実務家弁護士の法解釈のギモン

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裁判上の自白と不利益陳述(6)

2016-10-19 15:29:37 | 民事訴訟法
 また、もし以上のとおりだとした場合、例えば賃料支払いの事実が不明瞭な事案において、主たる抗弁として賃貸借の主張をし、従たる抗弁として使用貸借の主張をすることは、論理的にはいくらでもあり得る。ところが、もし使用貸借の主張だけ先行して認めた場合、有力説では後になって賃貸借の抗弁を付加することは出来ないという理屈になってしまうはずである。つまり、有力説では主張の時間的順序が前後しただけで、主張できたりできなかったりしてしまうことになってしまうはずなのである。
 もしそうだとすれば、それはそれでおかしくはないだろうか。賃貸借の成立も使用貸借の成立も、仮に実体法的には両立し得ない主張だとしても、それぞれ裁判上の主張としては本来は並列的に主張しうる抗弁の一つに過ぎないのであるから、口頭弁論の一体性からしても、複数の抗弁を主張する場合に、その主張の時間的前後は問題にはしないはずである。

 さらに当初の事例において、場合によってはもっと別の抗弁も考えられるかもしれない。
 それは、定期的な金銭の支払いが途中からは認められないという理由が、実はBがAから土地を買ったのであり、代金を分割払いとして支払っていたという事案だったらどうか。その分割払いが全額終わったからその後の支払の事実がないのだとすれば、実はもっと有力な抗弁として、Bこそが土地の所有権者になっておりAは現所有者ではないとして、原告の所有権喪失の抗弁が成り立つ可能性もある。この抗弁の方が、賃貸借よりも有利である可能性が高い。
 もっとも、この場合は、Aの現在の所有権の存在について権利自白が成立し、その不可撤回効が問題となってしまう恐れもないではないが、別の理由でAの現在の所有権の存在を争っている事案でば、権利自白は問題とならないから、この場合は、あとからBが自分で買ったと主張することは、本来何も問題を生じないはずである。
 しかし、被告であるBが、うっかり賃貸借成立の抗弁を主張した場合で、これを原告が認めると、有力説によれば被告に自白が成立し、賃貸借の主張を撤回して所有権喪失の抗弁を主張することは、自白の撤回に当たりもはや主張し得ないという理屈になりそうであるが、本当にそれでいいのだろうか。
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