って、ハヤシ課長とコマツは部屋から出て行った。
 私はハヤシ課長からもらった手帳の切れ端を見た。
 そこには住所と電話番号が書いてあった。トモミさんの叔母さんはフジタさんという名前だった。
 時刻は午前三時をまわった。
 「あのハヤシっていう人、これから帰って、すぐに会社に行くのかしら?」
 クワタ刑事が不思議そうな顔をしていた。
 「まあ、おそらく、名古屋に着くのが午前中だから、すぐに会社に行くと思いますよ」
 「休めばいいのに―」
 クワタ刑事は簡単に言う。
 「管理職にもなると、そうそう休めませんよ。警察でも―」
 私は思わず、警察でもそうでしょう―と言いかけてしまい、慌てて口を閉じた。
 しかし、クワタ刑事は、私の言葉には気づいていないようで、大変だよねぇ、そこまでして仕事するかなぁなどと言っていた。
 サンタは部屋の窓から、外を見ていて、私の言葉は聞いていなかったようだ。
 私はトモミさんのブログを読み返そうとして、携帯を取り出した。
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サンタの冒険 3

2009-07-08 21:26:50 | 空想
 私とクワタ刑事はハヤシ課長に続いて、二階の集中治療室に向かった。サンタもその後に続いてきた。
 集中治療室の前の前まで行ったが、まだ私達は中に入ることができなかった。ガラス越しに部屋の中を見ると、先ほど私達にトモミさんの容態を説明した中年の医師と看護士が、トモミさんのベッドの脇にいた。
 トモミさんは上体を起こしていて、中年の医師が何かトモミさんに問いかけている。しかし、トモミさんの目は虚ろで、視線は中空にあった。トモミさんの体には、まだ、いろんなチューブが取り付けられていた。
 ハヤシ課長が青ざめた顔をして、私の方を見ながら言った。
 「意識は戻ったけど、会話ができないらしい―」
 見ていると、中年の医師は必死にトモミさんに何か話しているが、トモミさんはまったく反応しない。その顔に表情はない。
 「まだ、目覚めたばかりで、記憶が戻らないのかしら?」
 クワタ刑事がつぶやくように言った。
 私は、中年の医師が言った言葉を思い出していた。
 ――トモミさんの場合は発見が意識を失ってから五分を超えており、おそらく後遺症が残るでしょう。
 ――例えば、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害。
 私の頭の中で、その言葉が、冷たく静かに再生された。
 やはり、後遺症が残ったのだろうか?
 サンタは冷静にトモミさんの状態を見ていたが、何も言わなかった。
 しばらくすると、中年の医師がトモミさんのベッドから離れて、集中治療室から出てきた。トモミさんの目は相変わらず虚ろで、その体は硬直していて、まったく動かない。
 「まだ、よくわかりませんが、彼女には何らかの後遺症が残っています。おそらく、記憶障害。彼女は自分が何をしたか、まったく覚えていないでしょう」
 中年の医師は、深刻な顔をして、そう言った。
 「トモミさんは、何かしゃべったのですか?」
 私は医師に聞いてみた。
 「彼女は何も話していない。おそらく脳に障害が残っています。これから詳しく調べてみます」
 「彼女と話をしてもいいですか?」
 私は聞いてみた。中年の医師はしばらく黙って考えていた。
 「短い時間でしたら、いいでしょう。あなた方が何か話したら彼女は反応するかもしれない」
 医師は無表情でそう言った。
 それで、私達は集中治療室に入ることを許されて、トモミさんのベッドに向かった。
 あらためて近くで見ると、トモミさんの体にからいろんな管がでていて、顔も死人のように青ざめていて、とても痛々しかった。
 私達がベッドに近づいても、トモミさんは中空を見つめたまま、無表情だった。
 「トモミさん―」
 私が話しかける。
 しかし、彼女は反応しない。
 私は、彼女の視線の中に入って、もう一度、話しかける。
 「トモミさん―、大丈夫ですか?」
 思えば、間抜けな問いかけだった。大丈夫なわけがない。
 私達の姿は、トモミさんには見えていない。私の問いかけにも、サンタの問いかけにも彼女はまったく反応しなかった。
 私がさらに彼女に問いかけようとした時、中年の医師が、手をあげて、私を制し、首を横にふった。
 「これ以上は無理です。これから精密検査を行いますので―」
 その言葉とともに、私達は集中治療室から追い出される形となった。
 私の心の奥の方から、悲しみがやってきた。涙が溢れる。トモミさんの姿は霞んで見えなくなった。
 トモミさん、戻ってきてくれ―。
 私は、心の中でそう叫んだが、トモミさんの心はどこか遠いところにあるようだった。
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サンタの冒険 2

2009-07-06 23:19:20 | 空想
 サンタはそこまで話すと、はあと大きく息を吐いた。病院の廊下は暗く、私達の他には誰もいなかった。深夜の病院は静まり返っていた。
 それにしても、このサンタの行動力はどうだろう。自分とはほとんど無関係の人の命を救うため、ひとり、夜の樹海へ入る。私が、もしトモミさんのブログを読んだら、同じことができただろうか?
 私はサンタに感動していた。この十五歳になったばかりの少年の勇気に、素直に感動していた。
 自分が十五歳のころはどうだっただろう。中学三年生だ。人の生死なんてほとんど考えていなかった。毎日、毎日、ただ、高校へ入学するために勉強をしていた。
 高校に入るため――。そう、いい高校に入って、いい大学に入って、優良企業に就職する。それが、自分の生きる道だと思っていた。
 サンタは以前、私に言った。
 ――サラリーマンは仕事じゃないよ。
 そう、私は自分のやりたいことも知らずに、ただ、決められた、誰かが勝手に決めた、レールの上をあてもなく走っていたのだ。
 そして、今もそれは変わらない。ただ何となく会社に行って、仕事をして、わずかな贅沢ができるくらいの給料をもらって、ただ生きている。
 サンタはおそらく、そんなレールの上は走っていない。誰かが決めたレール、そのレールはサンタには見えていないのだ。
 だから――、だから、こんなことができる。そしてそれが奇跡を呼んだ。私は自分の生き方が間違っていたように思えて、なんだかやるせない気持ちになった。私の人生はドラマティックな奇跡とは無縁なのだろう。
 「サンタ、あんた、すごいね」
 クワタ刑事が、薄暗い蛍光灯の光で照らされたリノリウムの床を見つめながら言った。その横顔からサンタを見下すような表情は消えていた。
 サンタはクワタ刑事の顔を見ながら言った。
 「すごいって?」
 「だって、自分の安全を放棄している。私だったら、夜、樹海に入るなんてしない。まず、警察に届ける。
  でも、それじゃ、遅いのよね。警察がブログだけで捜索するとは思えないし、警察を説得しているうちにトモミさんの命はなくなったかもしれない。
  あんたの行動は無謀だったかもしれないけど、結果的にはよかった。それが―、それが、頭の固い大人にはできないのよね」
 クワタ刑事も私と同じことを考えていたようだ。
 サンタはゆっくりと立ち上がって、こう言った。
 「俺は自分の安全を放棄しているつもりはないよ。樹海についても、あらかじめいろいろ調べて、地形を把握してから入った。最低限の準備はしていたんだ。でもそれは、ほとんど役に立たなかったけど―」
 サンタが言い終わると、階段を降りてくる足音が聞こえた。
 ハヤシ課長だった。ハヤシ課長は私達を見つけると、バタバタと近づいてきて、大声で言った。
 「ミ、ミツヤ君、トモミさんが―。トモミさんが目を覚ました!」
 
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サンタの冒険 1

2009-07-05 22:08:45 | 空想
 階段を降りて、一階の受付の方に向かうとサンタが長椅子に座って、PDAの端末を操作していた。私達の足音に気づくと、ゆっくりと顔をあげた。
 「やあ、ミツヤさん」
 サンタはにっこりと微笑んで、そう言った。
 「サンタ君、教えてくれ。君は何故トモミさんのブログが分かったんだ?」
 サンタが何か言おうとしていると、クワタ刑事が横から口をはさんだ。
 「って言うか、あんた本当に十五歳?」
 サンタはクワタ刑事の方を一瞥すると、PDAを閉じて、険しい顔をして言った。
 「ミツヤさん、さっきから、この人、俺につっかかってくるんだけど、いったい何者?」
 だから、トモミさんの友達なんだよ―、私がそう言っているうちに、クワタ刑事が早口になってまくしたてた。
 「あんたね、十五ってことは、何年生まれ?干支は?星座は?出身地は?」
 サンタは目をパチパチさせながら答える。
 「一九九三年生まれ。酉だったかな。星座は忘れた」
 クワタ刑事は一瞬黙った。頭の中で年齢を計算しているようだった。
 「ああ、生まれたのは東京かな。三年前から名古屋に住んでいるけど」
 「あんた、ハーフ?」
 「ハーフって何?」
 「お父さんか、お母さんが外国人なの?」
 クワタ刑事が厳しい口調で聞いた。サンタは何故か黙っている。
 「何、黙ってるのよ」
 さらにクワタ刑事が聞く。サンタは悲しそうな目をしていた。両親のことには触れられたくないのかもしれない。
 「俺、親のことは言いたくない。何故、あんたに言う必要がある?」
 クワタ刑事はサンタの悲しそうな顔を見て、はっと、短く息を吐いた。
 「まあ、言いたくなければ、いいのよ」
 彼女はそう言うと、サンタの横にどすんと、乱暴に腰をおろした。私もクワタ刑事の横に座った。
 「ああ、今日は最悪だ。警察からは執拗に尋問されるし、変なお姉さんからも、いろいろ聞かれる。ミツヤさん、俺、疲れたよ」
 サンタは大きく伸びをしながらそう言った。
 「まあ、疲れたのはわかる。君はこの二日間、大変だった。でも君のおかげでトモミさんの命が救われた。サンタ君、ぼくには分からないんだよ。君のこの二日間の行動を教えてくれないか?」
 私はサンタの目を見ながら、優しい口調で言った。サンタは大きくため息をつくと、話し出した。今度はクワタ刑事も口をはさむことはなかった。
 「えーと、もう一二時を過ぎたから、四日前になるかな。俺は掲示板のあるサイトのサーバのログを見直していたんだ。掲示板はプロキシ経由で書かれているけど、そのプロキシサーバのアドレスや、アクセスしてきたクライアントのブラウザ、OSなんかをいろいろ調べていた。そうしたら、リファラに値が入っているアクセスがあることに気づいた」
 「リファラって?」
 私がサンタに聞くと、クワタ刑事が言った。
 「リファラってのは、あるサイトにアクセスした時に、その訪問者がどこから来たのかってのが書かれているサーバのログ」
 「そう、訪問者が残した足跡だ」
 サンタがクワタ刑事の目を見ながら言う。
 「そのリファラにトモミさんのブログのURLが残っていたの?」
 「うん、アクセスログは膨大だけど、二つか、三つ、トモミさんのブログのURLがあった」
 クワタ刑事はサンタの方を向いて言った。
 「でも、それ、おかしくない?リファラに残るのはリンクを辿ってきた場合だけ。ブラウザのお気に入りやブックマークにページを登録していた場合は残らないはずよ。トモミさんのブログから例の掲示板へのリンクはなかった」
 「それはそうだけど、リファラに残っていたんだ。これは事実。おそらくトモミさんは一時期、ブログから掲示板へのリンクを張っていたのだろう。そのリンクをクリックして、掲示板にアクセスした。でも何故かブログからリンクは消した」
 クワタ刑事は納得できないようで、首を傾げていた。
 「そう考えるしかない。とにかく俺は四日前、トモミさんのブログを見て、これは、トモミさんは死ぬつもりだと思った」
 「それで、樹海へ行ったわけ?」
 「そう、トモミさんは樹海に行くに違いないと思った。俺はそれでまず富岳風穴の遊歩道から樹海の内部に入っていったんだ。このルートは完全自殺マニュアルにも書いてある」
 「それはいつのこと?」
 「えーと、昨日の夜、いや一昨日の夜か」
 クワタ刑事がサンタの顔を見て、驚いていた。
 「あんた、夜、樹海に入ったの?」
 サンタはきょとんとしていた。
 「どうせ、昼でも樹海に入ったら、方角なんてわからないんだ。どこを見ても同じような景色がただ続くだけ」
 サンタはなんでもないように言ったが、夜の樹海は私にはとても恐ろしいところに感じた。ただ道に迷うだけではない。毎年何人もの自殺者の遺体が発見されている場所なのだ。
 「結構、歩き回った。ようやくあたりが明るくなった頃、横に生えた木にロープを結び、首を吊っているトモミさんを見つけた」
 私は、ごくりと唾を飲み込んだ。クワタ刑事も真剣な目をしていた。
 「木は横に生えていて、ロープを結んだ枝も、そんなに高くないんだ。地面は傾斜していて、トモミさんは仰向けに寝ているような感じだった。ただし、首はロープで吊っていたので、顔は俺の方を向いていたけど」
 サンタの話は続く。
 「俺は、慌てて、ロープを外して、トモミさんの心音を確認した。微かだけど鼓動があった。脈も取った。確かに血液は流れていた。それで、俺はトモミさんをおぶって、遊歩道に出た」
 「あんた、よく迷わなかったね」
 クワタ刑事が感心している。
 「声が聞こえたような気がした―、いやそれは幻聴か。とにかく奇跡的に迷うことなく、遊歩道に出ることができて、携帯で警察に連絡した」
 
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トモミさんのブログ

2009-07-05 11:49:53 | 空想
「えーと、ああ、これだ」
 シバタは、手帳の切れ端に書かれたURLを私に渡した。私はそれを受け取り、慌てて自分の携帯にURLを入力する。
 http://ameblo.jp/mituya-tomomi/
 『tomo blog』というページが表示された。まず樹海という文字が見えた。日付は六月三十日。私はトモミさんのブログを過去にさかのぼって、夢中になって読んだ。
 クワタ刑事もめんどくさそうに手帳に書かれたURLを自分の携帯に入力している。
 ブログには約一ヶ月間のできごとが、抽象的に書かれていた。
 トモミさんには『彼』がいたこと。
 それは許されない関係らしい。
 それを『あの子』に知られてしまったこと。
 そして『あの子』が死んだこと。あの子が死んだ後、彼と連絡が取れなくなり、トモミさんは急速にうつ状態になって、死にたくなっている。
 「あの子っていうのは、ヨウコさんのことだね」
 クワタ刑事が携帯を見ながら、言った。
 私は何も言わなかったが、それは間違えないだろう。
 「彼ってのは誰?まさかミツヤさんじゃないよね?」
 私はクワタ刑事の言葉にすぐに反応した。
 「そんなわけないじゃないですか!何言ってるんですか」
 私は思わず強い口調になった。クワタ刑事は口を尖らせて、はいはい、すみませんと言った。
 「このブログに書かれている『彼』とヨウコさんの関係が、トモミさんの自殺と関連性があると思われます」
 シバタは表情を変えずにそう言った。
 私は、もしかしたら、トモミさんは、ヨウコさんのことを思って、後追い自殺をしたと考えていた。しかし、このブログを読む限り、ヨウコさんの死にはほとんど触れられていない。
 私は、胸が苦しくなっていくのを感じた。何かが、私の呼吸を邪魔する。冷や汗が背中をつたう。
 トモミさんは、あの子は彼にとって、特別な存在と書いている。あの子をヨウコさんとすると、ヨウコさんにとって、『彼』とはどんな存在なのだろうか?
 「それにしてもさあ、サンタ君は何故このブログの存在を知ったの?」
 クワタ刑事がシバタに聞く。シバタはクワタ刑事の口調に少し眉をひそめた。
 「サンタが入手したログに残っていたらしい。掲示板にアクセスする前に表示していたページがわかると彼は言っていた」
 「リファラのことかな?」
 クワタ刑事は腑に落ちない顔をしていた。
 トモミさんのブログの最後の記事は樹海に行くことを示唆している。サンタはそれを見て、樹海にやってきたのだろう。それにしても、よくトモミさんを見つけたものだ。
 「とりあえず、サンタという少年の話がほぼ事実だということがわかりました。我々はトモミさんが回復するのを待って、いろいろと話を聞きます」
 トモミさんは回復するのだろうか?なんらかの後遺症が残る可能性が高いと、あの医師は言っていた。
 「それでは、私は一旦署に戻ります。みなさんはどうします?明日までこの部屋に残ってもらっても結構ですが…」
 シバタはそう言って、部屋から出て行った。
 シバタが出て行くと、部屋には静寂が残った。私はしばらく呆然として何も言葉を発することができなかった。クワタ刑事はまだ携帯を見ていた。
 私の頭の中に様々な思いがめぐる。『彼』とはいったい誰なのか?それはヨウコさんにとって、どのような存在なのか?
 「ミツヤさん、とりあえず、あのサンタっていう怪しいやつから話を聞きましょうか?」
 クワタ刑事が携帯を閉じながら、そう言った。
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