走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

寄り添う

2017年03月03日 | 仕事
BC 州が豊かな緑に恵まれているのは秋と冬に降る雨のおかげ。この雨が針葉樹林を大きく育ててくれる。しかし雨は冷たい。あっという間に体の芯まで冷えてくるほど。だからアウトリーチの日に雨は降ると、それなりの覚悟で出かけなければならない。今日もそんな日だった。

彼女はホームレス歴4年。もっと長いかもしれない。20代後半と若い時からだ。人を寄せ付けず、時には暴力的な態度。警察沙汰にも何度も。強制的に病院へ連れていかれても逃げ出したり、、、

そんな彼女が教会の前で大声で泣いていた。きっと近所の誰かが通報したのだろう。警察もやって来た。警察を見るなり彼女は悪態をつきだす。

今まで、何度も彼女に近づこうとした私。目も合わせなければ叫びその場を去る彼女。ベテランのアウトリーチもお手上げ。そんな彼女が泣き叫んでいる。

いつものように逃げられると思った。でもそれでも良いから何かをしなければと思い彼女に近づいた。幻覚と被害妄想が酷いがそれでも私のことを罵ることも忘れない。ホームレスアウトリーチのデニーと教会の牧師の3人で、後ずさりはしなかった。寄り添いたかった。

2時間半一緒にいた。まるで牙をむいて暴れまくっていたライオンが静かに横たわるように次第に彼女は静かになった。紅茶を2杯飲みスコーンを2つ食べた。ずぶ濡れのジャケットも乾いた新しいものに着替えてくれた。静かになってからはただ一緒にいるだけだった。誰も何もしゃべらなかった。

最初はなんとかして病院へ連れて行きたい。必要ならば入院措置が決まるまで側につきそうつもりだった。もちろんその旨は伝えたが彼女の幻覚と被害妄想がそれを阻んだ。途中からは病院行きは諦めた。それでも良いと思った。

別れ際に、私が
I am glad spending time with you today. Take care. See you soon.
と言ったら彼女は nice to meet you. Thank you. と言ってくれた。

耳を疑った。この3年間、近付くことさえできなかったのに、凄い進歩!

心を閉ざしていた彼女が心を開いてくれたのかも。私は敵ではないと認識してくれたのかもしれない。今日はそう思っていたい。

医療行為はできなかったが有意義な時間だった。素直に嬉しい日だった。



外は土砂降り。週末はまた雪の予報も。写真は先週の晴れ晴れしたバンクーバーの海と山。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (のびた)
2017-03-03 10:21:44
英語の部分が分からないから ネット翻訳にしました
私は、今日あなたと時間を過ごしてうれしいです。 気をつけてください。 それではまた。
お目にかかれて光栄です。 ありがとう
なんですね

神様のお手伝いをしているような 大変だけれど尊い仕事ですね
難しい話が多くてコメントできずに いつも読み逃げです
東京は 今月末には桜が咲きます
そして今日は ひなまつり で保育園などの行事があるかな
のびたさんへ (美加)
2017-03-04 04:48:36
難しいことを書いてますか?もっとわかりやすく書かないとダメですね、、、。努力します。

英語の訳は
今日は一緒に過ごせてよかった。
体に気をつけて
またすぐ会いましょう

会えて良かった
ありがとう

って感じです。どうも訳するとニュアンスが変わるようで、ついつい避けてしまいます。笑

日本は春。命が芽吹く良い季節ですよね。

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