mimi-fuku通信

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【NHK/Eテレ・らららクラシック】:ギュンター・ヴァントのベートーヴェンを聴く。

2012-06-07 22:57:00 | クラシック・吹奏楽

2012年3月に終了したN響アワー。
後続番組として登場した〝ららら♪クラシック〟
クラシックに造詣の深い諸氏には???のタイトル。
それにしても地上波NHKの、
クラシック番組の質の低下に呆れる思い。
懐かしむは教育テレビで放送されていた、
『芸術劇場』の番組としての質の高さ。
*ナビゲート番組~本編(全曲放送)への流れ。
芸術劇場の放送再開を切に希望する。


美術や音楽をバラエティ色豊かに多くの人に見て欲しいとの制作者の思いも、
どこか本質から遠く離れ私の目には“滑稽に見える”は言い過ぎだろうか?

その〝ららら♪クラシック〟にも、
ようやくの“お宝映像”が登場。

クラシック・ファンにとって、
知る人ぞ知る巨匠!
ギュンター・ヴァントである。

放送日(Eテレ=教育)は、
2012年6月10日(日曜日)午後9時~午後10時。
演奏される曲目は、
ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調OP67『運命』
~1982年(来日公演):NHK交響楽団とのライブ録画~
は、
日本の音楽評論が掌(てのひら)を返す前の貴重な映像。
*他にモーツァルトの小品を放送。

mimi-fuku通信ではギュンター・ヴァント氏について、
過去に強い調子での批判めいた文書を文字にした。

ヴァントの音楽表現(ベルリン・フィルとのライブ映像=第9番)は、

予想通りに私の耳には届かなかった。
いくつかのヴァントのブルックナーをCD(withベルリン)で聴いているが、
際立って特筆(突出した)すべき演奏ではないように思う。
*ヴァントの演奏も決して悪くはないが借り物のオケで何が他よりも秀でているのか?
指揮者の素養として一番重要とされるオケを育てる能力に私は疑問を持っている。

ブルックナーをつまらなくしたのは音楽評論の責任も重い。
ブルックナーの演奏はこうでなければならないと言う一部の評論が、
カラヤンを否定し、ベームを否定し、朝比奈やヴァントを神に仕立てた。
また、
楽譜の版に拘る余り演奏や表現を超えて版(原典版や改訂版)に論評が執着。
改訂版は聴くに値しないとの不可思議な論法は聴き手に偏狭なイメージを与えた。

以前に文字にした私の所感に大きな変化はない。
かと言って、
ヴァントの演奏表現が嫌いかと言えば決してそうではなく、
今年に入って購入したBOXの内容に非常に満足している。
*批判の対象はヴァントではなく日本の音楽批評についての苦言。

Great Recordings
〔Import from US〕

ギュンター・ヴァント
ケルン放送交響楽団
北ドイツ放送交響楽団
RCA Red

ヴァントが日本の音楽評論で絶賛される前の1970~1980年代の演奏集。
CD・BOX(28CD.1DVD)の内容は、
ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーの新ドイツ3大B?の交響曲全集。
*他にシューベルトの全集やモーツァルト、シューマン、チャイコフスキー等を収録。
ヴァントの演奏はインテンポ(譜面に正確)と言われるが〝どうしてどうして〟
ブラームスの交響曲全集(旧盤・北ドイツ)などは面白い表現が随所に楽しめる。

評判のブルックナー(ケルン盤)についても堂々とした金管の響きは頼もしく、
ドイツ古典音楽のプロフェッショナルとしての評価は辛口の私もお墨付き。
ただし、
緩徐楽章(ゆったりとしたテンポ)の歌は男性的で“癒し”を求める方には不向き。
*ヴァントの演奏表現はレガートな弦の響きは少なく全般に癒しには向かない。

カラヤンの壮麗やクライバーの妖艶な演奏が好みの方(私を含め)にとって、
ヴェントの演奏は堅苦しく近付き難い威厳(厳格な音づくり)を示すものも多い。
*そのためアンチ・カラヤン論者にはヴァントを神に仕立てる必要があった。

 Bruckner:Sinfonien
 No4.5.7.8.9
 ギュンター・ヴァント
 ベルリン・フィルハーモニー
 〔ライブ・レコーディング〕
 RCA

私が過去に際立って特筆すべき演奏ではないと表現したのは、
評価が誇大化していった“ベルリン・フィルとのブルックナー・チクルス”であり、
ケルン放送交響楽団とのブルックナーは全集(1~9番)として筆頭に推薦できる。
*ただし個別楽曲の推薦ならばまったく別の答えを用意するが…。
その理由からも、
ヴェントを正当に評価すべきは手塩にかけた手兵のオケであると感じる。
*1990年代のベルリン・フィルはカラヤン&アバドが育てた世界一のオケ。
そのオーケストラでの共演にヴァントの真実(要求)がどこまで浸透しているのか?
勿論立派な演奏に変わりないがその評価にはベルリン・フィルの力量も大きい。

それよりも私がお勧めしたいのは、
カラヤン、ベーム、ジュリーニ、シューリヒトが演奏するウィーン・フィルとの共演。
さらに評判の悪い改訂版(論者にとっては聴くに値しないとの暴言)ながら、
クナッパーツブッシュ(ウィーン・フィル)の5番は聴けば無性な面白さを見つける。

私はブルックナーの響きは硬質なベルリンの音よりも柔和なウィーンの音が好みだ。

『ららら♪クラシック』紹介される,
“ヴァントのベートーヴェン!”
例えば、
フルトヴェングラーのベートーヴェン演奏を、
“マイナス(録音・自己主張)も多いがプラス(ドラマ)も多い”
と表現するなら、
ヴァントのベートーヴェン演奏は、
“マイナスは少ないがプラスも見つけ難い”
と文字にすれば語弊があるだろうか?
*ヴァントのベートーヴェン全集を規範(鑑賞の基準)にすることに躊躇いはない。
特に入門編として過去の大家(古い録音)を聴くならヴァントからの鑑賞を薦める。
それはヴァントに限らずハイティンクでもアバドでもカラヤンでも構わない。
1970年以後のステレオ録音の全集を聴いてからの大家(SP時代)への挑戦。
大家の時代(戦前、戦時、戦後約15年)の音楽表現の豊かさに驚くことだろう。


*****

私の個人的な感想(好み)よりも、
先ずはヴァントの実演(放送)を鑑賞。
*オケは国内最強の誉れ高いN響。

1990年代に入り、
突然として音楽批評の力によって、
“神に仕立てられた老巨匠”
の確かな音楽表現は、
生誕100年を記念した特別番組。

NHKの番組紹介欄にも、
『20世紀最後の巨匠』
『大器晩成の巨匠』
“巨匠”を強調。

世間の評価に惑わされず、
貴方の耳で、
“伝統のベートーヴェンの響きを聴け!”

さて、
貴方の評価はいかに?

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1 コメント

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mimifuku (衣笠十字路さんへ)
2013-08-11 20:20:38
コメントありがとうございます。
NHKの番組がTBSに?
タイトルを変えずに移行する?
放送局のメリットはどこに?
不思議でなりません。

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