ハートですね

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打算なき優しさを

2005-07-03 | 81~90点
9時前、いわき市民会館に到着。一足早く館内に入っていた同期の友人たちが、私のことを見て笑っている。なんだと思ったら、Yシャツを着てスーツパンツを穿いた私の格好が、高校時代とまったく変わらないからということだった。なるほど、混ざってもまったく違和感はなかった。外見の若さは、私の取り柄だ。幼さと形容もできようが、老けて見られるよりはいい。

第30回定期演奏会の本番当日は、部長の挨拶から。「おねがいします」とちゃんと先生に向かって言うあたり、「オっしゃッス」で終わらせていた私の時代とはまるで違う。

体操。ブレスの反復で、もう腹筋の持久力が追いつかなくなった。つづいて顧問のピアノに合わせて、発声練習。私の卒業以来、色々なバージョンが新しく編み出されていたようで、いちいち覚えるのが面倒だった。そして難しかった。自分の才能のなさを思い出した。

全体練習後、空き部屋でパート練習。同期のエレクトーンに合わせて音取り。「音取り」という言葉が懐かしい。そして手拍子の練習。「御踊」同様、足拍子も入る。ここでも才能不足を露呈。まったく覚えられない。サークルの卒業旅行においてさえリズム感の悪さを同期のみんなに指摘されたのだから、音楽を嗜んでいる人間が多く集まったなかでは、それがよりいっそう目立つ。本番までに間に合うのか。

再びの全体練習後、昼食。「ささき」の弁当。相変わらず不味い。時間をかけて何とか喉に流し込んだ。その間、ずっと手拍子の練習。ほかの代のOBもいるなか、同期に指導してもらって特訓はつづく。一生懸命に練習すれど、あまりに改善が見られないので、そのうち笑いが起こってきた。下手に笑いをとろうとするときよりも、頑張ったときのほうが笑ってもらえるのは、これ如何。とりあえずリズムのとりかたは、現役生の意外なアドバイスで進歩した。

正装したのち、音楽館脇でまたリズム練習。鶏ばりにすぐ忘れる。開演時間は刻々と迫る。

と、いきなり校歌が聞こえだしてきた。どうやら開演したらしい。ステージ脇の花道からこっそりと客席を覗く。観衆は500人くらいだろうか。1000人前後集めていた私の時代から比べれば、さすがに少ないと感じるが、思ったほど少ない客入りでもなかった。聞き慣れない女声の校歌が響く。現役生やOGには悪いが、あの三拍子の雄大な曲は、やはり男声の方が似合うと思う。難癖か。

第1~第2ステージと、ほぼその花道から聞いていた。以前部活を見学させてもらったときに聞いた、永瀬清子作詩、信長貴富作曲「天空歌」は格好いい曲だ。この歌が入った曲集は、ベストセラーとなった『空の名前』から作られたらしい。

第2ステージ後、ついに出番がきた。観客を前に歌うのは、本当に久しぶりだ。まずは、井上靖作詩、高田三郎作曲「野分」。実行委員長の指揮と同期の伴奏に合わせ、合唱。全体としてはまずまずの出来だったのではないか。私は高音時のハーモニーを壊さないように、裏声に逃げてばかりいた。

続いて2曲目は草野新平作詩、多田武彦作曲「富士山 作品第弐拾壱」。言わずと知れた「富士山5番」である。「へーいやーー す・れ・す・れー」な感じだ。「いきなりガッ と」の「と」の部分で誰かが飛び出した。定演のミスはビデオに残り、長らくネタにされるので、本人にとっては非常に厄介である。

ラストはOG・現役生と合同で、谷川俊太郎作詩、信長貴富作曲「きみうたえよ」。歌い終えたあとで、後輩から、テノールが笑えるほど出過ぎてましたよね、と言われた。そんなこと考えずに歌っていたので、おそらくそうとう出しゃばっていたのではなかろうか。問題はない。

いったん控え室に戻って、ひと休み。ネクタイを外し、身軽になる。第4ステージ最後の曲「Oh,Happy Day」でOB・OGが風船を持ち、現役生のバックに現れるという衝撃の演出に向けて、作戦会議。とりあえず薔薇を咥えることにした。

舞台袖にまわってスタンバイ。一度出番を迎えたことで、完全にハイ。ノリと勢い(イギオイと発音)が信条であることを思い出し、壊れることを決意する。合間に、顧問へOB・OG代表として花束を贈呈。おいしい。部長冥利に尽きる。

そして最後、クライマックスを迎えたところで出番。ステージの両脇から、風船を手にした馬鹿がわんさか出てくる。どうせならポピュラーステージなみのおふざけをしたかったが、あまりアイディアもない人間なのでたいした演出は創造出来なかった。目立ちたがり屋の権化を呼べなかったことが、今さらながら悔やまれる。

そのままアンコールへ。汗だくになって歌う。映画「ハウルの動く城」主題歌「世界の約束」(作詞・谷川俊太郎、作曲・木村弓、編曲・久石譲)を歌い終えたとき、顔面は汗でびしょ濡れになっていた。そして問題の手拍子曲を迎える。THE BOOMの名曲「風になりたい」(作詞作曲・宮沢和史)。練習の成果は出せなかった。足を合わせるので精一杯だった。最後は定番となりつつある「春よ、来い」(作詞作曲・松任谷 由実)。いい曲なのだが、肩を組んで終われる曲ではないので少し寂しい気もする。緞帳下がらず、閉幕。

私のときは緞帳が下がり終えるなり、奇声を発して会館入り口へ直行したものだが、みんな共学校らしく落ち着いた足取りで入り口へ向かっていった。ホールから出てくる観客を見送る。すべての客を送り出したあと、館外で愛唱歌を合唱。が、校歌と「いざ立て、戦人よ」のみであっさり終了。「U boj」で一気飲みするという伝統は無くなってしまったのか。

片付け後、レセプション。顧問の挨拶は、男声合唱の存続を訴えかけるものだった。紡いでいけるのだろうか、未来を。

現役生の挨拶。話す前から泣き出すなと予想していたが、部長は期待通りに涙を流してくれた。それにしても純粋で打算のない女の子だと感心する。胸を打たれた。真面目な性格だけに、いろいろと心配や不安もあったろう。定演が成功に終わり、両親や友人に良かったよと言われて、安堵と感謝の気持ちが溢れてくる。自分も部長を務めていただけに、その気持ちはよく分かるつもりだ。おそらく彼女はいま、支えてくれた仲間に対して、かつて抱いたことがないほどの感謝の気持ちで一杯だろうと思う。きっと忘れられない一日になったろうし、微力ながらその記憶の創出に貢献できたならば幸いだ。そしてこの先、彼女がどんな人間に成長していくのか、その未来が楽しみになった。周囲の人間が協力してあげたくなるような人柄なので、友人には恵まれることだろう。幸あらんことを。

あまりに感動して乾杯の音頭を失敗した。腹も減っていたので、声が震えてしまった。今日の成功は周囲の支え以上に、自分たちの意志によるところが大きい、ということを現役生に伝えたかった。だが雰囲気的になんとなく醒めていたので、ちょうど良かったかもしれない。

「これで反省会を終わります」と言う部長のセリフで、レセプションは終了。駅前の「鹿鳴館」で打ち上げ。疲れきって焼肉を食うのも億劫だった。私はほとんど無口だった。同期のピアニストから喋るよう促されたが、高校時代とは立場が逆になってしまったような気がした。高校生のパワーは本当に凄いと思った。

腹ごしらえをしたところで、現役生はこれからボーリングに行くそうだ。明日は球技大会があるという。自分もこんなハードに動いていたのかと不思議に思う。私と同期は一足先に帰らせてもらった。

同期とともに特急電車に乗って、東京へ向かう。新宿駅で別れ、帰宅。今日あったことを色々と反芻してみる。学ぶことの方が多かった。できるとかできないとかじゃなくて一生懸命やるんだ、というアマチュアリズムの結晶を見たし、部長が流した涙は、どんなフィクションよりも私の胸に響いた。私が年を経るごとに失ってきたものは純粋さであり、得てきたものは打算だった。これからもその傾向はますます強まっていくだろう。それでも自分の心が本質的に変わらず求めつづけているもの、それに気付かされた。


90点。のち
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2 コメント

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お疲れ (らーめん)
2005-07-09 09:41:12
青春してきたな…あんときはイギオイだけで乗り切れたが…
Unknown (みのり)
2005-07-11 00:44:39
昨日は酔っ払ってお電話したので、なにかべらべらと余計なことを喋っていたような気がしますが、全部ホントです。真実です。どうか信じてください。



ごめんなさい、なんとなくノリで言ってしまいました。冗談半分です。いいかげん本格的に計画しないと、壮大な式を挙げることができないと焦ってしまう今日この頃です。



ノリと勢いだけじゃダメなのでしょうね、大人になると……

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