夜な夜なシネマ

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『さいはてにて やさしい香りと待ちながら』

2015年03月19日 | 映画(さ行)
『さいはてにて やさしい香りと待ちながら』
監督:チアン・ショウチョン
出演:永作博美,佐々木希,桜田ひより,保田盛凱清,臼田あさ美,
   イッセー尾形,村上淳,浅田美代子,永瀬正敏他

『ソロモンの偽証 前篇・事件』を観た翌日、
友人の息子がJR六甲道近くのギャラリーでグループ展。
夕方それを友人と一緒に見に行く約束をしたので、仕事は休みを取り、
まずは朝からTOHOシネマズ西宮で映画鑑賞。

台湾映画はとても好き。
本作は思いっきり邦画ですが、監督は台湾期待の女性だそうで、
エドワード・ヤン監督の下で学んだとあればハズレなし。

東京から能登半島の寂れた海辺にやってきた吉田岬(永作博美)。
それは、両親が離婚するまで岬が暮らしていた場所。
まだ幼かった岬は母親についてゆき、父親の清水俊男(村上淳)がそこに残っていたが、
漁師だった俊男は8年前に海に出たまま行方不明に。
死亡したものと認定されたため、弁護士(イッセー尾形)を通じて
ボロボロの船小屋が岬に相続されたのだ。
岬は船小屋を改修すると、焙煎珈琲店“ヨダカ珈琲”をオープンする。

ヨダカ珈琲を見下ろす位置に建つ開店休業中の民宿には、
シングルマザーの山崎絵里子(佐々木希)と、
小学生の子ども・有沙(桜田ひより)と翔太(保田盛凱清)が暮らす。
絵里子は金沢の風俗店で数日働いては戻るという毎日をくり返し、
絵里子の祖母・由希子(浅田美代子)が入院中だから、
子どもたちは2人だけで過ごすことがほとんど。

いつも不機嫌な絵里子に、有沙は給食費の話もできない。
食事もろくに与えられず、翔太からひもじさを訴えられて、困り果てる有沙。
学校では貧乏貧乏とはやし立てられ、スーパーでは万引きの常習犯扱い。

そんなとき、岬が働く姿を見た有沙は、岬にお金を貸してほしいと頼む。
有沙の担任教諭・城山恵(臼田あさ美)からなんとなく話を聞いていた岬は、
お金なんて簡単に借りるものじゃないと有沙をたしなめる。
その代わり、ヨダカ珈琲できちんと仕事を覚えて働けば、給料を払うと言い……。

都会から離れた海辺の珈琲店だなんて、まるで『ふしぎな岬の物語』(2014)。
しかしこちらの珈琲店では「美味しくなぁれ」だなんて魔法はかけません。
世の中そう甘くないことをしっかり見せられ、
でも希望は皆無ではないのだということも見せてくれます。

佐々木希演じる母親・絵里子の酷さと言ったら、最初は嫌悪感のみ。
養育をほぼ放棄し、自分の留守中の食事として用意するのはカップ麺ばかり。
子どもへの小遣いとして机に置いた千円札は、絵里子が連れ込んだ男(永瀬正敏)がくすねるし。
そんな母親でも、一緒に居たいと願う子どもの健気なこと。
岬との出会いにより、少しずつほどけていく絵里子が○。

海辺を照らすほのかな灯り。
迷った人の心を優しく導くような作品でした。

それにしても、こんなに美味しそうなコーヒーを観ながら飲む、
劇場のコーヒーのまずいことよ。
コンビニのコーヒーがあれだけ美味しくなっているだけに、劇場も改良を求む。

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