風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

セールスマン大統領

2017-01-23 23:18:36 | 時事放談
 トランプ氏が第45代アメリカ合衆国大統領に就任した。週末、ニュース映像を見ていても、なお、半信半疑の感覚が抜け切らない。なかなか現実を受け止められないのは、私の潜在意識の中に、アメリカ大統領はスゴイ筈だという思い込みがあるせいか、それともトランプ政権の予測不可能性(unpredictability)に半ばおののいているせいか。
 演説原文にざっと目を通してみた。さすがに大統領の就任演説だけあって、いつもの得意の薄汚い罵り言葉は封印し、美辞麗句のお化粧を施しているものの、オバマ大統領の演説のような格調高さは残念ながら見られず、哲学や思想よりも(セールスマンらしい)現実主義に貫かれていたように思う。むしろ、トランプ氏は、演説を短くてインパクトがあるものにしたがっていたらしく、確かに韻を踏んだ短いフレーズが多用され、ニュース映像からも、なるほど期待通りの効果はそれなりにあったかも知れないと思いつつ、ちょっとくどくて食傷気味でもあった。冷泉彰彦氏は、「語彙は相変わらず小学生向け」ながら「少し頭を使わないといけない比喩などが入っていた」と手厳しく評されていて、この点、誰に向けて語りかけていたかを暗示する。そして私のような普通の日本人にも分かり易くて有り難いものではあった(が、理解できていない比喩があったかも知れない)。
 総じて、言いたいことは、Protection will lead to great prosperity and strength.であり、またWe will follow two simple rules: Buy American and Hire American.であって、保護主義と孤立主義まる出しという印象だ。この内、孤立主義は、中西輝政氏によると、実は悪い印象を与えるレッテル貼りの言い回しで、客観的には「対外不介入主義(non-interventionism)」と言い、初代ワシントン大統領以来のアメリカ民主主義の伝統であって、それを、国際連盟への加盟を支持する所謂“東部エスタブリッシュメント”が、彼らの「国際主義」に対するところの「孤立主義」と呼んで、反対派である伝統的なありようを攻撃したのが始まりという。確かに私たちは「世界の警察官」を任じる最近のアメリカに慣れ過ぎていたのかも知れず、既にオバマ前大統領も「世界の警察官」を降りることは表明していたから、目新しいこととは言えないのかも知れない。他方、保護主義の方は、自由貿易から最大の利益を得ているはずのアメリカにして、どうにも解せない。
 現状批判の繰り返しにはうんざりするが、一つだけ、Finally, we must think big and dream even bigger.と言ったあたりは前向きで、あるいはケネディ元大統領をどこかで意識していたのかも知れないと思わせる(が、トランプ氏の著書「でっかく考えて、でっかく儲けろ」(邦題)を想起させると評する人もいる)。
 そんな、ブログ・タイトルの通り“セールスマン”大統領と呼んだのは、全てを交渉や取引(deal)を基準に据える点と、飽くまで対面取引を意識している点、外交で言えば二国間取引を基本にしようとしているところを揶揄してのことである。もとより世の中の動きは二国間だけでは捉えきれないし、仮に取引(deal)として短期的に成果を出しても長期的に禍根を残せば元も子もないし、交渉ごとでは済まない主義や価値観のようなものが基軸にあるはず。まあ、そんなことはトランプ氏も百も承知だろうが、敢えて、かつて吉田茂元首相が外交はビジネスと同じで長期的な信頼が基本だというようなことを言われていたことに鑑み、それはさながら日本的経営の文脈での商人とも繋がるもので、私たち日本人には容易に理解できるが、どうもトランプ氏はここで言うビジネスマンや商人とは違う感覚の持ち主のようで、彼が口にする乱暴な施策(公約)もどきは取引(deal)の出発点のハッタリに過ぎなくてホンネは如何ほどのものか落としどころがまだよく見えないとの皮肉を込めて、選挙戦から相変わらずのセールスマンのセールストークだと総括してみた。
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