時事解説「ディストピア」

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マレーシア政府、北朝鮮犯行説を否定。日本メディアは不服。

2017-04-01 21:43:17 | 北朝鮮
「“だれかがヨーゼフ・Kを中傷したにちがいなかった。
悪いことはなにもしなかったにもかかわらず、ある朝彼は逮捕されたからである。”」



フランツ・カフカの佳作『審判』は、平凡な男性が理由もわからず逮捕され、
同じく事態をあまり把握していない群衆によって裁判にかけられ、ついには死刑に処される話である。

これが何の罪なのかもよく知らないにも関わらず、なぜか群衆は男性の有罪を確信している。
奇しくも現代の国際政治の情勢を描いた作品として読めなくもない。




さて、金正男暗殺事件に関して、先日、マレーシア政府は北朝鮮の関与を否定した。

当然だろう。

現地の警察でさえ捜査を開始したばかりなのになぜ関与したと確信できるのかという話で、
実際、日韓をはじめとした関与説を述べるメディアの報道は誤報が多く、二転三転するものだった。



女2人、一瞬で毒殺 スプレー噴射→口に布→10秒後、タクシーで逃亡


実際には手に毒物を塗って殺害したようなのだが、
わざわざ図解まで添えて、「関係者」がもらした「真実」としてスプレーで殺したと伝えている。

産経に限った話ではなく、この手のいい加減な報道が全国で氾濫していたと思う。




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否定された「北朝鮮犯行」説


朝鮮-マレーシア、両国関係の発展を確認





朝鮮とマレーシアの代表団が2月13日に
クアラルンプールで発生した朝鮮公民の死亡によって生じた問題の解決のための会談を行い、
共同声明を発表した。




共同声明によると、これまでマレーシア警察が主張してきた「北朝鮮犯行」説は否定され、
両国は1973年の国交樹立以来、発展してきた双務関係に基づいて問題を解決していくことにした。




双方が両国公民の出国禁止措置を解除したことにより、
マレーシアの警察が「殺人事件」の「容疑者」とした
駐マレーシア朝鮮大使館2等書記官と高麗航空の従業員は朝鮮に帰国した。




「殺人事件」が起きた時、クアラルンプール空港にいたという4人の「容疑者」への言及もない。
 両国の共同声明を通じて、今回の事件に朝鮮側が何の関りもなかったことが確認されている。



当初、マレーシア外務省と病院側は、
朝鮮の外交旅券所持者が空港で心臓麻痺倒れ病院への移送中、
自然史(ママ)のように亡くなった朝鮮大使館に通報した。


ところが、その日の夜、南朝鮮の保守メディアが「政府消息筋」によるものとして
「北工作員」による別の名前の人物の「毒殺」について報道した。



マレーシアの警察はこれを既成事実化し、
ウィーン条約に基づく治外法権の対象である外交旅券所持者の遺体解剖を強行した。



犯罪捜査学の見地から見ても、法律的見地から見ても、
マレーシア警察の捜査はすべてが欠陥と矛盾だらけであった。


警察が客観性と公正さを失い、誰かの意向に沿って捜査の方向を決めているという疑惑が提起された。

朝鮮公民の死因すら明確になっていない時点で、
米国と南朝鮮で「猛毒の神経剤VX」 による「毒殺」”説が流れ、
後日、マレーシア警察がそれを捜査結果として公式発表したのが典型だ。



朝鮮は、マレーシア側に対して敵対勢力の政治的陰謀に巻き込まれることなく、
すみやかに遺体を日引き渡すことを求めてきた。


もし朝鮮公民の死亡が自然史(ママ)ではなく、殺人の場合、
マレーシアは自国内で起きた殺人に対して責任を負わなければならない。


一方、朝鮮は被害者側として捜査結果を要求する権利を持っている。
謀略事件によって守勢に立たされたのは、マレーシア側であった。



「北朝鮮犯行」説の流布によって利益を得る特定勢力が、マレーシアの政府と警察を背後操縦したが、
今回の事件に朝鮮が関与したという客観的な証拠は出なかった。



朝鮮は、マレーシア当局が証拠がないまま偏向捜査を進めたことを非難しながら、
「今回の事件の被害者は朝鮮とマレーシア」(駐中朝鮮公使の記者会見)との見解も示した。


一方、マレーシアの側も、朝鮮と協力して事態を収拾しなければならなくなった。
そして二国間の会談が行われることになった。



朝鮮に対する国際的な嫌悪感を醸成しようと、2月から大々的なキャンペーンを展開してきた勢力は、
今回の事件が朝鮮とマレーシアの国交断絶に至るだろう騒ぎ立てたが、実際は正反対の結果となった。



朝鮮とマレーシアは、両国の関係を事件以前に原状回復さ(ママ)せるだけでなく、
それ以上の進展を目指すことにした。


共同声明によると、双方はビザなし渡航の再導入について肯定的に討議することにし、
双務関係をより高い段階へ発展させるために努力することで合意した。

(http://chosonsinbo.com/jp/2017/04/0001-2/)
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ここで重要なのは、記事でも触れられているように、
まず、マレーシア政府が一方的にビザなし渡航を廃止すると宣言、
その後、北朝鮮政府が在北朝鮮マレーシア人の出国を禁止、それに応答するように
マレーシア政府も自国の北朝鮮人の移動を禁止といった措置が取られたことである。



この点を踏まえながら、毎日新聞の社説を読んでみると興味深い記述に気が付く。




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北朝鮮とマレーシアが、マレーシアで殺害された
金正男(キムジョンナム)氏の遺体を北朝鮮に引き渡すことで合意した。

マレーシアは、事件への関与を疑われる北朝鮮外交官や容疑者とされる高麗航空職員の出国も認めた。


北朝鮮は見返りに、事実上の人質として
平壌に足止めしていたマレーシアの外交官と家族計9人の出国を認めた。


マレーシア政府は、安全な帰国を最優先に譲歩したのだろう。

人質を取って他国に要求を突き付ける行為は、まともな国家のすることではない。
外国人の人権を一顧だにしない姿勢は、日本人拉致事件にも通じる。

北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は今年元日の演説で、
友好的な国との協力拡大を語っていた。


伝統的友好国であるマレーシアに対する身勝手な対応は、
その言葉がうわべだけのものであることを証明した。

http://shasetsu.seesaa.net/article/448631278.html
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上の記事ではマレーシア政府のビザなし渡航廃止に関する宣言について全く触れられていない。
また、容疑者のみならず全北朝鮮国籍の人間が出国禁止になったことにも触れない。


出国禁止は一方的に取られたものではなく、双方が行ったものなのだが、なぜか北朝鮮に対してだけ
「人質を取って他国に要求を突き付ける」「外国人の人権を一顧だにしない姿勢」と非難している。


マレーシア政府は証拠不十分な状態で外国人を逮捕、長期にわたって拘禁した上に、
無実と判明した後、国外追放したのだが、この点に関しては何も感じないらしい。

金正男氏殺害事件の容疑者 北朝鮮に対するマレーシアの陰謀を語る


続きには以下のことが書かれている。


「だが、これで幕引きにしてはいけない。真相解明と責任追及へ向けた努力を続けるとともに、
 北朝鮮への圧迫をさらに強める国際連携を進めることが必要だ。


「制裁履行を徹底するためには、税関の検査能力などを高めねばならない。
 日本には、東南アジア諸国の能力向上への支援が求められる。


「米国では、北朝鮮をテロ支援国に再指定する動きも進んでいる。
 来週行われる米中首脳会談でも、北朝鮮問題は主要な議題の一つとなる。

「国連を舞台にした人権問題の追及も強めていかねばならない。」



要するに、
今回の事件を口実に日本のアジアでの台頭と
北朝鮮への政治的・経済的・軍事的圧迫を切望しているのである。




事件解決のための提案は何一つされず、代わりに叫ばれるのはまたしても制裁・制裁・制裁だ。

ここで注目すべきは、北朝鮮が関与した証拠は何一つないということだ。

もちろん、北朝鮮犯行説を支持するのは自由だが、
毎日新聞社は単なる「容疑」と純然たる「事実」を履き違えている。



「これが何の罪なのかもよく知らないにも関わらず、なぜか群衆は男性の有罪を確信している。」


事件の真相が不明だと認めているにも関わらず、なぜか日韓メディアは北朝鮮の関与を確信している。
そして、事件の解明よりも北朝鮮に対する更なる強硬策を主張している。


北朝鮮への締め付けの口実として、事件を利用する卑劣な行為こそ
各メディアは恥じるべきではないだろうか?


また、ここ2か月で果敢に叫ばれた北朝鮮への強硬策は、日本と韓国を基軸にした
軍事的包囲網をアジアに確立させるというアメリカのシナリオとマッチしている。


簡単に言えば、日米韓の軍拡と戦争準備、そして北朝鮮の敵視報道はリンクしている
この点についてはまた後日、触れたいと思う。


追記・


メディアが森友学園についてストーカー的報道を行っている間にも、
自衛隊は米軍との合同軍事演習に勤しんでいた。

この点は外国メディアも大きく取り上げ、
北朝鮮への侵攻を想定した内容ではないかというオピニオン記事も書かれたが、
面白いことに、日本のメディアは特に問題視していない。


もはや戦前と同じく、政府の広報機関と化していると評価しても良いのではないだろうか?
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