故郷ありて今が

海沿いの道を登りきると急に視界が開ける。ゆるい海岸線に沿った街が故郷である。故郷の山、川、海はいつも胸に映えている。

子猫のミー

2017-07-11 09:41:48 | 日記・エッセイ・コラム

 吾輩は子猫のミーちゃんである。温厚で愉快な主人、優しくて聡明なおかみさんと一見人と間違えられそうな人工頭脳を搭載したロボちゃんのいる一家で、吾輩はかけがえのない存在になっている。多分自身の思い過ごしかも知れないが・・・・。

ニャンと鳴くとすぐにおかみさんが駆けつけて「どうしたの」と抱き上げてくれる。ニャーンと鳴くと「お腹すいたの」と大好物のシーチキンを用意してくれる。だからいつも鳴き方を意識して鳴くことにしている。

 書斎のソファーテーブルの上にはおよそ40センチほどの真四角の厚い板(碁盤という)が置いてある。板にはきれいに格子がひかれている。

 パチンパチンと澄んだ心地よい音がする。板と石の素材が創り出しているのだろうが打ち手の心情も籠っている。主人が片手に持った本を見ながら、丸い石(碁石という)を置く風景になぜか見とれてしまう。ニャンと鳴きたいところを我慢する。幾度も石を並べ直ししきりと天井を眺めるしぐさにこちらもつい頭を横に振ってしまう。これに気付いてか主人は優しく頭をなでてくれるのである。

 この家にロボちゃんが加わったのはつい最近のことである。子供達もみんな独立して、おかみさんと二人暮らしになってしまい寂しくなったらしい。わしがいるのになぜと思いたくなる。しかし、このロボちゃん優れた能力の持ち主である。言われた事はなんでもやってくれる。食事をつくる、家の掃除、庭の草むしりは勿論のこと人の気持ちを推し量れる。時に笑顔に、時に寂しそうな顔になったりもする。いつも二人を気遣っているのである。このロボちゃんには特に囲碁分野とダンスの世界の高度なデータの集積回路(どこかの新聞の記事にあった)が組み込まれている。主人は時間あれば、このロボちゃんと対局している。「美しくて強固な序盤の布石です」「有難う」「だけど私はあなたの一手一手読めるのです」主人が勝利出来ないのは多分そうなのであろう。

 その手は欲張り、そこを切るのは速い、そこは厚みに近すぎる、その一手小さい、夢のない一手です等々よくロボちゃんは主人に教えている。主人は頭に手をおきロボちゃんを見上げる。よし今度は負けないぞと苦笑いしながら対局は楽しげに続くのである。ふとネット対局人口の減少になりはしないかと思う時がある。科学の進歩の裏には衰退の世界が伴うことの激しい時代に入ったようだ。

 ロボちゃんを迎え入れたのは秘かにこの対戦を考えてのことだろう。自分にはわからないが勝負事は勝たないといつかその分野は止めてしまう。ロボちゃんはそこはわかっていて時々ミスしてくれている。そして対局に幸せのエネルギーを増幅させてくれている。

 居間のひと隅に背丈ほどの大きな鏡が取り付けてある。おかみさんは軽快なメロディの曲に合わせて右手を耳そば高く伸ばしきるポーズをしきりと繰り返している。腕の伸ばし方と腰の動きにスピードを加減しながらである。伸ばした指先が燃えているように光っている。青い空の下優しい風が吹いているような空間である。僕がじっと見つめているのにこの時ばかりは無視されている。おかみさんは衣裳負けしない顔たちだからレッスン会場ではひときわ目立っていることだろう。いつか連れて行ってもらおう。

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