瀧澤美奈子の言の葉・パレット

科学のニュース、ひとりごとはこちらで更新。
パレットの上で色を作るように考えをみぐらせてみたいです。

残暑お見舞い申し上げます

2016年08月15日 | 信濃毎日新聞に寄稿し...
ここ数日、夏休みをとっている方も多いのかメールの数も少ないような気がします。
そんなゆったりした時間に、蟬しぐれをBGMにして読書をしながらお昼寝というのが私の至福の過ごし方です。

そんなわけで、最近、信濃毎日新聞に寄稿した書評が次の2冊。

『へんな星たち』鳴沢真也著(講談社ブルーバックス)
『「奇跡の自然」の守りかた』岸由二・柳瀬博一著(ちくまプリマー新書)

『へんな星たち』は、兵庫県立大学西はりま天文台の鳴沢真也さんによる最新刊で、恒星のなかでもとりわけ個性的な星をピックアップして、ユーモラスに紹介している本です。
イナバウアーする星とか、タコのように墨を吐く星だとか、ふつうの天文学者にはなかなか思いつかない発想で、専門的な研究成果を解説してくれていますので
楽しみながら読むことができます。
夏は大気中の水蒸気量が多くて天体観測には不向きなのですが、夕涼みがてら壮麗な天の川を眺めるチャンス(ペルセウス座流星群も)があって
星空を身近に感じる季節です。信州の夜空は美しいので、信毎読者の皆さんに是非本書を読んで星空を楽しんで欲しいなと思って
この作品を選びました。

上記の本が純粋な学術書であるのに対して、『「奇跡の自然」の守りかた』は、自然科学をベースにしつつ社会とのあり方を考えさせてくれる一冊です。
三浦半島の小網代を舞台に、あの谷の自然を現在の形に守るに至った経緯と哲学が記されています。

バブルの頃には大規模なリゾート開発計画が持ち上がったという小網代。
著者らが考えたのは、真っ向から行政や開発会社に反対することで対立を深め、政治運動に陥って硬直化させることなく、提案をして現実的かつ効果的な自然保護を目指すというものでした。

しかも生態学者である著者らがとった自然保護の方法には特徴があります。
都市のすぐ隣にある自然環境のあり方を考え、「ありのままの自然」ではなく、要所要所に手を加えることで生物多様性を取り戻すことに成功したのです。
しかもそのために有効な「流域生態系をまるごと守る」という、生態学者の知見に基づいた保護の戦略が功を奏していることも特筆すべき点であると
思います。

日本は世界でも有数の森と海の国です。
地方創生、魅力ある地域づくりの観点からも、里山や沿岸環境の保護について考える際に示唆に富んだ一冊だと感じました。


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