風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

風に吹かれて

2016-10-17 20:42:02 | 日々の生活
 ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞した。画期的なことだ。ボブ・ディランと言えば、私より一回り上の団塊の世代ならば語りたいことが山ほどあるだろう、しかし私にとっては伝説の人で、残念ながら語る資格がない。なにしろ「風に吹かれて」と言えば先にオフコースの歌詞がすらすらと口をついて出るような不埒な野郎だ。ガロの「学生街の喫茶店」で「学生で賑やかなこの店の 片隅で聴いていたボブ・ディラン」でその存在を初めて知った。学生時代を過ごした京都に「RINGO」という喫茶店があり、ビートルズ東京公演の未使用チケットが飾ってあったものだが、そのビートルズに影響を与えた方である。いずれも私にとっては二次利用(笑)。それでも、間接的に影響を受けた一人として、続ける。
 私が過去のブログ・タイトルに「ペナンの風」とか「シドニーの風」などと(そして今のブログでも)使っている「風」のモチーフは、ボブ・ディランのこの曲に由来するのではないかと秘かに思っている。これも実は間接的と言えなくもなくて、その間に、伊勢正三が「かぐや姫」を解散した頃に大久保一久と結成したバンド名「風」なども影響しているのだが、今日のところは余計な話は差し挟まない方がいい、かな。
 毎度しつこく前置きが長くなってしまった。
 公民権運動やベトナム戦争で揺れた1960年代のアメリカで、ボブ・ディランのフォーク・ソングはプロテスト・ソングと呼ばれ、若者の圧倒的な支持を得たのだが、当の本人は否定的な発言をしているようだ。「これはプロテスト・ソングとかじゃなくて…ただ誰かの為だと言って話していることについて、言いたいことを曲にしただけです。誰かのね」(Wikipedia)と。その肩の力が抜けたメッセージ性こそ、彼の本領であり、その後メジャーになり得た所以だと思う。
 ノーベル賞を受賞したことに関しては賛否両論あって、その論拠を見ていると、なかなか興味深い。以下、産経Webの記事から拾ってみると、中でも最も印象に残ったのが、「普通の小説家や詩人ではなく、“吟遊詩人”を選んだということで、文学の原点回帰ともいえる」(文芸評論家の川村湊さん)といったコメントだった。確かに文学などというジャンルが確立される遥か以前に、詩は人々とともにあり、古代ギリシアではホメロスに始まり、日本では万葉集に始まった。多少、難解なところもある彼の歌詞は、「古典文学や詩文が持つ知性」の息吹を音楽に吹き込んだと高く評価される。実際、彼が「ディラン」を名乗ったのは、「英ウェールズ出身の詩人ディラン・トーマスに傾倒したからだと言われ、好きな詩人としてなんと英国のT.S.エリオットの名前を挙げる」らしい。また、「アレン・ギンズバーグら米国の詩人たちと交友し、詩の伝統を吸収し、社会性の強い歌詞だけでなく、暗喩を散りばめ、楽曲を豊かな解釈が可能なものに発展させていった」と評価する人もいた。2008年には「卓越した詩の力による作詞がポピュラー・ミュージックと米国文化に大きな影響を与えた」として、ピュリツァー賞特別表彰を受賞している。そして今回のノーベル文学賞受賞理由は、「米国音楽の偉大な伝統の中に新たな詩的表現を創造した」というものだった。
 冒頭、画期的だと言ったのは、理由は上に挙げたようにいろいろあるとは言え、やはり、科学的な業績にせよ、こうした文学的(文化的?)な功績にせよ、評価がかたまるまで30年や40年の年月がかかるということを念頭に置いている。科学者が大学で研究を初めてからノーベル賞受賞まで一声50年かかると言われるが、まさに彼の場合もデビュー以来ほぼ50年が経った。ノーベル賞だからどうだというわけではなく、実際、私たちはもっと前から彼を伝説だと思っていたが、彼はまさに「歴史」になった。
 そのノーベル賞がどうだという点に関して、「21世紀のノーベル文学賞の選考は、米国に由来する商業文明を毛嫌いしているように感じていたので、米文化のど真ん中にいるディランの今回の受賞にはとても驚いた。やっと文学賞も、科学系の賞と同じように、世の中に貢献した人に与えられる、まっとうな賞になったということだろう」と語る人がいた(アメリカ文学者で、日本ポピュラー音楽学会会長も務められた東京大学名誉教授の佐藤良明氏)。また、それも含めて、今回の受賞は、左右のイデオロギーに偏ることなく反戦・平和とともに反体制を貫く彼の自由・気ままな姿勢に、ノーベル財団としてのメッセージ性を強く感じるのだが、それはこのニュースを聞いた人にかかっている・・・否、答えは「風に吹かれて」いるのだろう。そんなことをつらつら思いながら、この曲を聞くと、走馬灯のようにいろいろなことが心をよぎる。
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