風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ネコの手も借りたい

2017-03-04 13:06:55 | 日々の生活
 クロネコヤマトの宅急便でお馴染みヤマト運輸が、サービス・レベルを落とさざるを得ない事態に追い込まれているとの新聞報道には、ちょっと驚いた。
 同社が1976年に宅急便を始めたとき、初日の取扱個数は僅か11個だったというが、今ではネット通販市場の拡大などで業界全体で年間40億個に迫り(同社はシェア50%の最大手)、さらに共働きや一人暮らし世帯が増えて不在のために宅配便の2割で再配達の手間が発生するなど、従業員は忙しくなるばかりであり、折からの人手不足が拍車をかけているようだ。技術革新に法規制が追い付かない話は聞くが、社会の変化に人海戦術で対応するのが限界に達し、他方、輸送・配送の無人化など期待される技術革新の実用化までまだ時間がかかる、言わば端境期の状況にあって、日本流のきめ細かなサービスの追求が壁にぶち当たってしまったわけだ。従業員の労働環境が悪化し、自社で賄いきれない荷物の配送を外部に委託することで扱う荷物が増えるほど収益は圧迫され、営業利益はリーマン・ショック以来の低水準に沈むという。
 人手不足は、外食産業やコンビニ業界でも同様で、ロイヤルホストは24時間営業の全廃を決め、すかいらーくも一部を見直すと報じられていた。そして、これらの業界は無人化の取組みでも先行している。はま寿司では、浦和店をはじめ首都圏三店でペッパーを試験導入し入店案内させているというし(ハウステンボスにはフロントでロボットが対応するホテルがあるし、イオンモールはじめコンシェルジュ・ロボットは広がりを見せている)、ローソンは、大阪府内の店舗で無人レジ機「レジロボ」の実証実験を進めているという。ICタグがついた商品を専用カゴに入れ、レジロボの決められた場所に置くと、カゴの底が開いて下にセットされた袋の中に商品が入り、ICタグで読み取って表示された代金を支払うと、袋詰めされた商品が出て来る、という仕組みだそうだ。
 アマゾンの取組みはもっと徹底している。シアトルに開いた実験店舗「amazon go」は、一見、ごく普通の食料品店ながら、AIとIoTにより、予め専用アプリをスマホに取り込んで入り口のセンサーにかざすだけで、あとは専用カゴもレジ精算も必要なく、自分のカバンやバッグに商品をどんどん詰め込んでそのまま店を出ても、自動的に精算が出来てしまう優れものだ。
 世は第三次AIブームに沸いている。一年前、グーグル傘下の会社が開発したアルファ碁が世界戦で優勝経験があるプロ棋士に4勝1敗と勝ち越したことで、ブームに火を点けた。年末には、「Master」というハンドルネームの正体不明の棋士がインターネット囲碁サイト「東洋囲碁」に現れ、大晦日までに30連勝、翌1月5日までに「野狐囲碁」で30連勝、井山裕太六冠を含む日中韓のあらゆる強豪を打ち倒して60戦無敗で立ち去ったものだから、多くのプロ棋士から人智を越えた存在と評されたが、Googleが「Masterはアルファ碁の進化形である」「テストは終わった」と公表して、AIの進化は予想を超えていることがあらためて実証された。
 AIで仕事が奪われると危機感が煽られ、世の中はドラスティックに変わるかのような言説も見られるが、足元では大切な接客を機械にやらせるわけには行かないという抵抗感も存在する通り、人の意識との葛藤の中でブームはいずれ鎮静化し、AIやロボットは着実かつ確実に私たちの社会に浸透して行くのだろう。私のような昭和世代には未来小説のようだが、そのときヤマト運輸の苦労も懐かしく振り返るのだろう。
コメント
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