Tシャツとサンダルの候

母親の指を車のドアに挟んでしまったあの日の事。

膝の調子が思わしくない。

九重で無理をし過ぎたのかもしれぬ。

どうやら、自分が思っている程には、この膝は回復していないようだ。

今日までは、日課の山歩きを中止する事にした。

 

 

暇である。

 

スマホの画像が容量一杯になってきているようだ。

どうにかせいとスマホが言っている。

クラウドとSDカードにデーターは保存している。

スマホ内は、要らないものは消すことにした。

画像をめくっていくと、

 

 

 

 

あーそうだ。そう言えば連休中に・・・

 

山にも行けないし、そういう訳でネタもないので、あの時の事でも書くか。

連休中のある日、家族で高良山の森林公園まで、弁当を持って出かけたのだった。

ツツジが見頃だった。

売店のテーブルを借りて、弁当を広げる。

 

家内力作の弁当である。

お袋の好物のグリーンピースおにぎりと卵焼きは当然入るにしても、魚肉ソーセージの海苔巻は「でかした」と褒めてやらねばならぬ。

惜しむらくは、野菜などは要らないから、赤いウインナーを、弁当を埋め尽くすほど入れるべきであった。

なんせ、魚肉ソーセージと赤いウインナーは、私の必須アイテムなのだ。

 

 

完食。

 

ゲフ。

お腹いっぱいである。

ツツジも見たし、帰るか。

 

 

 

娘と家内が手伝いながら、オフクロを車に乗せようとしている時、

運転席に乗り込んだ私は、後を確認せずに運転席のドアを閉めてしまった。

 

「あ、あいたたた。」

 

お袋の小さな叫びが聞こえた。

 

「あー!バーチャンの指が挟まっとる!!」

 

長女の叫び声に慌てて振り向く。

 

こりゃいかん!

てっきり指を骨折させてしまったと思った。

連休中だ。病院は限られている。

救急外来のある病院まで車を走らせた。

 

「大丈夫たい。痛くなか。どうもしとらん。」(オフクロ)

 

んな訳あるかい!

オフクロは認知症だ。

ついに痛みすら認知できなくなったか。

 

病院到着。

病院での診察は・・・

 

骨折はおろか、

「恐らく打撲もしておられないかと。」(医師)

 

 

へ?(一同)

 

 

 

 

あんまり暇なので、今日になって自分で再現してみた。

この隙間に指を挟んでいたとすれば、下手すると切断さえも考えられた筈だ。

だが、

よくよく考えてみれば、あの時、後のドアはオフクロが乗り込むために全開にされていた筈だ。

 

オフクロが、センターピラーをこう掴んでいたとすれば、

私の太い指でも、楽々入るほどの隙間であった。

 

 

 

 

なんだよ。

 

 

 

 

まあしかし、この指がもっと内側に置かれていれば、どうなったかは解らぬ。

幸運だったと思わねばね。

 

 

 

 

てな事があった日であった。

チャンチャン

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