*国宝『燕子花図屏風』は2009年秋にオープンした東京:青山の、
根津美術館で毎年5月の大型連休頃に展示されます。
詳しくは根津美術館でお確かめください。
*文中下段に図版画像のリンク先を表示しました。
文書の内容と同時に画像をご確認くだされば幸いです。
尾形光琳生誕350周年記念
特別展「大琳派展〜継承と変奏〜」(終了)
平成館 2008年10月7日(火)〜11月16日(日)
<展示された作品。>
国宝『燕子花図屏風』 尾形光琳筆:東京・根津美術館蔵 10/7〜10/19
『八橋図屏風』 酒井抱一筆:東京・出光美術館蔵 10/21〜 11/16
『燕子花図屏風』 酒井抱一筆:東京・出光美術館蔵 10/21〜11/16
『波図屏風』 尾形光琳筆:米国・メトロポリタン美術館蔵 10/7〜11/16
国宝『八橋蒔絵螺鈿硯箱』 尾形光琳作:東京国立博物館蔵 10/7〜11/16
『八橋図屏風』:米国・メトロポリタン美術館蔵の複製(別室展示)
<mimifukuから、一言。>
東京国立博物館の特別展では、時としてサプライズな出品があります。
明日、10月7日から始まる「大琳派展」の中での一番の目玉作品は、
この尾形光琳の『燕子花(かきつばた)図屏風』ではないでしょうか?
この作品は尾形光琳の作品の中でも、
『紅白梅図屏風』(MOA美術館蔵)と並ぶ最高傑作として、
広く世に認められた作品で琳派の持つ色彩美と構成美が見事に調和した、
稀有の作品として知られています。
所蔵先は東京青山の根津美術館であり、
この美術館は茶道具の根津青山として著名な根津嘉一郎氏が蒐集した、
古美術を中心に幅広い日本美術の傑作を有していますし、
茶陶等の中国美術にも優れた作品があります。
その中でも、
『燕子花図屏風』は当美術館作品中でも『那智滝図』と並ぶ白眉な逸品で、
門外不出の作品として毎年GW前後の10日間位しか展示されず、
美術愛好家の中でも取分け憧れの作品のひとつと言えるでしょう。
根津美術館は平成18年5月8日より改築工事のため休館しており、
次期オープンは平成21年10月頃の予定です。
そうした理由からこの『燕子花図屏風』の展示が門外である東京国立博物館で、
実現したのではないかと感じます。
この作品と類似した題材を扱う光琳の、
『八橋図屏風』をアメリカのメトロポリタン美術館が所蔵しているのですが、
残念ながら今回は来日せずその代わりメトロポリタン美術館からは、
尾形光琳作『波図屏風』(波濤ーはとうー図屏風)が全会期で展示の予定です。
<追記:10月20日>
展覧会場の平成館→本館への通路の展示室にメトロポリタン所蔵の、
『八橋図屏風』の複製(キャノンが制作:京都市奉納)が展示されています。
(図版下記参照)
また東京丸の内(皇居前)の出光美術館から、
酒井抱一作『燕子花図屏風』 の出品が予定されていますが、
この美術館はメトロポリタン美術館が所蔵する光琳の『八橋図屏風』と、
ほぼ同じ構図の『八橋図屏風』を所蔵しているのですが、
今回展示される『燕子花図屏風』が、この作品をさすのか注目されます。
<追記:10月20日>
この既述には誤りがあり出光美術館の『八橋図屏風』も同時公開されています。
酒井抱一作『燕子花図屏風』は蜻蛉が画中に描かれた珍しい作品です。
(図版下記参照)
琳派の優品は海外の美術館への流出も多く、
特にフリア美術館には宗達の『松島図屏風』などがあるのですが、
この作品も所蔵者の遺言として「一切の貸し出しを禁ず。」の命を受けており、
来日することは不可能な状況です。
また漆器の名品として誉れの高い、
『八橋蒔絵螺鈿硯箱』も同時に展示されますので、
光琳のデザイナーとしての力量を知る機会として重ねてご覧ください。
<mimifukuの見方。>
10月16日の木曜日に観覧してきました。
国宝『燕子花図屏風』 尾形光琳筆については、
1998年ごろの根津美術館で見て以来の対面だったように記憶します。
根津美術館では、
丸山応挙筆の『藤花図屏風』などと並べれ初夏の気分を味わいました。
今回久しぶりの対面をして幾つかの事に気が付きました。
まず右隻(うせき)と左隻(させき)の色の違い。
これは保存状態の違いからだと思いますが、
右隻に対して左隻は全体にくすんでいること。
この屏風は数年かけて修理されたとの事ですが、
根津美術館で拝見した時には気が付きませんでしたし、
前回見た時とは大きな印象の違いがありました。
今回拝見させていただき、
一見すると単調に写りがちなこの絵の凄さを考えてみました。
教科書どおりに説明すると、
“延べ6メートルを越える大画面に金地と群青と緑の三色だけで描き、
燕子花の群生を際立たせている。”
さらに、
“100を超える燕子花の花はいくつかの場所で反復しており、
これは宗達が料紙などに頻繁に使用された版木の重ね刷りの技術や、
染色の技術が使用されている。”
と書くべきでしょうか?
また、この絵画の発展性の最たる所は、デザイン性の向上でしょう。
現代デザインは強調や分かりやすさが求められます。
細かい描写ではなく見た目の実存のイメージを如何に簡略化して表現するか?
絵画の描写力の持つ説明性を排除し単調に表現することで強い印象を与える。
光琳が携わった工芸の技術が持つ絵画の簡略性の実験を大画面に表すことで、
遠くから見てもすぐにそれと分かる<燕子花の群生>は、
現代の大画面ポスターの感覚に近いのではないか?
そのように感じます。
絵画として素晴らしい所は濃淡で表された群青の色づかいのバランス。
時折、下草部分に見られる緑の葉の擦れ表現は、
絵の奥行きや水辺を感じ取ることができ単調な中にも、
鑑賞すべき多くの心遣いが見て取れます。
また、
構図の素晴らしさは比類なき構成を持ち光琳芸術の象徴たる、
デザイン性の高さを感じ取ることができます。
10月19日の日曜美術館の放送中、
光琳筆の国宝『紅白梅図屏風』は、
宗達筆の国宝『風神雷神図屏風』との共通点が多い。
との指摘がありましたが、
実はこの国宝『燕子花図屏風』も同じ共通点があると以前から感じていました。
まず、
『風神雷神図屏風』左隻(雷神)の雲の角度と、
『燕子花図屏風』の左隻の斜めに表現される燕子花の群生の角度の共通点。
同じく、
『風神雷神図屏風』の右隻(風神)の雲の表現が横方向に表されるように、
『燕子花図屏風』も花の上部の位置がほぼ水平に横方向に描かれていること。
偶然なのかも知れませんがそんな風に見ていくと、
<琳派が持つ構成>の共通点は先人の作品を学習している内に、
自然と身に付いたものなのかな?
などと感じました。
この作品は既に展示期間が終了しており、
次回出会えるのは根津美術館の開館記念展だと思いますが、
興味のある方は、ぜひ記憶に留めて置いてください。
<文中関連図版の紹介>
国宝『燕子花図屏風』(かきつばたずびょうぶ)図版。
http://www.nezu-muse.or.jp/jp/collection/detail.php?id=10301
『八ツ橋図屏風』酒井抱一筆:出光美術館蔵
http://www.idemitsu.co.jp/museum/collection/introduction/rimpa.html
『八橋図屏風』尾形光琳筆:メトロポリタン美術館所蔵
〜画像:文化財未来継承プロジェクト/キヤノン〜
http://web.canon.jp/event/culture/archives2008.html
『紅白梅図屏風』尾形光琳筆:MOA美術館蔵。
http://www.moaart.or.jp/japanese/art/print0006.html
<メトロポリタン美術館の所蔵作品:ホームページ内>
『八橋図屏風』 尾形光琳筆:メトロポリタン美術館蔵。
http://www.metmuseum.org/toah/ho/09/eaj/ho_53.7.1-2.htm
『波(波濤)図屏風』 尾形光琳筆:メトロポリタン美術館蔵。
http://www.metmuseum.org/TOAH/hd/rinp/ho_26.117.htm
<ブログ内の関連記事>
*国宝「風神雷神図屏風」公開/宗達・光琳・抱一・其一の4作品。
http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/d/20081004
<大琳派展−継承と変奏−:ホーム・ページ>
http://www.rinpa2008.jp/









