いつか どこかで

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『単純な脳、複雑な「私」』 池谷裕二

2009-07-27 10:43:05 | あ行の作家
今日読んだ本は、池谷裕二さんの『単純な脳、複雑な「私」』(2009/05)です。

池谷さんが脳科学について高校生に講演・講義を行った内容をまとめたもので、わかりやすく説明されていて読みやすいです。
内容は、そうなの?と思うことから高度なことまで幅広いです。
特に脳と心の関係については、へぇ~、そうなんだ、と思うことが多かったです。
おもしろかった内容をいくつか挙げてみると……。

手を見れば、文系か理系か判別できる?、と言われるとちょっと気になるでしょ。
私も思わず自分の手を見ながら読みました。
他にも、直感は「学習」であり、訓練によって身につくとか、
「正しい」か「間違っている」かという基準は経験の「記憶」、つまり「どれだけそれに慣れているか」による、というのもおもしろかったです。

生物は先祖の機能を使い回すことによって進化してきたというのですが、脳がこの使い回しをどう利用しているかというと……
「心の痛み」や「共感」も「痛覚」(痛みの神経回路)を使い回して感じているらしい。
そして、脳は外の世界を直接知ることができないので体を通じて入ってくる情報から知るというのですが、これは体を通じて自己観察をして自己理解をしているということだそうです。
で、この「自己観察力」というのは実は「他人観察力」の使い回しということで、なるほどねぇって感じです。

さらに、「手を動かそう」と意図したときに脳は既に動かす準備をしているというし、何かを思い出そうとするときも意識にのぼる前に脳は既に活動しているといわれると、へぇ、そうなんだって思うでしょ。

で、脳と心の関係ですが……。
心は脳の処理の関係で自動的に生まれるらしい。
と言われると、えっ?って思うじゃない。

ポイントになるのは、
ニューロン(神経細胞)の活動、
ニューロンが集まってつくる回路、
ゆらぎ(ノイズ)。

ニューロンの活動は入力を足して結果を次のニューロンに出力するというシンプルなもの。
(正確には出力はオンとオフしかないので単純に足した結果とは違うらしいんだけど。)
で、その活動には強弱があったり、ニューロン同士でそろって活動したりバラバラだったりする「ゆらぎ(ノイズ)」が自然発生している。

さらに、ニューロン同士は適切なつながりを持って回路をつくっていて、その回路の構造として情報を前に戻すフィードバックという構造があって、そこにノイズがあると想定しなかった挙動が起きる。

ニューロンのように単純なルールに従って同じプロセスを繰り返すと予想外の新しい性質を獲得することを「創発」というんですが、ノイズは創発の原料になっているんですね。

で、フィードバックで生まれる創発が心と関係してきます。
というのも脳は身体や環境を通じて自分をわかるというフィードバックの回路になっているので創発を生むわけで、その創発の産物のひとつが「心」。
つまり、心は脳のフィードバック処理のプロセス上、自動的に生まれるもの、ということになる、らしい。

ということは、何かを楽しいと感じたり、落ち込んだりするのも脳の活動の結果ということ?と考えると、心は不思議だって思うでしょ。
でも、心を不思議だと感じるのも理由があるというんですね。
それは、考える脳をまた脳が考えるという「リカージョン=再帰」の効果が関係しているそうです。

どう関係しているか……、気になるでしょ。
興味を持った方はぜひ読んでみてくださいませ。

そうそう、講義に参加した高校生がなかなか鋭い質問をしていて池谷さんとのやりとりも読んでいておもしろかったです。

と、いろいろ書きましたが、実はよくわかっていないところもあったりして(笑)。
でも、読んでいて楽しい本でした。
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