Mamiのひとりごと

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エリーチェ宣言

2011-02-21 | 私のつぶやき

先日の小児がんのイベントで、聖路加国際病院小児科医長の石田也寸志先生より「エリーチェ宣言」のお話がありました。

この「エリーチェ宣言」のこと、皆さんに知ってほしいなぁ~と思うので、頂いた資料をここに転記してみたいと思います。

 

Lpng term survivors of childhood cancer : Cure and Care The Erice Statement

小児がん経験者:その治癒とケア 

エリーチェ宣言

 

【概要】

小児期に診断され、無事治療を完了し成人期を迎える小児がん経験者の数は時代と共に増加し続けている。

 2006年10月27日から29日、シシリー島エリーチェにおいて、International Berlin-Frankfurt-Munster(I-BMF)Early and Late Toxicity Educational Committee(ELTEC)主催による会議が開かれた。参加者はヨーロッパ13カ国から招待された多分野の小児がんの専門家や経験者45名(小児がん専門医、心理学者、看護師、疫学者、そして小児がん経験者とその親)に加え、北米からの専門家5名である。

小児がんの治癒とはいつなのかまた継続的なフォローアップとケアの必要性が考えられる時期とその根拠について話し合われた。いくつかのワークショップに分かれ、小児がん経験者の治癒とケアとはどうあるべきか、個人的なあるいは専門家としての経験から得た考えを発表し合い、その概要を一つの声明として世に宣言することが本会議の目的である。

 

1、小児がんの治癒とは、そしてそのケアのあり方とは

 小児がんの治癒、およびそのケアには長時間を要するが、目標は小児がんとなった子どもが、病気から立ち直り、十分に機能を回復し、望ましいQOLの下、自立した一人の成人として、同年代の人々と同じように社会に受け入れられるようになることである。

    ☆☆☆

【声明文】

1、治癒とは、原疾患であるがんが治ることを意味するもので(注釈を参照)、残存する絵障害や治療による副作用の有無もしくはそれらの可能性があるかないかは問わない。これらの治癒の副作用は個々の患者特有の因子と治癒関連のリスク因子に基づいたフォローアップケアによって、長時間をかけ進められるものとして、原疾患とは別枠で考えられる。治癒は小児がん経験者、および彼らを取り巻く社会で使用される言葉であり、これに対し、長期生存者はケアと注意を要する後遺症の存在を専門家に注意喚起する科学的研究や関連文献で使用されるべき言葉として使用を続ける。

 

2、がんの子どもへのケアには、診断、治療そして予後に関して十分な包み隠さない情報を子どもの親と子供本人へ提供することも含まれる。小児あるいは思春期にある子どもとその家族への治癒の告知は、担当する小児がん専門医によって、すべての関係者の同意と了解を得、さらにその子どもの個人的な背景を考慮した上で行われる。

 

3、小児がん経験者とその家族への種々のリスクに関する説明は、彼らが容易に理解できる言葉を用い、可能な限り前向きになれるよう表現に留意する。効果的な説明を行うためには、高度の人間関係に関する力量が必要になる。治癒また晩期合併症、原発腫瘍の再発、あるいは二次がんの可能性に関する説明は、本人と家族へ口頭で行うだけではなく、書面にても行う。原発腫瘍への治癒が完了したら、小児がんチーム(PCU)の責任下で、疾患自体と治療中に発生した合併症(発症した場合)の要約を本人とその親へ提供する。この要約には原疾患および原疾患や治癒に起因して起きる可能性のある晩期合併症と原発がんのフォローアップ検査の種類と時期に関しても提示されていなければならない。本人が成人した際には、生涯にわたってケアが出来る医療従事者へ紹介する。小児がん治療に起因すると思われる問題が発症した場合は最適な専門家へ紹介する。PCUは可能な限りその患者の全医療記録を専門家に提供しなければならない。また患者の長期にわたる状況記録を入手し、保管しておくこともPCUの責務とする。

 

4、原疾患、あるいは治療に起因する晩期合併症の監視もまた、継続的なフォローアップシステムに組み込まれていなければならない。それにはPCUに配慮の行き届いたフォローアップ外来システムが構築され、多分野からの専門家(小児がん専門医師、看護師、心理学者、ソーシャルワーカー、それに個々の患者に必要と思われる関連分野の専門家のうち少なくとも1名かそれ以上を含む)が関与するチームが編成されていなければならない。

 

5、小児がん経験者への的確で明確なアドバイスと支援の提供には、検査や研究によって更なる情報収集の努力を行うことがPCUに求められる。また研究の優先順位決定には、小児がん経験者、およびその家族と医療従事者との協力も必須となる。根拠に基づいたカウンセリングの実現には、アドバイスの根拠となる研究データ収集を要し、それらの研究結果はデータ提供者と小児がん経験者およびその家族へ提示されなければならない。それによって将来、再び協力を得ることにもつながる。

 

6、治療中、そして治療終了後も、小児がん経験者とその家族への組織的な支援をする努力も要する。すなわち、本人の年齢に合わせて情報提供を行い、現在および将来、発症の可能性がある諸問題に対処する対策を提供することで励ましていくような努力である。ほとんどの小児がん経験者、およびその家族が直面する諸問題にうまく対処している。だからこそ、さらにそのような力を補強することは、彼らが問題を直視し、それを乗り越え、立ち直る支えとなるであろう。そして将来に向かって、より力強く、自信を持って進むことができるであろう。特に移行(transition)の際にはこのような支援が重要となる。移行とは医療形態の変化で、それまでの治療が終了したとき、治療が終了し長期フォローアップケアプログラムに入ったとき、そして小児科から成人の医療システムに移ることである。この移行をスムーズに行えるように専門の相談者が配置されていなければならない。

 

7、前述したように、小児がん経験者の大半は直面した諸問題に比較的うまく対処しており、事実、驚くべき立ち直りを示す比率も高い。しかしながらその一方で、一般集団群に比較すると医療的、心理的、あるいは社会的なケアを必要とする状況に直面するリスクが高まっている小児がん経験者も現存する。医療システムは、どのような状況にあろうとも全ての小児がん経験者に開かれたものでなければならない。

 

8、将来の計画、また心理社会的的介入の計画、実行に関する話し合いには、親や同胞、そして本人と親しい人々を常に積極的に取り込むことが重要である。加えて、小児がん経験者やその家族は、他の経験者やその家族と情報を共有し、方策を共に考え、彼らを勇気付ける存在としても大きな役割りを担うことができ、望ましい医療サービスの計画と実行にも協力者として期待できる。親や支援グループを多角的医療ケアチームのメンバーとして加えるべきである。

 

9、社会全体が、小児がんは治癒する時代となったことを知り、その事実を認めなければならない。過去30年間に小児がん治療は目覚しい進歩を遂げ、何百、何千、またそれ以上と、数多くの小児がん経験者を世に送り返した。その経験者達は現在、学業を修了し、大人の世界へと足を踏み入れ、社会に不可欠な存在として生き生きと生活しており、そのような小児がん経験者の数は年々、増加している。それゆえ小児がん経験者も教育、職業、保険、そして医療ケアを一般と同様に受けることができる社会とならなければならない。

 

10、同じ国の中でも、そして国の違いによっても、治療法と生存率に格差が出ているのが現状で、それは社会経済的な背景と医療資源の配分の違いが大きく関わっており、このことは国際的な課題として喚起していく必要がある。

 

※注釈

全てのがんの治癒を正確に定義することは不可能であるが、小児がん経験者の数が増加している現状を捉え、治癒”という言葉を以下のように定義することで参加者間の同意が得られた。すなわち、小児がんの治癒とは、「身体的障害や治療の副作用の有無やその可能性のあるなしにかかわらず、原疾患の状況のみに帰する。そして小児がん治療を受けた子どもの原疾患が原因で死につながる確率が、一般集団での同年齢児の死亡(原因の如何に関わらず)確率よりも高いとは認められなくなった時点で、その子どもは小児がんが治癒したと考えられる」と定義した。

様々な小児悪性疾患があるが、腫瘍の種類によって異なるものの、ある一定の年数が経過すれば、その小児がん経験者は治癒とみなされる。治癒”とされる時期は、腫瘍の種類、病期、そしてその他の生物学的要因によって決定される。一般には診断後、再発なしで2-10年経過すれば治癒とされる。またいくつかの腫瘍に関しては、腫瘍発症の原因として、特定の腫瘍に反応する強い遺伝的素因が潜在しているために”治癒”の正確な定義づけは難しいと思われる。

 

以上

 

 

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