映画:『マイケル・ジャクソン:THIS IS IT』。
11月13日までの2週間限定上映の予定が、
11月27日までの2週間の期限延長。
ようやく映画『THIS IS IT』を観た。
今年の6月に急逝したマイケル・ジャクソン。
彼が最後のコンサートと銘打って翌7月に開催が決定していた、
ロンドン(英国):O2アリーナでの50回にも及ぶコンサート。
2007年にリニューアルされた2万人余りの収容数を誇る、
O2アリーナでのコンサートが実現していれば、
100万人を超えるファンが今のマイケルを体感できたはず。
そのコンサート・チケットも数時間で完売。
マイケルの死を報道で知った当日に湧いた私の疑問が、
・コンサート・メニューは何処まで進んでいたのか?
・コンサートの延期も囁かれていただけに実現は可能だったのか?
・もしかしたらコンサート前に自らの限界を感じ死を選んだのではないか?
その疑問を完全に払拭させてくれた今回の映画。
映画は、ロンドン:O2アリーナでのコンサートに向け、
ロサンゼルス:ステープルズ・センターで行われたリハーサルを完全密着。
~ステープルズ・センターはマイケルの追悼式の会場。
なんの予備知識も持たず映画を観た。
映画を見る前は、
ドキュメンタリータッチの映画なのだろうと思っていた。
しかし上演された映画は、
ほぼ完成状態に近いまでに練り込まれたリハーサルの全貌。
マイケル自身が許可し記録された映像は延べ数百時間余り。
約1時間50分に編集された記録映像は、
コンサートそのものを観ているような錯覚すら覚えた。
~大会場コンサートでは殆どの時間が画面鑑賞になるしね。
現代社会のコンサートは、
*約100~1000人収容のライブハウス・コンサート。
*約800~4000人収容のホール・コンサート。
*約8000~23000人収容のアリーナ・コンサート。
*約35000人以上を収容するスタジアム(ドーム)コンサートに分かれる。
マイケル・クラスになるとスタジアム・コンサートでの世界ツァーが主流なのだが、
50回公演が予定されていたO2アリーナでの単独コンサートの形態は異例。
その意味が映画を観て理解できた。
1曲ごとにドラマ付けられた舞台進行は、
常設ミュージカル・ホールをイメージさせる。
セリーヌ・ディオンが延べ約300万人の観客動員を記録した、
アメリカ・ラスベガスでのア・ニューディ・コンサート。
照明、舞台装置等の設定が移動するコストを考えれば、
常設舞台を建設した方が効率的との観点から計画されている。
マイケル自身がイメージした今回のアリーナ・コンサートも
常設会場(舞台)でなければ絶対不可能な多彩な仕掛けを準備し、
世界がまだ見ぬ究極のエンターテインメントを追求している。
曲ごとにファンがイメージを抱くマイケルの楽曲の数々。
そのイメージの多くがマイケルが過去に作ったショート・フィルムの映像。
劇中のマイケルが語った言葉。
「ファンは日常を忘れるためにコンサート会場に足を運ぶ。」
「ファンがイメージするモノを(ステージで)再現しなくちゃいけない。」
「今だ誰も成し得なかった未来(未知の体験)をファンに提供しよう。」
さらにコンサート前にファンの前に姿を現したマイケルの予告は、
「君達が聴きたい歌はすべてやるよ。楽しみに待ってて!」
マイケルの言葉に嘘、偽りはなかった。
*ハンフリー・ボガード(三つ数えろ)との共演に驚かされた『スムース・クリミナル』。
*ジミヘンのパフォーマンスを意識した?『ビート・イット』のラストの焚き火。
*ダンサー達が息を潜めて注目したであろう『ビリージーン』のステップ捌き。
*フィルム・イメージが強すぎる『スリラー』の新バージョンと空飛ぶ仕掛け。
*合成画面がコンサート会場でどのようにリンクするのか興味深い、
『ゼイ・ドント・ケア・アバウト・アス』。
*デュエットの際に“本気で歌いたくなっただろ?”とスタッフに冷かされた、
『アイ・ジャスト・キャント・ストップ・ラビィング・ユー』。
さらに,
*美しい映像と大掛かりな仕掛けで環境問題を問う『アース・ソング』。
またリハーサル風景で目に付いた、
女性ギタリスト:オリアンティ・パナガリスへの適切なアドバイスや、
マイケルとのデュエットの夢が叶った、
日系女性コーラス:ジュディス・ヒルの存在。
さらに、
映画冒頭の熾烈なダンス・オーディションの映像と、
ダンサー達が口々に語るマイケル賛歌など見所満載。
マイケルはギター・サウンドが好きなようで、
『ビート・イット』でのエディ・ヴァン・ヘイレンの起用は、
ダンス・ビートに大幅な膨らみを与えた事実は見逃せない。
残された映像で見ることのできる<DVD:ライブ・イン・ブカレスト>では、
女性ギタリストの第一人者:ジェニファー・バトゥンを起用。
NHK-BShiで2回放送された2001年の<30周年記念ライブ>では、
ガンズ&ローゼズのスラッシュを起用。
ギタリスト:オリアンティ・パナガリスはオーストラリア出身の24歳。
オーストラリアと言えばジェフ・ベックと共演し日本でも多くのファンを得ている、
ベーシスト:タル・ウィルケンフェルドをも輩出している。
無名の若手奏者を登用することで機会(チャンス)を与えるマイケルの姿勢。
「ここは君が主役なんだ、もっと主張しなくっちゃ。」との趣旨の言葉と、
オリアンティにエキサイティングなハイトーン・フレーズを矢継ぎ早に要求する、
マイケルのアイディアには脱帽。
また、
キーボード奏者に自分が持つイメージを何度も伝えるシーンなどを見ても、
サウンドを創作するのはマイケル自身なのだということを改めて確認。
マイケルは、
幼い頃から係わりを持ったエンターテインメントの世界を心底熟知しており、
音楽、ダンス、演出、映像など多岐に渡ってスタッフに指示を出す場面に、
なんと惜しい才能を失ってしまったのかを実感した。
特に、
『アース・ソング』のラストに要求した静寂と機械音は的(まと)を得ており、
瞬時にアイディアをスタッフに告げながら変更していく場面での存在感の大きさは、
長く続くリハーサルの中でスタッフからの信頼を勝ち得るに充分な人物だと感心。
その才能に溜息をつくしか私達凡人には手が残されていない。
マイケルのダンスに往年の激しさを求めるのは無理だとしても、
永くコンサートから遠ざかっていたマイケルが毎日・毎夜レッスンに励んだことは、
映像を見れば明白なことは誰もが感じることだろう。
20世紀最高のエレガンス・ダンサー:フレッド・アステアが、
「マイケルのダンスには怒りが感じられる」と語ったと伝え聞く。
しかし映画の中で披露されたマイケルのダンス&ステップには、
しなやかさが加味され怒りを感じることはなかった。
1980年代のマイケルのダンスは確かに鋭さが攻撃的に感じられる部分も多く、
別な形で発展していくブレイク・ダンスなどの危険な試技への挑戦とも相まって、
マイケルのスタイルがダンスの世界に怒りを導入したことは事実なのだろう。
優雅さを誇ったフレッド・アステアのダンス・スタイルは、
ジーンケリーのスポーティ(活動的)なダンスに進化し、
マイケル・ジャクソンはシャープ(鋭角的)さを導入。
ヨーロッパの伝統的ダンスは時代と共に世界の民族ダンスと融合され、
さらにサーカスなどのアクロバットや体操競技等の演技が加味され、
近年驚くような進化をとげている。
コンサート・リハーサルで魅せるマイケルが披露した、
数々のステップや足さばきはマイケルの年齢を忘れさせるほど見事。
バック・ダンサーに見られる瞬間的なテクニックはマイケルの時代を超えるが、
2時間を超える時間を1人の演者(エンターティナー)が観衆を退屈させずに、
魅せる技術を持つものは誰一人いないだろう。
話は尽きない。
1本の映画が持つ情報量。
僅か2時間足らずの内に感じる膨大な感想(レビュー)。
没頭した2時間はあっという間の2時間だった。
当ブログでも何度も記述している、
<30周年記念コンサートと翌日の9.11テロ>の因果。
果たして個人的なゴシップ報道の数々。
そして、
下世話で興味本位な世間話が偉大な才能を潰した事実。
返す返すも残念で仕方がない。
世界を代表する“エンターテインメントの王様”は、
死してその証明を世界に示した遅すぎた真実。
・コンサート・メニューは何処まで進んでいたのか?
・コンサートの延期も囁かれていただけに実現は可能だったのか?
・もしかしたらコンサート前に自らの限界を感じ死を選んだのではないか?
その答えが映画『THIS IS IT』の中にある。
・コンサート・メニューはマイケルの創造力の中で昇華していた。
・完璧主義者のマイケルにとって延期はあったかも知れない。
しかし決して中止されることはなかった。
・コンサート前のマイケルは明日への希望に満ちていた。
それは、
・ファンは日常を忘れるためにコンサート会場に足を運ぶ。
・ファンがイメージするモノを再現しなくちゃいけない。
・今だ誰も成し得なかった未来をファンに提供しよう。
・君達が聴きたい歌はすべてやるよ。楽しみに待ってて!
マイケルが、
もう半年も長生きしてくれていれば、
世界のコンサートの歴史は変わっていた。
映像を見て私はそう確信する。
効率的で上質な同一会場でのロングラン・コンサートの確立。
コンサートを求め人々は会場へと旅をする。
それは豊かな時代の象徴として人々の記憶に残る。
マイケルが望んだ貧困に喘ぐ人々への救済は、
平和で豊かな世界を目標に成り立つのだろう。
豊かさの模索と自然との調和(環境保護)。
マイケルが劇中語った最後のチャンス=THIS IS IT。
~今後の4年間の活動が環境破壊を喰い止める最後のチャンスなんだ。
マイケルの等身大の真実が映画『THIS IS IT』の中にある。
大きな画面に映るマイケルの姿に出会えてよかった。
ありがとうございます。
<ブログ内:関連記事>
*マイケル・ジャクソン:デビュー30周年コンサート。
→ http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/d/20091001
*『NHK SONGS:マイケル・ジャクソン特集』番組詳細&再放送。
→ http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/e34b5453f2fff0cc4676b9a8a7b8a535
*『マイケル・ジャクソン特集』BS朝日:ベストヒットUSA番組情報。
→ http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/f2a01f6048c56f4f248bf01bbd7f244e