覚書あれこれ

かつて見た映画、かつてやったマイナーゲームなどの覚書と単発ラクガキなどなど

『TROY』感想(2)

2007年05月02日 | 映画

※引き続きネタバレを含みます

●アガメムノン

 ヘレネー出奔を領土的野心のために利用する欲深い大王、…に描かれてます。
 この映画で誰か一人悪役を上げろといわれたら多分この人なんだろうなあ…。最近アガメムノンのことが妙にお気に入りなので、ひどく描かれていると心が痛みます。

 原作を知らない皆さん、本当は、もっと弟思いで、威張りんぼうだけど、気の弱いところもあったりなんかあったりもする、けっこう可愛いおじさんなのよ!!

 
…とはいえ、アガメムノンとアキレウスが対立して、アキレウスが戦線離脱せんことには『イーリアス』は始まらんからな。仕方が無いのかもしれません。アキレウスとお互いに理解しあえず、話が全くかみ合わないない辺りは原作どおりで拍手喝采。多分、実在していたらこのくらい押し出しの強い濃いいおっさんだったろうな、と思います。
 この映画で、いいな、と思う事の一つは、普通なら主人公側にやっつけられる役割のトロイア方も対等に描いている点で、攻める側も守る側もそれぞれ事情も正義もある、としている点なのですが、そうする為には主人公側であるギリシア連合軍の耐え難い側面も描いておかなくてはならず、考え抜いた上でのアガメムノンのあの役回りなのでしょうが、それでもちょっと悲しいな…。


●メネラオス

 もっと悲しいのはメネラオスです。これはもう原作とは全く別人だと思ってください。
 登場人物から神々を一掃した結果として、アプロディーテの介入、という原作上の裏技を使えない以上、ヘレネーがパリスと手に手を取って駆け落ちする理由をひねり出さねばならず、そのためにああなったのだと思いますが…。メネラオスって、悲劇なんかでもひどくかかれる時は本当にひどいのよね…。そもそも嫁さんに逃げられたってだけでも不幸なのに不憫な人…。

 でも、見た目的には、アガメムノンとメネラオス、たいへんに兄弟っぽかった。ブライアン・コックスも、ブレンダン・グリーソンも好きな役者さんなので、二人並んでる絵面は大変に結構でした。ビア樽ッ腹だし、ドワーフ×2て感じでカワユイ。パリスと一騎打ちする直前の、剣を振り回している時の表情など「ふん!ふん!」という鼻息が聞こえてきそうで絶品です。…なんだ、アタシ、原作とは全然違うけどこれはこれでけっこう気にいってるじゃないの…(今、自分の心に気づいた)


●アイアース

 出てきた途端瞬殺!でも、やたらとでっかいところも、台詞のいちいちも、いかにもアイアースっぽくて大変に宜しゅうございました。ヘクトールとの一騎打ちシーンも、「めちゃめちゃ怖え!!!」と呟いてしまいましたもの。原作でも、一騎打ちに進み出てくるアイアースを見てヘクトールがびびるシーンがあるんですが、物凄く気持ちが分かりました(しみじみ)。
 死に様についても、原作ではオデュッセウスに負けた事が原因で自刃しちゃうんだけど、映画ではそうでなくて良かったと思いました。(←もう、判断基準がおかしいし)


●ペレウスとテティス

 最初から故人のペレウスと(勝手に殺すなよー)、テレビ放映時には出番が端折られてしまったテティス。やたらこの話、故人にされてる人が多いよなあ。


●パトロクロス(付ミュルミドーン勢)

 アキレウス配下のミュルミドーン勢はあんな感じかなと思います。ギリシア勢はそもそも寄せ集めなんだけれど、原作でもたしかにミュルミドーン勢はさらに他の軍勢とは毛色が違う印象があり、イメージどおりでびっくりした。
 反対に、パトロクロスは、最初に見た時にあまりの改変っぷりの方にびっくりした思い出があります。原作のパトロクロスの人となりが好きなだけにこれは残念で、「アキレウスがトウの立った世慣れた男だから年下になったんか!?でも、そんな単にちょっと可愛がってる従弟、て役回りにしたら、パトロクロスが殺された時のアキレウスの激しい怒りや、ヘクトールの死体に侮辱を加える動機が弱いやないか!!どないすんねん」…と憤ったものですが、今考えると、映画でのアキレウスの様々な振る舞い(特にヘクトールの死体に対する陵辱)などは、パトロクロスへの愛よりも、アキレウス自身の人となりの方に原因の比重を多く置いているのだろうなあ、と思い当たり、そうすると、別にあの配役で事足りてしまうのですよね(原作では、純粋にパトロクロスへの愛情ゆえだろうけどね)。
 それに、原作ではアキレウスの唯一の理解者、かつ、唯一の制止役だったパトロクロスが単なる従弟になったおかげで、友人の位置にオデュッセウスが浮上していて、原作よりも二人の間が親密なんです。だから、まあ、いいか。(←おいコラ)
 でも、原作じゃオデュッセウスとアキレウスのツーショットなんてめったに無いんですぜ!?(大体において、「あのオッサン、胡散臭い。信用できない」と思われてんじゃないかな。"二枚舌の嘘吐き野郎"(C・『イーリアス』第9歌)ですからのう…(でも否定はしない))
 めったに報われることの無いオデュッセウスファンとしては、今回本当に嬉しかったなあ…


●プリアモス

 まあ、大体原作どおりの役回りなんですが、原作では、もっと無力で気の毒な老人、といったイメージの彼が、映画の方ではなんとも気品と威厳を兼ね揃えた王として描かれとります。ピーター・オトゥールでないと、あの味は出ないんでしょうね。アキレウスの転換点をもたらす重要な役回りでもあります。
 でも、映画のプリアモスはちょっとパリスを溺愛しすぎですよ。毎回パリスとプリアモスの仲良しっぷりを後ろで見ているヘクトールの表情が、切なくって。
 ヘクトールはしっかり者だからほうっておいてもいいと思うかもしれないけど、彼だって色々つらいのよ、もっと報いてやってくれよ、プリアモス!
 …と、ここまで書いて今更気づきましたが、そういえば、ヘカベー(トロイア王妃)が全然出てこなかったな…。アキレウスの父親のペレウスと同じく、最初から故人にされてるのかしら…。(カッサンドラー以下兄弟姉妹たちの存在も抹殺されてるし)

→感想(1)へ
→感想(3)へ

HPへ

『TROY』感想(1)

2007年04月30日 | 映画

●映画全体について(※ネタバレを含みます)


 ええと、実は、日本で数少ないオデュッセウスファンの身としては、変な筋肉バカになってたらどうしようと心配していたオデュッセウスが奇跡的にめったに無く好意的に描かれていた時点でもう合格点なのでございます。(で、ヘクトールが男前なのでプラス20点)どうしても点が甘くなってしまうのはご容赦くださいまし。


 さて、映画版は原作と違って、
・神々が出てこなかったり、
・登場人物が多数端折られてたり、
・死に場所が違う人がいたり、
といろいろ違う点があり、原作ファンはそこが気にいらず、原作未読者は知らないゆえに時々唐突な話の展開に戸惑うと思うのですが、大体の雰囲気は意外と『イーリアス』と近いかもしれない…と、『トロイ・ザ・ウォーズ』を見てから思うようになりました(笑)。

 何より、風景が違和感無い。
 流石にアポロン神殿やトロイア城内は微妙にちゃちだし、ギリシアってより聖書に出てくるヘブライの町って感じ(トロイアはギリシア世界よりも東方世界に近い、という演出なのか??)なのですが、周囲に広がる乾いた平野、埃っぽさ、照りつける太陽、広がる海、兵たちの鎧が照り返す様子などは原作のイメージどおりでした。
 鎧なんかも歴史時代よりはミュケーナイ時代寄りなのかな?(トロイアの方の武具はもっとオリエント風??)と思わせるやや古風なつくりで大変よろしい(←わあ、えらそう)。
 葬式シーンの瞼に乗せる貨幣や、乗馬の習慣、火葬については、いろいろと疑問ですが、そもそも原作が忠実に史実を描いているわけじゃなく半分以上フィクションなのでまあいいとしましょう。

 とはいえ、物語自体は原作から上手にエッセンスのみを汲み取って、再度構成しなおした風に感じました。映画としては割といい出来だと思うんだけど、どうしてこんなに酷評が多いのかしら…(Yah●o等の映画レビューを飛ばし見た感想)。
 まあ、確かに原作を知らない人が見たらまずパリスの行動にびっくりするよな。 原作を知ってればパリスのヘレネー略奪は起こるべき経過の一つでしかなく、予定調和で話は進むけど、知らない人はまずあそこで

「なんじゃこりゃーー!!!」という衝撃が。

国民に対して責任のある王子の身分にあるものが、人んちの嫁さんさらって挙句戦争の元凶になるなんて、いくら二人が愛しあっとったってありえん!!
…と、普通は思うでしょう。(とはいえ、アプロディーテの介入のせいで、パリスもヘレネーも駆け落ちの運命を逃れられない原作のすじでも、やはりパリスはあほだとは思います。アタシは割とそんなパリスも好きだけど)
 また、恋愛映画を期待してきた人は中途半端だと思うだろうし、戦争映画を期待してきた人は「何で善悪はっきりしてないんじゃい!それに、他の要素が多すぎる!!」と感じるに違いない。

 『トロイ・ザ・ウォーズ』あほ感想の方でも述べましたが、一応アキレウスが主人公だけれどもこの映画ではアキレウスばかりを追っているわけではありません。ですが、ああしてヘクトールやパリス、アガメムノンなど多くの人物を平行して立てた方がアキレウスの存在が浮き彫りになって、彼の個性が際立ってよいと思うのです。色んな人が色んな思いを持っていて、それがトロイア落城に向けて加速度を増して集約していくあの感じ、あの収束感は映画独特で、…何度も見るうち段々快感になってきました。最初見た時は、すじを知っているとはいえヘクトールが死ぬのがつらくてたまらなかったのですが、段々、回を重ねるうち、妙にアキレウスを見直してきてしまったあたり堕落…あ、いや、製作者側の思惑に乗せられてしまってるというかなんというか…

 では、次、それぞれの人物について

→感想(2)へ

HPへ

『TROY』 参考までに…

2007年04月30日 | 映画

今回感想をアップするにあたり、以前の自分の意見を覗き返してみました。ちょこちょこ見方の変わった部分もあるけど、大筋はそのまんまダナ…

というわけで、初回鑑賞時の感想を参考までに2004年06月08日の日記から抜粋

※ネタバレを含みます

 

「TROY」見てきました。
ギリシア好きとしては見とかねば、と思いつつも
多分面白くないだろうなあ、と予想してなかなか行く機会のなかったこの一作。
今日は急に思い立って勇気を出して行ってみました。

:全体について:
で、どんなクソ面白くない映画やろうと思って見ていたら、思っていたより面白かった。
「イーリアス」に忠実でもなく、さりとて史実に忠実というわけでもなく、ちょうど中間といったところでしょうか。
大体、史実においてのトロイア戦争なんて、絶対女がらみなんかじゃないと思う。
そういう、物語特有の純化した筋や人物はそのままに、舞台背景はミュケーナイ及びギリシア時代でドン、という感じでしょうか。
ほんとは当時騎乗がすでに戦闘に取り入れられていたのか、貨幣はあったのか、よく分からん。(「イーリアス」ではどちらも出てこない。ミュケーナイ時代は火葬ではなかったと思うし。)
「イーリアス」を下敷きにした別個のファンタジー、という感じであれはあれで面白うございました。

:登場人物について:
◎「原作とは違うけど、これはこれでいいかな」という人
おそらく主人公(の筈)のアキレウスさん…えー、なんというか、 トウが立ってすっかりやさぐれた感じに仕上がってました。
 ブラピもトムもやさぐれた方がいい男なので別にいい。

総大将のアガメムノンさん…押し出しの強さはイメージ通り。
 実在したら多分あんな感じに鼻につく人だったろう。けど、わたしは割と彼が好き。

・トロイア方の色男パリスさん…やさ男っぷりはイメージ通り。
 ちょうど今イーリアス関連の本を読み直していて、パリスを見直したところだったので、かなり好意的に眺めることができました。
 友好使節でスパルタ行って人んちの奥さん攫って来るわ、
 戦闘が怖けりゃ恥もなく逃げるわ、
 最初はわたしもやなやつだなあ、と思ってたんですが、よくよく読んでみると、彼は王子でなく羊飼いの子として育てられてるんですよ。
 だから、兄のヘクトールが本当は怖くても王子としての責任や武人としての誇りから怖い様子を出せないのに対し、彼は素直に怖い、と言えてしまうのです。
 映画のパリスは、苦労を知らない坊ちゃんという感じで、これはこれでとてもかわいらしかった。
 また、毅然とした英雄たちの中でただ一人恐怖を感じている自分を自覚してそれを乗り越えようとしているところがとても素直でいいと思いました。

・ブリセイスさん…アガメムノンとアキレウスの仲たがいの原因になった人。
 原作では原因になった割にちょっとしか出てこないんですが映画では大出世!出ずっぱりですね!

◎「これよ!これなのよ!!というくらいイメージぴったり」だった人
・トロイア王プリアモスさん…そう、そんな感じなのよ!!
 息子を愛し、国を愛する老翁。
 ただでさえ老人に弱いわたしにはたまりませんでした。
 
・プリアモスの長子ヘクトールさん…彼も、まさにイメージ通りでした。
 弟の不始末も何もかも、国のことを一人でしょって立つ彼。その責任と重圧は並大抵ではありません。
 アキレウスがあくまで自分の名誉や誇りにこだわり、あくまで個人的に戦うのと対照的で、彼はいつも国のため、妻のため、トロイアのために戦っています。
 『ガラスの仮面』で言うなら、天賦の才を授かった天才北島マヤが
 アキレウスだとしたら、ヘクトールは努力の人姫川亜弓なのよ。
 勝てないのは分かっていても、戦わざるを得ないのよ。

 もう途中からトロイア方に感情移入して見てしまいました。
 「クソー、パリス、早くアキレウスをやっちまえよーーー」となんど手を揉んだ事か。
 ちなみに彼の妻アンドロマケーも割とイメージ通りだった。

小国の王オデュッセウスさん…パーフェクト(渡●謙風に)。
 脚本を書いた人とオデュッセウス役のショーン・ビーンはわたしと同じようなオデュッセウス観を持っているようです。ありがたやー。
 ものすごくおいしい役だった。

◎「うーん、これはちょっと…」と思った人。
・アガメムノンの弟にしてヘレネーの夫メネラオスさん…映画では
 なんか変にぎらぎらした筋肉馬鹿に描かれすぎていたように見受けられます。
 ほんとはもっとおおらかで寛大で、でも義理堅くて細やかな気遣いも忘れないいいやつなんですが。
 年齢も、わたし、オデュッセウスやヘクトールと同年代かと思ってたのに…

・アキレウスの親友パトロクロスさん…そもそもトウの立ったアキレウスだから自然パトロクロスのほうが年下という設定になってしまったんでしょうが
 何じゃあのパトは。軽すぎじゃー!
 あんな単に「ちょっとかわいがっとる子」みたいな扱いにしたら、後々パトロクロスがヘクトールに殺された時のあの激烈なアキレウスの怒りが説明つかんじゃろがー!
 (そのかわり、映画ではアキレウスとオデュッセウスが仲良かったからいいけど)


◎名前さえ出てこなかった人
筋を分かりやすくするためか、はしょられた人も多数。
出てはきたけどアイアスなんて瞬殺されてたしな。
オデュッセウスとコンビを組むことの多いディオメデスとか、
ギリシア方のプリティーじじいネストールとか(まさか、
アガメムノンの隣にいた白髪の爺さんがネストールだったんだろうか)
小さいほうのアイアスとか。
そういや、アキレウスの父親のペレウスも死んだことにされてたな(おいおい)。
アイネイアスも、ローマの祖となる重要人物なのにチラッと出たっきりだし。

:原作を知っていたら:
別に原作を知らんでも普通に見れるけど、あんなに有名な話だし作り手は知ってること前提に作ってる気がします。
一応ちゃんと「イーリアス」をなぞってあるように感じました。
一騎打ちも
メネラオスVSパリス
アイアスVSヘクトール
パトロクロスVSヘクトール
アキレウスVSヘクトール
の順序でちゃんと出てくるし、
アンドロマケーとヘクトールと赤ちゃんの有名なシーンも出てくるし、
ヘクトールの死体を引き回すところとか
プリアモス王が引き取りに来るシーンとかもちゃんとあります。
(後者の二つは原作を知ってないとやや唐突という気がしないでもなかった…。)
知っているとにやりとできること請け合い。

いや、ほんとに、思っていたより良かったんだってば。
ヘクトールとオデュッセウスを見るためだけにまた行ってもいいな、と思いました。
はー、ショーン・ビーン、ファンになりそうじゃよ。

以上。…我ながらあんまりものを考えてない感想ですね〜…(アホ丸出し)

→感想(1)へ

HPへ

 

『トロイ・ザ・ウォーズ』感想(2)

2007年04月04日 | 映画

以下、見ている最中に殴り書いた心のつぶやき…(例によって私見と偏見に満ち満ちていること請け合い)

※ネタバレが含まれますので要注意!!

(アガメムノン登場時)
 …ん?この役者、どこかで見たことがあると思ったら、映画『ロック・ユー!』で主人公の恋のライバル役やってた人だわ!(アガメムノンの好感度急上昇!)

(テセウスに誘拐される前のヘレネーとポリュデウケースのシーン)
ポ「お前は男の怖さを知らない」
ヘ「お兄様も…?」
ポ「………」
 なぜそこで黙る、ポリュデウケース!!!!
 ……ま、まさ、まさか、こここれは禁断、かつ今流行の
『ぼくは妹に恋をする』…ってやつ…?(動揺)

(穿ちすぎなのかもしれませんが、だってやつの目は恋する男の目だったのですよ!)
(しかし、カストールはどうしたんだ)

(メネラオス登場時)
 メネラオスはいい人そうだなあ…(一安心)

(テセウス登場時)
 え?オデュッセウス?と思って、2回見直し、挙句、字幕をつけて確認してしまいました。テセウスだった。最初はただのスケベ親父かと思ったら、進むにつれ、意外と理性的な(ここ重要)いいやつだった。
ヘレネーのあの「指先に蜂蜜」攻撃に耐え抜くとは、
おぬしこそ天下無双のもののふよ…

(パリスとヘレネーが初めて互いの顔を見るシーン)
 …もうちょっと二人とも美形だったらもっと言う事ないのになあ…

(大人になったカッサンドラー登場シーン)
 『トロイ』の方では出てこなかったカッサンドラーの、狂気ッぷりに大喜びカッサンドラーはこうでないと。

(テセウスとポリュデウケースのシーン)
ええーー!!テセウス死ぬのーー!!!???ここで殺しちゃっていいんかい!!アテナイの国政はどうなる!!嫁が義理の息子に懸想する話は!?
 このような大胆な改変に驚愕する裏で、わたくしはポリュデウケース妹属性疑惑をますます深めておったのでございます…(あんた、やっぱり……)

(諸国の王たちの会合シーン)
 ここで、アキレウスショック第1弾。
 心の中では「お前、ほんとはアイアースのくせしやがって…」と繰り返し唱えておりました。絶対、アキレウスとアイアースという二人の登場人物をくっつけて一人にしてみたに違いないんよ!アメリカ人って、アメリカ人って…(いや、製作会社アメリカだったからさ) 

 次に、オデュッセウスについて。意外な事にいい人そうだったのでかなりびっくりしました。そう、思ったよりいい人そうだった!哲学者みたいでしたよ!!
並み居る男たちがいやらし〜い目でヘレネーを眺める中、一人涼しい顔で、ほら、君まで加わらない!とばかりにアガメムノンに「既婚者はわたし達だけだ、わたし達で仕切ろう」と釘を刺す辺り、賢人の風格さえ。
ただ、あのオデュッセウスじゃ放浪の10年間を生き延びれない気がします
…(7年もカリュプソーを満足させられるかどう(以下自粛))

(誰がヘレネーを娶るかを決めるため、王たちの指輪を集め、くじ引きをするシーン)
 あれは十中八九メネラオスの気持ちを察し、また王たちの中で唯一純粋にヘレネーを好きそうな彼にオデュッセウスが目こぼししたのだと思います。わざとメネラオスの指輪がツボに入るように投げたんよ。あの見るからに善人なオデュッセウスならそうする。

(メネラオスがパリスにスパルタの風習を話すくだり)
 …その、キツネに噛まれて死ぬエピソード、最近読んだ記憶があります…。てことは、アイリアノスか悲劇・哲学関連だからギリシアがポリス社会になってからのスパルタの話のはず。ほんとに時代考証あってんのかしら………

(パリスがヘレネーを連れてトロイアへ帰還し、プリアモス、ヘカベー、ヘクトール、カッサンドラーと会うシーン)
 未来が見えてしまうゆえに必死にパリスを押し止めようとするのに今回もまた聞き入れてもらえないカッサンドラー。
 結局ヘレネーの美貌に父と弟が幻惑されてんのを見たときのあの顔がもう、最高に素晴らしい
「ちっ、これだから男ってやつは…」という心の声を確かに聞きましたよ、カッサンドラーさん!

(ギリシア方の軍議シーン)
 わっはっは、なんで黒板!!

 

⇒トロイアに攻め入った辺りから急展開、一気に10年が経ったかと思えば、原作を形ばかりはなぞってた前半とうって変わってとんでもないことに…

(戦闘シーンを見て)
 兜や鎧の形、マントの付け方は『トロイ』の方とよく似ているなあ…

(獄中につながれてしまったカッサンドラーさんに)
 …ホント、この人どこを切っても、どの作品でも気の毒だなあ…。と思いました。その裏で、ぼんやり、「良く考えたら、トロイア戦争は10年続いたってことは、パリスとヘレネーは10年も夫婦生活してたんやなあ」と思い当たり、軽く衝撃を受けました。そら倦怠期もくるわ。10年も一緒におったんやからもう十分やろ。

(パリスとメネラオスの一騎打ち直後)
 メネラオス、いい奴だ〜〜〜!!!

(その後のパリスとヘクトールの会話)
 
ヘクトールもいい奴だ―〜-!!

(その直後の衝撃のヘクトールの最期)
 ま、待て!!
 待て待て待てい!!
 なんじゃそりゃーーーー!!!!!!
何度も言うようですが、本当に、このシーンはどうかと思いますよ。場面のよしあし以前に、掛け算を間違った生徒に「…あなた、ひょっとして足し算からして理解してないんじゃ…?」と尋ねたくなるような気持ちになりました。この監督、実はホメロスが嫌いなんじゃ…。
 ああいう処理の仕方だってアリなのかもしれないのですが……ああ、だめ、それでも杜撰過ぎると思ってしまいます。心の狭いわたしを許して!

(木馬のくだり)
 シノーンが「ギリシア人がアテナに奉じたもの」と説明するのですが、ここは『トロイ』の「帰りの航海の無事を祈ってポセイドンに捧げた」とする方が説得力があると思いました。なんといってもポセと馬はかかわりが深いので木馬を捧げることに無理が無い。ですが、「トロイアの城門をくぐらせないように大きく作った」という説明は秀逸だと思いました。これはうまい!

(プリアモスの最期)
 原作の、アキレウスへの懇願、両者の間に流れるあの美しいひとときなどさっぱり無視して、いきなり殺されるプリアモス。しかし、『トロイ』のときも今回もプリアモスを殺すのはアガメムノンなのですよね。一番トロイアに対する野心をもっている人物だから必然なのか。

(アガメムノンの最期)
 す、すげー…(圧倒)。
 しかし、それよりお恥ずかしながら不肖見習いの視線はアガメムノンの尻に釘付けでした…

(そして一番最後のメネラオスとヘレネーのシーン)
「貴方のことは愛せない」
ヘレネーからメネラオスにさらっと吐かれる止めのセリフ。
ひ、ひでえ!この女なんてひでえこと言いやがる(真っ青)!!!
まあ、「貴方について行く」と表明した事である種の和解は成立したんだろうけどさ。
それでも、メネラオスがヘレネーに抱いているのは明らかに恋心なんですよ?仕方ないとはいえ気の毒でした…

以上!お疲れ様でした!見たことのある方は是非とも、アキレウスとアガメムノンについての感想を教えてください。

ギリシア神話へ

HPへ

『トロイ・ザ・ウォーズ』感想(1)

2007年04月04日 | 映画

全体的に…

『トロイ』は公開時に見たのですが、今回こうして『トロイ・ザ・ウォーズ』の方と見比べてみて、なぜか”『トロイ』の方が『イーリアス』らしい”と感じてしまいました。設定等変更になった点が多々あるし、神々も出てこないのに…。
おそらく、『トロイ』の方が、全てを最初から最後まで描くのではなく、テーマを持ち、そのテーマにそってエピソードを効果的に配置する、という手法が多少なりともとられていると感じるからだろうと思います。また、『トロイ』が群像劇で、あえてアキレウス一人に絞らずにヘクトールやパリスなどの方にも重点を置いたのは、そのことによりアキレウスの放つ個性がより一層輝くからだと思うのです。物語そのものよりも、ストーリーを媒体にして、それぞれの登場人物の存在や内面を浮き上がらせるのが『トロイ』の描き方ではないかと。
 対して、『トロイ・ザ・ウォーズ』の方は、より話の筋そのものを表現する事に力が入れられているように感じました。原題の「HELENofTROY」のとおり、ヘレンという女を中心に、トロイア戦争の最初から最後までをざっと紹介する一作、というか。当時の観念や哲学などを画面で説明するのは大変なので現代風に分かりやすい解釈を加えつつ(トロイ侵攻の理由とか、パリスがヘレネーをかばう理由とか)簡単にまとめてみました、といった感じ。トロイア戦争関連について全く何も知らない人は、こちらを見たほうが全体を把握しやすいかも。(後半になるにつれ大幅にずれていくんだけど)


とまあ、かしこまった事はこのあたりにしておいて、まずわたしは声を大にして叫びたい

あのアキレウスはなんじゃーー!!!!!

(アキレウスの扱いに関しても、『トロイ』の方が『イーリアス』っぽい!イマイチ登場人物が全体的に精彩を欠く叙事詩の環にしたって、ここまでひどくないぞ!!)

初登場時、画面中央にぬっとあらわれたハゲを見て、あたしゃびっくりして目をむきましたよ!
事前に『スキンヘッド』という情報は得てましたが、それにしたってごつすぎる!
でも、この時点ではまだ「いくらハゲでもアキレウスらしく振舞ってくれるなら別にいい」と、割合寛大な心でおったのです。
しかーし!!物語が進むにつれ、目立つ粗野な言動!単なる野蛮人のようなものの考え方!!ヘクトールを殺すシーンにいたっては…(絶句)(本物ならあんな不意打ちでやるもんかー!)

お前、ホントはアイアースだろ?!製作のアメリカ人が名前間違ってるんだよな??怒らないから、正直に言ってごらん?

と、何度心の中でツッコんだ事か。
そりゃまあ、原作の方でだって結果的に残忍な振る舞いに及ぶこともあるアキレウスですが、あれは本人の理想と、正義感と、激しい気性に裏打ちされているのですよ!単なる血に飢えた人じゃないんじゃい!
それとも、『イーリアス』に史実があるなら、実はこんなだったんだよ?というコンセプトを目指して、わざと大幅に人物設定を変えてあるの??どうなんだ、コラアメリカ人!

…失礼、あまりのハゲマッチョのショックに少々取り乱してしまいましたが、ほんと、人の解釈は万別だなあ、としみじみ感じ入った映画でございました。

とはいえ、メネラオスやアガメムノンの造詣は面白かったの。

 メネラオスは『トロイ』より断然こちらの方が好意的に描かれてました。兄の影から逃れたいといつも思っている永遠の片思い男(気の毒に…)。でも、彼の愛は純粋だ。

 ヘレネーの造詣は、…『黒の李氷』シリーズで見た楊貴妃がこんな女だったな…などと思い出してしまいました。洋の東西を問わず傾国の美女というとそういうイメージなのかしら。本人の意識しない媚態に男どもが狂わされていく、というか。無邪気な娘だったヘレネーが愛を知り徐々に強くなっていくところなどはとてもよかった。

 パリスは、…アメリカ人の好きそうな主人公像だなーと…(それだけかい!)
 
 しかし!散々なことをいってきましたが、全てを帳消しにしてもいいくらい愁眉だったのが

アガメムノン

彼でございます!

…素敵だったわ…。

多分、この映画で俗に言うところの悪役に当たると人だと思うのですが、『トロイ』のようなただの悪い人でなく、ヘレネーに対する屈折した根深い欲望や、愛する娘を手にかけた自責の念など、(←思い切りそれって自業自得なんですが、それでも悲嘆の念は本物なのです。)心の揺れが良かった。
しかし自分の弱さを認めることの出来ないアガメムノン。自己を責めたらもうこの人の精神、土台から揺らいでしまうので、憎しみを周囲へと転嫁してしまうのですよね。
ヘレネーはその標的にされてしまったようなところがあって、パリスとヘレネーやパリスとメネラオスより、この二人の関係が一番こゆくてスリリングでした。

そして、妻のクリュタイムネストラー。最後の最後は圧巻でした。彼女の行動が初めて無理なくすんなり納得できた。これまでの”アイギストスと浮気して云々”は、イマイチ説得力に欠けていて、『あほな女やなあ』ほどの印象しかなかったのですが。
あの夫婦の最後の場面、物凄くどきどきしました…。
カッサンドラーとクリュタイムネストラーはこの映画における
精神的なギリギリ度上位ランキングのツートップでしょう。


お遊びで、以下、『イーリアス』の登場人物たちによる『トロイ・ザ・ウォーズ』の自分の役に対する感想。

メネラオス


アキレウス



パリス



オデュッセウス



ヘクトール



アテナとアポロン

 

以上。お目汚しはご容赦くださいませ。

ギリシア神話へ

HPへ