走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

文化を理解?

2017-09-03 | 仕事
外国人観光客の増加、2020年東京オリンピックを前に外国人に優しい病院作りに励む記事を先日読んだ。医療通訳だけでなく文化を理解できるようにと。文化を理解?理解とは何を指しているのでしょうか?

カナダは移民の国。今でも年間多くの移民を受け入れています。人種の坩堝と呼ばれるアメリカに対しカナダは人種のモザイク、つまりカナダ人になっても自国の文化や風習を続ける事ができる国、違いを大切にする国。なのでカナダの看護学者が提案する事が

Cultural safety

ひと昔前までは culture sensitivity でしたがそれだけでは足りない。もう一歩前進していこうとなりました。Sensitivity は理解する、Safety は安全/保障と訳すと良いでしょう。

理解と安全/保障の違いは?

自分と違う人を前にして戸惑うことは当然です。何があっても1日に5回のお祈りを欠かさない宗教、手づかみで食事をする人、一夫多妻制とか。OO族はXXすると理解することは第一歩です。しかし195カ国もあり、文化ではもっと詳細に分かれるこの地球。本当にそれぞれの文化を理解することは可能でしょうか?

それに理解すること(大概ちょっとかじった程度) はステレオタイプに繋がりませんか?白人の人は皆キリスト教徒だとか、パンしか食べないとか。

それよりも大事なのは患者さん一人一人に文化や風習について聞く事が出来、それが実行できるようにサポートすること。患者さんが入院していてもその方の文化、風習が安全に行えるようにサポートする事が最も大切なのです。

私が以前働いていた病院で事件が起こりました。看護師が患者の髭を切ったのです。その患者さんは脳梗塞後で嚥下障害が軽度にあり、食事介助が必要でした。言語障害がない方でしたが移民後間も無く英語が話せない方でした。看護師は食事の後に食事で汚れた髭を綺麗にしなければならず、それをしない看護師もいるので清潔が保たれていないと思いました。この患者さんと同じ宗教の人はどの人も宗教的理由で髭を伸ばしていることは知っていましたが、患者さんの口の周りの清潔を守るために看護師はその髭を剃り落としてしまいました。

家族が来棟し愕然。看護師は誤りもしませんでした。もちろんマスコミにまで取り上げられるまでに発展し、病院側は公で謝罪をしました。院内の看護教育を見直し安全を約束しました。

この宗教は女性も男性も生まれてから一度も髪や髭を切りません。生まれた時からシルバーの腕輪をして、男性は腰にナイフ。女性は櫛などのミニチュアがぶら下がったネックレスをします。患者さんが寝たきりになると褥瘡の原因になるからと家族に無断でナイフやネックレスを取り上げる看護師もいました。

医療的な理由で文化を取り上げるのではなく、それを踏まえて温存できるようにとり計るのが安全/保障。もちろん患者や家族に願われても出来ない事もあります。しかし話う事で中間地点を見つけるとか代わりになる方法を考えるとか、安全を守るために努力している姿勢は見せたいものです。

文化って奥が深いでしょ?だから教育しなければならないのは文化を学ぶことではなく、文化の安全を守るために必要な姿勢なのです。



1908年に建てられたホテル。現役です。


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2 コメント

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文化の安全 (kay)
2017-09-03 08:24:19
アメリカにいたときCultural sensitivityについては学びましたが、
Cultural safetyという発想、初めて知りました。
文化・風習が安全に行えるようにサポートする。
確かに、大事なことですね。特に医療機関では。
カリフォルニアやハワイの高度看護施設でも異文化背景のある患者さんとの
関わりでいろんなことがあったのを思い出します。
言葉の壁も大きいけれど、価値観の違いが誤解に発展したり、
施設の規則がその人の風習に合わなかったり。
どのように対応するのが最善だったのかな。
興味深い記事、ありがとうございました。
Kayさんへ (美加)
2017-09-04 07:44:23
カナダはより良い生活のためにと先住民の子どもたちを親から引き離し、英語を教え、先住民の言葉を使うことを禁止し、祭事や風習も違法としました。より良い生活どころか、先住民の文化を徹底的に破壊しトラウマに追い込み、地域と文化のつながりがなくなり社会で機能できない人間を作り出した苦い歴史があります。決まりが多い医療施設でも可能な限り、、、誠意は大切です。

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