実務家弁護士の法解釈のギモン

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時効の効力は権利の取得?消滅?(10)

2017-07-11 10:57:42 | 民法総則
 第4に、時効援用権者である「当事者」とは誰か。これも擬制という時効の効果を享受しうるのは誰かということであって、時効の援用権者に関する従前の議論と大して違いはないと思う。ここでも、要は時効の援用権者であれば擬制が使えるというだけであって、例えば第2順位の抵当権者が、第1順位の抵当権の被担保債権の消滅時効を援用しうるかという問題に関しても、援用権者と考えて問題はないと思うし、援用権者だとしてもそうでないとしても、別の消滅原因を主張しうることは、争いごとであるとすれば当然である。

 第5に、停止条件説を採用した判例の事案をどう考えるか。
 確か、判例の事案は農地売買における農業委員会への許可申請の売主側の協力義務の時効という、かなり特殊な事案なのである。しかも、時効を援用する前に農地ではなくなってしまい、農業委員会の許可申請が意味をなさなくなってしまっていた事案である。
 時効が主張される通常の場合、時効の効果は起算時に遡る。そのため、実は時効の効果が時効期間経過時に生じるか、援用時に生じるかは、あまり大きな問題にはならないのである。擬制説でいえば起算時に遡って擬制されるということになる。
 ところが、判例の事案では、例外的に時効の効果を遡らせることができなくなってしまうような、ある一時点(すなわち農地ではなくなってしまった時)を過ぎてしまった事案という言い方が可能だろうか。ただし、判例の理解も難しいようである。分析する能力がないと言われるとそれまでであるが、結局のところ、停止条件説でも擬制説でも、判例の事案の分析においては、論理構造は大して変わらないだろうと思う。停止条件の部分を擬制に置き換えて理解すれば、判例と同じ理論構造でもよいと思っている。
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