上巻からのつづき。
質問:お二人の成功に影響を与えたことと、何か習慣にしようとしたことはありますか?
ゲイツ:
「大学時代には、土壇場にならないと何も取り掛かる事はありませんでした。
友人に
<勉強なんかしなくても僕はできるんだ。>ってカッコつけたかったんですね。
誰もが経験していると思いますが、普段は勉強しない振りをして、2~3日前になって必至にやるんです。
当時は、スケジュールを組んで毎日勉強している学生に違和感を覚えていました。
でも、社会では土壇場は通用しないのです。
社会に出ると目の前の仕事を次から次へと処理していかないと追いつかないですからね。
仕事とは、毎日々々の積み重ねです。
さらに、自分に課せられたノルマや、契約期日の厳守などは、ビジネスの大原則です。
それを守れない社会人は、誰からも相手にされなくなります。
社会に出たら、スケジュールを守らなければやっていけません。
仕事の先送りは、良い習慣ではないのです。」
バフェット:
「大事なのことは、自分にとってヒーローと呼べる人物を持つことです。
つまり、自分にとっての手本であり、目標となるべき人物のことです。
自分が今後、どのようなビジョンを立てて歩むべきかに疑問を感じた時に、決断すべき方向性を、その人物を通して考ることができるます。
あの人なら、この緊急事態をどのように乗り切るだろう?
あの人なら、この場合どのような決断を下すだろう?
と自分に問いかける時に、自分の中で、ヒーローと呼べる第三者が居れば、彼に相談することができるのです。
自分の中にもう一人の自分を持つ。
そのことで、自分を見つめ、冷静な判断を持つことができるものです。
2点アドバイスをします。
1つ目は、
私は、できる限り自分に対して投資をします。
つまり、あらゆることを自分に採り入れ、経験させることが重要なのです。
そして、行動することを恐れず、自分を磨き上げることです。
自分に投資することに、時間やお金を惜しんではなりません。
自分こそが最大の財産ですからね。
皆さんはこの国で生まれて高い教育を受けています。
でも、ほとんどの方は
<自分の持つ可能性のほんの一部しか使わず>
人生を送っています。
<自分にこそ、投資をしてください。>
誰もが大きな可能性を秘めているのですから。
そして、もう1つは、
なんでもいいから
<自分が夢中になれるものを見つけてください。>
私の幸運は、若い時にそれを見つけることができたことです。
ただ、単にお金のためだけに仕事をしたくはないでしょう。
自分にとって、快く思わない仕事をしたくはないでしょう。
毎朝、仕事に出かける時は、ワクワクしていたいでしょう。
私は尊敬するベン・グレアムの会社に入社した時、給料がいくらかを聞きませんでした。
私にとって正しいことは、
<その会社で働くことだ。>
と私は、理解していたからです。」
(ベンジャミン・グレアム:1894年5月8日生まれ~1976年9月21日没は、アメリカの著名な経済学者。また、実際にも自己の投資に対する理論を実践し投資家としても優れていた。著書に『賢明なる投資家』がある。)
質問:これまでの最悪の投資は何ですか?
バフェット:
「ひどい投資は何度かしましたが私は別に困ったりはしません。
株主は困るでしょうがね(笑)。
投資の判断を誤らないことは不可能です。
失敗(ミス)が拡大しないよう努力はしますけどね。
でも、失敗したからと言って、くよくよすることは、馬鹿げています。
私の最大の失敗は、実は表にでません。
それは、投資すべきなのに投資を怠ることです。
分かっていながら投資しなかったことで、これまでに1兆円くらいの利益を逃してきました。
その昔、ビルの会社の株を買おうとしなかったのは、ビルの会社のことを良く知らなかったからです。
決断を下すほどの材料も下調べもしていませんでした。
投資をする場合、裏づけのない行動をすべきではありません。
ですから、ビルの会社の株を買わなかったことを失敗とは言いません。
私にとって失敗(最悪の投資)とは、決断を下すだけの知識や材料ががあったにもかかわらず、そのタイミングを逃してしまうことです。
行動すべきチャンスに、投資しなかったり、小規模に押さえることなのです。
小切手を切るべき時に、その判断を誤る。
買うべき時に買うことに躊躇することは、表に出ない失敗なのです。
このような失敗は何度もありましたし、そのことで大きな損失もでています。
しかし、失敗することは投資の世界では当然のことですし、そのことにこだわって、、いつまでも考えることは、時間の無駄になります。
大事なことは失敗しても、前向きに次のチャンスを考えることです。」
ゲイツ:
「当社の場合、一番痛い失敗は、
<将来現実に起きる変化を見逃してしまうこと>です。
変化を見逃し、後手に回ることは、多くのチャンスを失うことになるのです。
例えばテレビ番組をインターネットを使って配信するアイディアを他社に先駆けて考えていたら、おそらく、5年は早く始めることができたでしょう。
我々は新しいものに何でも飛びつく訳ではないのですが、飛躍的に発展する分野に入り込む隙があって、もしも、それを見逃してしまったら、取り返しの付かないミス(失敗)となるのです。
そのためには、新しいテクノロジーや、社会が求める事、他社の情報など、いろいろなデータをより早く入手しなければなりません。
出遅れることもまた、企業にとっての命取りとなりますからね。」
質問:多くの人に影響を与える立場の方として、何か考えていることはありますか?
ゲイツ:
「この国の恵まれない境遇の人達と広く接することが重要です。
なぜ、この人達は苦しんでいるのか?
何が、この人達を苦しめているのか?
その事を理解した上で、考えるべきなんです。
理想を言えばこの国だけでなく、もっと恵まれない世界中の国々に行って、貧困の現実を見てきて欲しいと思います。
そして、何かを感じてきてください。
そして、
<何かを感じたなら行動すべきなのです。>
ほんの僅かな援助で、劇的な変化を起こすこともできるんです。」
(ビルの財団は、世界のポリオワクチン投与費用の90%を負担している。)
質問:私達の世代の抱える深刻な問題点と、それについて私達は何ができるのでしょうか?
ゲイツ:
「国家間や国内の格差の問題が非常に深刻になっていると思います。
格差が広がることは、社会の流動性を損ない、アメリカの目指した平等の観念が崩れてしまいます。
ですから、平等を守るための取り組みについて、皆で考えなければなりません。」
バフェット:
「私達の国(アメリカ)は幸運の切符を持っているのです。
現代のアメリカで生まれたという事実。
高い教育を受けたという事実。
200年前の時代であれば、今と同じ能力や技術を持っていてもそれを生かせなかったでしょう。
同じように、世界には、才能があってもそれを生かせない人達が多くいます。
彼等は、私達のような幸運の切符を持っていないのです。
10年前、ビルと一緒に中国に行きました。
そこには賢い人達も大勢いましたが、彼らにはチャンスがなかったのです。
少なくとも当事は。
私達は、国内の恵まれない人達を助けるだけではダメだと思うのです。
ビルとメリンダが取り組んだように、もっと世界をみて世界中の恵まれない人達に手を差し伸べるべきなのです。
世界には、貧困の悲しい現実や残酷なことが、まだまだ沢山あります。
あなたがたの世代はそういうことにもっと取り組んで欲しいですね。」
(ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団 :ビル・ゲイツが、妻のメリンダ・ゲイツ、父親のウィリアム(ビル)・ゲイツ・シニアと共に作った慈善団体。)
質問:何か「特別な力」を持てるとしたら何がいいですか?
ゲイツ:
「寿命を延ばしたり、ものすごい速度で文字が読めるとか?」
バフェット:
「ビルは私の3倍も早く読めるじゃないか。
そのことだけでも、私は人生を10年は無駄にしている(笑)。
真面目に答えよう。
世界中の核兵器の削減ですね。
人類の存亡にかかわることです。
残念ながら、核の知識は世界に飛び出してしまった。
悪魔を解き放ってしまったのです。
世界の中には、悪いことを考えている人達もいます。
核が悪い人達の手に渡り、使われてしまったら、どのような現実が待っているのか?
難しいことですが、いずれは皆さんの手で、核の削減や廃絶をかなえて欲しいと思います。」
質問:物にあふれたこの時代に、子供達に対してどのような正しい価値観を教育すべきですか?
バフェット:
「私が有名になるのは遅かったので、子供達は私が金持ちだとは思っていませんでした。
そこそこ儲かってからも昔と同じ家に住んでいましたからね。
でも、ビルの場合は子供が生まれた時にはもう有名人だったから大変だったでしょう。」
(バフェットは、1957年に315万円(当時)で購入した家に現在も住んでいる。)
ゲイツ:
「ウチの場合、子供の成長期には大きな家がありました。
そんな中にいると子供達は勘違いするのです。
<何でも手に入るのだ>と。
ですから、小遣いを与える時には、きちんとしたルールを定めなければなりません。
今日お菓子を買ったら、明日は買えない。
と理解させることが必要です。
限界があることを教えることです。
また、幸い子供達と旅をして、世界の現実を見せることもできました。
そして、この国(アメリカ)がいかに無駄の多い国なのか?
私達が当たり前と思っている暮らしが、いかに特別なものなのかを知る機会になったと思います。」
(ゲイツは、ワシントン州にある119億円の邸宅に住んでいる。)
バフェット:
「ウチの子供は、世間の基準に照らし合わせれば、金持ちの部類に入るでしょう。
しかし、私の財産を子供達は相続しないことになっています。
私の財産の99%はいずれは慈善事業に寄付することになっているからです。
だから、子供達は大金持ちにはなれないのです。
私は、莫大な富を継承することには興味がないんです。
だって、それはアメリカらしくありません。
才能を持つもの全員に公平なチャンスがある。
それがこの国の精神であるはずです。
<裕福な家に生まれたから、無条件で社会の中の高い地位を手に入れられる。>と言った考え方は、アメリカ的ではないと私は思います。」
(バフェットは、3兆円以上をビル&メリンダ・ゲイツ財団に寄付すると約束している。)
つづく。
上巻へのリンク。
http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/c515054b2c36c262e3a5aa280d2fad47
下巻へのリンク。
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