実務家弁護士の法解釈のギモン

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家族法の憲法判断(2)

2016-01-20 10:31:42 | 家族法
 今、家族法の分野で憲法14条違反が問題となってきている分野が出てきているのには、歴史的な理由があるような気がしている。

 そもそも戦前の家族法は、夫婦は平等ではなく、通常は夫である家長の権限を主体に構成されており、妻の権利は(少なくとも現在の視点で見れば)いわばないがしろにされていた。相続においても、家督相続制度を採用し(イメージとすれば、徳川将軍家を誰が継ぐかという問題と同じことを、個々の家で行っていたのである。)、それを前提とする限り子供たちの権利も平等ではなかった。しかし、戦後、新憲法が制定されたことにより、両性の本質的平等を念頭に、親族、相続が全面改正となって現在の家族法が存在している。

 現行家族法は、夫婦の権利は一応平等な内容となり、相続分も子の相続分は一応形式的一律に平等に扱うこととなったことから、当初の段階では、現行家族法の規定が憲法違反かどうかなどという発想は全くなかったであろうと思う。非嫡出子の相続分が2分の1とされていたことも、家族優先という前提でむしろ当然のことだっただろうと思うのである。再婚禁止期間についても、現行家族法になって初めて規定された制度ではなく、旧法から存在した制度だったこともあり、おそらく性別上やむを得ない問題であって、不合理な差別などという発想はほとんどなかっただろうと思うのである。ましてや、婚姻に際して夫または妻の氏を称すべしとする規定は、その形式的な規定ぶりからして完全に男女平等な規定ぶりであるから、現行法制定当時有力学者だった人が、この規定について法の下の平等違反などの憲法上の問題が生じうるなどと聞いたら、仰天するほどであろうと思う。

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