保健福祉の現場から

感じるままに

精神障害に対応した地域包括ケアシステムと評価指標

2016年10月20日 | Weblog
キャリアブレイン「3カ月・1年退院率、数値目標見直しへ- 入院精神障害者で厚労省が社保審部会に提案」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/49846.html)。<以下引用>
<厚生労働省は19日、社会保障審議会障害者部会に対し、障害福祉計画の基本指針で示されている精神障害者の入院後3カ月と1年時点の退院率の数値目を見直すことを提案した。入院患者の地域移行を進めるため、退院率の引き上げなどを視野に入れている。ただ、算出作業の遅れで2014年度と15年度の退院率の確定値を示せなかった。指針の見直しには退院率の検証が必要なため、委員からは改善を求める声が出た。今後、算出方法の見直しを含めて部会で議論する方針。この日の部会で、厚労省は、都道府県や市町村が次期障害福祉計画(18-20年度)を作成する際に必要となる基本指針を見直すことを提案した。次期計画の指針の柱として、精神障害に対応した地域包括ケアシステムの構築など5項目を提示。達成目標として、入院後3カ月・1年時点の「退院率の上昇」などを挙げた。第4期障害福祉計画(15-17年度)の指針では、入院後3カ月時点で64%以上、入院後1年時点で91%以上を退院率の目標としていた。17年(6月末時点)の長期在院者数についても12年(同)と比べて18%以上削減することを掲げていた。退院率に関しては、精神保健医療の在り方を議論している検討会と分科会でも取り上げており、「現時点で入手可能な最新のデータは3年前(13年度)となっており、計画の進捗管理に課題がある」といった意見が出ていた。障害者部会でも、委員の1人が14年度と15年度の退院率を示せない厚労省の対応を疑問視し、「この数値は極めて重要。2年前のデータが出ないのは、どういう理由なのか明確にしておく必要がある」と注文を付けた。厚労省の担当者は、「集計の遅れが原因。集計の遅れがあることは検討が進まないということになるので、問題意識を持っている」と述べたが、来月開催予定の次回の会合までに集計結果を示せるかどうかは明らかにしなかった。今年度中に指針を見直す必要があるため、厚労省は集計作業を迅速に進める方針を示した。>

障害者部会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho.html?tid=126730)の「平成30年度に向けた障害福祉計画及び障害児福祉計画に係る基本指針の見直し」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000139973.pdf)p5「基本指針見直しのポイント」に「精神障害に対応した地域包括ケアシステムの構築 これからの精神保健福祉のあり方に関する検討会の議論を踏まえながら、精神障 害者が、地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、精神障害に対応した地域包括ケアシステムの構築を目指すことを政策理念として明確にするために基本指針の見直しを行うこととしてはどうか。」とあり、p8「入院後3ヶ月時点の退院率の上昇、入院後1年時点の退院率の上昇、長期在院者数(従来の数値目標について見直しを検討) (例)・障害福祉サービス種別(自立生活援助、共同生活援助、就労継続支援、居宅介護など)の精神障害者における利用者数」「福祉施設利用者の一般就労への移行者の増加及び就職後の職場定着率 (例)・就労系障害福祉サービス利用者の一般就労への移行者数、就労移行支援の利用者数、就労定着支援の利用者数等」は注目である。「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会 における検討状況について」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000139977.pdf)p9「対応の方向性) 医療計画においても、精神障害者が、地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、精神保健医療・一般医療、障害福祉・介護、社会参加、住まい、地域の助け合いが包括的に確保された地域包括ケアシステムの構築を目指すことを理念として明確にしてはどうか。」「精神障害に対応した地域包括ケアシステムの構築するため、保健所が連携調整の主体となって、精神医療圏 (二次医療圏を基本)毎に、圏域連携会議を通じて、精神科医療機関、一般医療機関、地域援助事業者、市町村などとの重層的なネットワークを構築することとしてはどうか。この際、都道府県本庁及び精神保健福祉センターが補完的に支援することとしてはどうか。」とある。自立支援医療(通院公費)をはじめとする障害福祉は市町村が主体であるが、市町村では医療保護入院・措置入院や医療計画(精神疾患)には直接担当していない。また、精神医療は市町村で完結しない地域が多いことも認識する必要がある。精神障害に対応した地域包括ケアシステムを進めるには保健所が連携調整の主体となる必要があるが、「精神科医療機関、一般医療機関、地域援助事業者、市町村などとの重層的なネットワーク」が不可欠であり、資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000138403.pdf)p11保健所「精神疾患に関する圏域連携会議」とp25「市町村(自立支援)協議会」との密接な連携が重要である。平成27年度からの第4期障害福祉計画では、①平成29年度における入院後3ヶ月時点の退院率64%以上、②平成29年度における入院後1年時点の退院率91%以上、③平成29年6月末時点の長期在院者数を平成24年6月末時点の長期在院者数から18%以上減少、の目標値が掲げられているが、「長期入院精神障害者の地域移行に向けた支援方策に関する研究報告書」(http://www.nisseikyo.or.jp/images/about/katsudou/hojokin/h27_houkoku_6.pdf)の資料p4(p36)に都道府県別の「入院後3ヵ月時点の退院率」「入院後1年時点の退院率」「長期在院者数」の一覧をみれば、都道府県格差は小さくないようである。おそらく、同一県内でも地域間格差は小さくないであろう。二次医療圏・障害保健福祉圏ごとの分析が欠かせないように感じる。精神科病院の実態については、630調査(http://www.ncnp.go.jp/nimh/keikaku/vision/data.html)で把握されているが、あまり活用されていないであろう。医療法に基づく病床機能報告制度(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055891.html)は一般病床と療養病床を有する医療機関にNDBとリンクした詳細な医療実績が公表されており、630調査(http://www.ncnp.go.jp/nimh/keikaku/vision/data.html)でもNDBとリンクさせ、「精神病床機能報告」として活用すべきかもしれない。
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