キ上の空論

小説もどきや日常などの雑文・覚え書きです。

ありがちな間違いと思いたい

2009年01月14日 | みるいら
 たまに行く定食屋のような名前の喫茶店は、内装の所々にホルスタイン柄があしらわれている。
 最近は名前にだまされて訪れる客のためか、どんぶりメニューが増えた。お昼時は学生と会社員らしき人とで席が埋まるようになり、なんとなく、足が遠のくようになった。
 久しぶりに行ってみると、夕方のせいか、人はまばらだった。
 何の気なしに、改めて店の名を読み、引っかかった。やはり、喫茶店の名前という字面ではない。
 樽飯庵。
 もしかしたら、これまでホルスタイン柄と思っていたものは、全然違うものだったのだろうか。
 今更気づいたところで、特に何が変わるというのでもないのだけれど。
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ひとつだけ

2008年11月13日 | みるいら
 曇り空が嫌いだ。
 雨が降るのはいやじゃない。でも、寒い季節の曇り空は(他に)わけもないのに不安になるから嫌いだ。
 ネガティブな感情はなるべく曖昧にしてきた気がするけど、はっきりとこれだけはどうしようもない。
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もう少しで思い出せそうな気がするのに

2008年05月03日 | みるいら
 とめさんの視線を追いかけると、石飛がいつもより難しそうな顔をして、2メートルくらい先の地面を睨んでいた。
「シャ乱Qのシャがなんだったか思い出せないんだって」
 呆れたような、途方に暮れているような、疲れを含んだ声で。
 一緒に悩むならそんなにわかりにくくしなくても良いと思うけど。
 わざわざ視界に入らない位置にいなくても良いと思うけど。
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飛ばない教室

2007年12月24日 | みるいら
 いつもより遅く帰ってきた兄さんが、余ったからと小さな袋に入ったお菓子をくれた。小さなリボンが付いていて、開けるのももったいない気がする。
 均等に配ると、とめさんは荷物に入れ(甘い物好きの姉がいるそうだ)、大家はコップの横に置き(満足そうに眺めている)、石飛はすぐに袋を空けた。
 兄さんは台所で、多分、今日の夕食を作っている。
 とめさんは時計を見た。
「長居しちゃったね」
 と言いながらも、帰る気配はない。
 卒論の締め切りまであと少し。学校で顔を合わせることもほとんどなくなってきた。
 この時間を惜しみたい。
 いつのまにかぼんやりとテレビを見ていた大家が
「このシリーズさ、変身ヒーローのジャスティス先生とか出てこないかなあ」
 と石飛に振り返った。
 がたん。
 台所で大きな音がした。
 石飛は身を折ってふるえている。
 残念ながら、ぼくには何がおかしいのかさっぱりわからない。わからないけど、まあいいや。

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ケストナーの『飛ぶ教室』は“クリスマスの話”、正義先生(訳本によっては正義さん)が登場します。
“このシリーズ”はファンタ先生。個人的には将軍先生が一押しです。
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ぼくじゃない

2007年12月05日 | みるいら
 寒くなってきたなと思うと同時に、年末近いあの日が来ると知る。
 先々月、先月と続いて、もう限界だからと言ってようやく平穏に過ごせるようになったと錯覚していたのに。正直に言えば、向こう半年は見たくもないと思う。
 終いにはケーキとプディングになって「配って」と差し出されたアレ。
 石飛が幸せそうにケーキを食べるのをみて五月女に睨まれた。けど、ケーキを作ったのも、職場から大量にカボチャを持ち帰ったのも、ぼくじゃないよ、とめさん。

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久しぶりすぎてやっぱりだめな感じがします。
五月女君は「そうとめ」君です。通称とめさん。
クリスマスの前に冬至。冬至と言えば、ゆず湯とカボチャ。
カボチャの味は結構強いので、好みが分かれそうです。
好きだけど大量には食べたくないかなあ。
あ、また言い訳文の方が長くなっちゃいました。
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サ行までで、約半分

2007年03月19日 | みるいら
 そういえば、ぼくの周りにはア行で始まる名字の人が多いような気がする。
 友人は大家と石飛。兄の友人で安藤さんが二人。卒論の指導教官が内田。
 ……挙げてみると、案外少なかった。
 大家は「店子ですが大家です」と自己紹介し、(今時耳慣れない)タナコなんて単語を使うなんて、珍しい人だというのが第一印象だった。物知りかと思ったら、そうでもないようで、「石橋湛山て、何県にあるんですか?」と真顔で聞いたことがある。そのギャップが可笑しかったらしく、話を聞いた兄さんが、しばらく思い出し笑いをしていた。
 気になっていても、馬鹿だと思われたくないから黙っているような疑問を、大家はいとも簡単に口にする。本人にはたぶん言わないけれども、兄さんに思い出し笑いをさせるような一件を理由に、ぼくは大家をちょっとだけ尊敬している。
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あせるとろくなことがない

2007年03月18日 | みるいら
 提出期限の迫ったレポートを読み返すと、柳田国男と書いたはずのところが柳田くにpになっていた。どんな人だろう、くにp。確認すると、三ヶ所も違っていた。
 今から直して間に合うだろうか。修正テープでそこだけ直した方が早いだろうか(字数がずれるのはあきらめるとして)。

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かな打ち派や、ワープロ派、手書き派にはわかりづらいですが、ローマ字入力の人が隣にあったoとpを打ち間違うのは、割とよくある話。
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もらいもの

2007年03月04日 | みるいら
 今日の晩ご飯は鯖のみそ煮。もらいものだ。
 午後の講義が終わって、家に帰ってしばらくしてから、夕方頃鍋ごと持ちこまれた。
 兄さんも珍しく同じものを食べて、明日の朝ご飯の相談をした。
 それと、みそ煮のお返しを何にしようかということも。
 思いのほかまとまらなくて、日付が回った。
 鯖のみそ煮。
 最近兄さんと話すことがないと言ったら、そのときは、そうかとだけ言った。
 そのときのぼくはしょげてるように見えただろうか。
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ひつじ

2007年03月03日 | みるいら
「呼び捨て?」
 その疑問はもっともだった。とは言え、類はただ驚いただけで、怒ってはいないようだ。
 普通なら、兄さんを“灯守”と呼び、類を“兄さん”と呼ぶんじゃないかと言われたこともある。でもうちは家族構成自体が普通じゃない。
「……まあ、いいか。敬称がついても気色悪い」
 ぼくが何も言わない間に、あっさり呼び捨てを許容した。
「そのかわり」
 なんと呼んでいいものか定まらないまま、類は結婚して家を出たし、その六年後ぼくは進学して家を出た。お互いを何と呼んでいたかという記憶はない。多分、呼び合ったこともない。
「おまえのことはドリーと呼ぶ」
 ニュースで見たクローン羊を思い出した。
「羊じゃあるまいし」
 お互いに顔を見ないで話すのは、向き合って話すほどの仲じゃないからだ。今更、兄弟面してもしょうがないくらい距離のある相手。でも、嫌いあっているわけじゃなくて、用事があれば顔を合わせるのは当たり前なくらい。
「ヒツジは俺のヨメだ」
 そんな名前だったかな。
 どうやら、本気でぼくをドリーと呼ぶつもりはないらしい。
 もしかしたら、ぼくが類を頭の中でずっと呼び捨てにしていたように、類はぼくを実際には呼ばないまでも〈ドリー〉という名で認識していたかもしれない。
 そのくらいなら、まあいいか。
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そのくちびるの赤

2007年02月05日 | みるいら
「ほんとに似てるようで似てないようで似てる」
 ぼくはその人がよこした名刺に書かれた文字を読んだ。
 華やかな笑顔に気後れしてしまわないように。顔を見ないように。
「ところで」
 ぼくは西嶋さんの方を見た。
 居心地悪そうだ。その隣の人を見ないようにした。
「どうして平日昼間に年若いお嬢さんとファミレスなわけ?」
 からかうような口調。
 何かがちらりと記憶をかすめた。かすめただけで、奥底に沈んだ。
 あの赤は、息苦しい。
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