番組情報
【NHK-BS】プレミアムシアター
*ドキュメンタリー 「カルロス・クライバー:ロスト・トゥー・ザ・ワールド」(仮題)
*カルロス・クライバー指揮バイエルン国立管弦楽団日本公演1986[全曲版/標準画質]
*カルロス・クライバー指揮 バイエルン国立管弦楽団演奏会1996[ハイビジョン版]
~2011年4月2日(土)午後11時~午前3時
【NHK-BS】プレミアムシアター
*ドキュメンタリー「目的地なきシュプール:指揮者カルロス・クライバー~」(仮題)
*カルロス・クライバー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏会1991
*カルロス・クライバー指揮ウィーン・フィルハーモニーニューイヤーコンサート1992
~2011年4月9日(土)午後11時30分~午前3時30分
夢の音楽堂:小澤征爾が誘うオペラの世界
『カルロス・クライバーの“ばらの騎士”全曲』
放送局:NHK-BShi
放送日:2009年12月30日(水)
放送時間 :午前8時~午前11時30分(放送終了)
<mimifukuから一言>
今年(2009年)1月4日に放送された、
『夢の音楽堂・小澤征爾が誘うオペラの世界』の番組中、
ハイライトとなった『ばらの騎士』の再放送。
2004年に惜しくもこの世を去った伝説のカリスマ:カルロス・クライバー。
その彼が最も得意としたリヒャルト・シュトラウス作曲:楽劇『ばらの騎士』。
クライバーの最後の来日と公演となった1994年10月東京での舞台は、
オペラ・ファンにとって永遠に語り継がれる伝説の公演として知られます。
その公演の7ヶ月前に収録された日本公演とほぼ同じキャストによる、
ウィーンでのライヴ映像(1994年3月24日の上演)が、
今回再放送される『ばらの騎士』です。
クライバーによる『ばらの騎士』は2つの映像記録が残されています。
1つは、
1979年のバイエルン国立歌劇場との収録。
そしてもう1つが今回放送される、
19994年のウィーン国立歌劇場との収録。
2つの映像記録はオペラ映像史に燦然と輝く、
屈指の名演奏として称賛されています。
以前文章にした『カルロス・クライバー幻の来日公演!』の中で、
“カルロスは南米で多く使われる名前でドイツ人のクライバーがなぜ?”
“ドイツ名は、カール・クライバーとして1930年に生を受けるも1935年、
ナチスとの対立によって父エーリッヒ(指揮者)がアルゼンチンに移住。
その地で改名したのがカルロスの名前の由来。”
1950年頃までブエノスアイレスで生活をしたカルロスに染み付いた音楽は、
後の彼の音楽表現に強い影響を与えたと考えられます。
<中略>
クライバーは舞踏表現や官能表現に傑出した力を持っていますが、
陰鬱な表情を上手に表現できる指揮者ではないようです。
クライバーの解釈による「ベートーヴェンの第9番を聴いてみたい。」との、
個人的な希望を持っていましたがクライバーにはその気はなかったでしょう。
1楽章、2楽章は無難にこなせても(2楽章は情熱的だろう)、
3楽章の神秘や、4楽章の荘厳~歓喜~熱狂をクライバーが指揮した場合、
神の啓示として崇められているフルトヴェングラー(バイロイト祝祭管弦楽団)と、
比較されることは自己にカリスマ性を求めたとされるクライバーの誇りを、
保つことはできないと感じます。
<中略>
しかし残されたクライバーの音源及び映像の多くが、
“いずれも稀に見る傑作”であることに疑う余地はなく、
特異な名指揮者としての価値が失われることはないでしょう。
できれば、『メリー・ウィドウ』、『ウィーンかたぎ』等の喜歌劇や、
幾多のバレエ音楽を多く残して欲しかったと思いました。
以上は私で書いた文書ながら気に入っています。
クライバーが指揮する躍動や妖艶のルーツとして考えられるアルゼンチンの音楽。
アルゼンチンでの生活環境がクライバーの音楽表現に与えた影響とは?
そんなことを考えるとクライバーの選択した音楽との一致を感じ面白く思います。
調べてみると、
1930年:ドイツ・ベルリンで生まれる。
1935年:父エンリヒ・クライバーはナチスとの対立を深めドイツを脱出(亡命)。
1940年:アルゼンチン・ブエノスアイレスを定住の場と決める。
1948年:スイス・チューリッヒのスイス連邦工科大学に入学。
1950年:音楽の志(こころざし)強くアルゼンチンに帰国し音楽を学ぶ。
1952年:ブエノスアイレスのラ・ブラータ劇場でデビュー。
~デビューには諸説あり一般的には1954年:ポツダムが知られる。
感情多感な5歳~22歳までの殆どの時期をアルゼンチンで過ごすと同時に、
この時代のアルゼンチンを代表する人物が、
“エビータ”ことマリア・エバ・ドゥアルテ・デ・ペロン。
カルロスがアルゼンチンでデビューした1952年。
“エビータ”はブエノスアイレスの地で33歳の若さで亡くなっています。
ポップ・オブ・クィーン:マドンナが主演した映画『エビータ』の時代。
劇団四季のミュージカルとしても人気が高い『エビータ』の時代こそ、
カルロス・クライバーの多感な少年~青春期を過ごした時代であり、
自ずとクライバーが聴いていたであろう音楽が想像できます。
クライバーが得意とした音楽に偏りがあることは余りに知られています。
録音(録画)として正規に残されたオペラ作品は、
・リヒャルト・シュトラウス作曲:『ばらの騎士』(映像のみ)
・ヨハン・シュトラウス作曲:『こうもり』(映像と音声)
・ワーグナー作曲:『トリスタンとイゾルデ』(音声のみ)
・ビゼー作曲:『カルメン』(映像のみ=クライバーの死後発表)
・ベルディ作曲:『椿姫』(音声のみ)
・ウェーバー作曲:『魔弾の射手』(音声のみ)
『魔弾の射手』『こうもり』には異論がありましょうが何れも、
激しい男女の恋愛が描かれる作品が目に付きます。
~『ボエーム』や『オテロ』なども得意とし日本公演も実現されています。
さらにオッフェンバッハ、レハール等の喜歌劇の公演記録が残されますし、
2度のニュー・イヤーコンサートは歴史に残る名演として映像・音声があります。
残されたクライバーの得意演目を調べてみると、
躍動(舞踏)や妖艶(感情表現)さらに陽気(明るさ)な作品が多く、
クライバーの育ったアルゼンチンの環境との符合が見られます。
西洋の上品とされる舞踏(ワルツやポルカ)と南米の官能と激情の舞踏。
その異なった舞踏音楽の融合がクライバーの音楽表現であると仮定し、
クライバーを論じることに誤りはないのではないか?
そんなことを感じます。
下品ともとられがちな南米音楽の官能表現を上品に演じる最適なパートナー。
クライバーのオーケストラ選択は機能性でなく艶のある音造り。
ウィーン・フィルを好みベルリン・フィルを拒んだ理由も分かるような気がします。
今回放送される『ばらの騎士』は官能音楽の極致。
第一幕冒頭の激しい管弦楽は男女の営みを描写した音楽として知られ、
その後のベッドの中での囁きから舞台は幕が開きます。
~下世話な話ですが、
男女の営みをテーマにした曲としてはスクリャーピンの『法悦の詩』が有名。
R・シュトラウスの家庭交響曲でも夫婦の営みが表現描写されています。
この舞台映像を観る時オペラ作品としての楽しみ方とは別に、
ウィーン・フィルが奏でる前例のない妖艶な響きをもお楽しみください。
耳を澄ませばクライバーが持つ南米の情念が聴こえるはず?(笑)
偏見を含め違った見方でクラシックを楽しむのも一考です。
また、
歌劇『ばらの騎士』は元帥夫人を中心に鑑賞することが多いのですが、
オクタヴィアンとゾフィーの恋愛感情の高まりに着目する方が解り易く、
クライバー&ウィーン・フィル版は視点を変えた鑑賞がお薦めです。
クライバーの情報として、
今年9月に『カルロス・クライバー/ある天才指揮者の伝記:上巻』が出版され、
同じく9月のデアゴスティーニから歌劇:『カルメン』が990円の廉価盤で登場。
さらに、
来年の1月4日(地方5日)にはデアゴスティーニ・オペラコレクション、
第10巻として喜歌劇:『こうもり』が1990円で発売されます。
番組をご覧になられクライバーに興味を持たれた方は、
ぜひチェックしてみてください。
<関連記事>
夢の音楽堂 :『小澤征爾がいざなうオペラの世界』 ~番組情報。
→ http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/3561e06c6cde531e70e76e5a7c19140b
*ETV50:カルロス・クライバー幻の来日公演映像(1986) 放送!
→ http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/4cc9bda45027a956a24e809649ecafbd
~以下NHKホームページより記事転載。
歌劇:『ばらの騎士』全曲(リヒャルト・シュトラウス作曲)
オクタヴィアン:アンネ・ソフィー・フォン・オッター(Ms)
ゾフィー:バーバラ・ボニー(S)
元帥夫人:フェリシティ・ロット(S)
オックス男爵:クルト・モル(Bs)
ファニナル:ゴットフリート・ホーニク(Bs)
他
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン国立歌劇場管弦楽団
指揮:カルロス・クライバー
美術:ルドルフ・ハインリヒ
衣装:エルニ・クニーペルト
演出:オットー・シェンク
~ 収録:1994年/オーストリア・ウィーン国立歌劇場で録画 ~
*クライバーの1994年:日本公演についてのブログ記事リンク先。
→ http://www003.upp.so-net.ne.jp/orch/page153.html