走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

自由の権利 その3

2015年09月25日 | 仕事
ドアをこじ開けた。中に入ると警官二人はテキパキとドア付近に積み上げられた荷物を動かし武器がないかカバンや袋を開け確認している。

パディはトイレにいた。一人にして欲しいと。もちろん鍵もかかっている。入り口のドアの裏側は鍵の周りに何十もの買い物を袋が巻きつけてあり、その上をバンジーコードで固定し錘になるカバンまでぶら下げてあった。

1BRのアパート。あちこちにスーツケースがあり、ベッドにはシーツもかかっていなかった。
キッチンカウンターにきっちり並べられているお財布、鍵、櫛、領収書、空の飲料水のボトル。皿に盛られたフルーツ。領収書は昨日近所のスーパーで果物などを買った証拠。

飲食を自立してできているとなると、これまた強制的に連れて行くことはできない。

んんんーしかし本人をこの目で見るまでは結論は出せない。

交渉に次ぐ交渉でようやくトイレから出てきたパディ。ぱっと見は年相応の女性だった。この時点で強制的に連れて行くことは断念。ならば自主的にERに行くことを勧めなければならない。

しかし彼女のパラノイア的な言動は続き、ERに行くことを断固と拒否する。勿論診察も拒否する。私はどこも悪いとこはない。いたって健康なの!と言い張る彼女。

続く


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