Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

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韓国でさかんにCD化されているようです

2013-10-04 | SSW
このブログの更新もすっかり怠っていまして、久しぶりの投稿です。
新しいレコードではないのですが、このブログで紹介した Bill Jerpe と David Habeck が
CD化されました。 このブログが再発見のきっかけとなっていたとしたら嬉しい限りです。

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Tedeschi Trucks Band

2012-02-10 | Live Report
■渋谷公会堂 / Tedeschi Trucks Band■

  素晴らしいライブでした。 音楽による至福のひととき。 天国にいるかのように満たされた 2 時間 20 分を堪能してきました。

  テデスキ・トラックス・バンドは、ギターの Derek Trucks とギター&ヴォーカルの Susan Tedeschiを中心に結成された11 人編成のバンド。 Derek は Derek Trucks Band として、Susan はソロ名義で活動してきたミュージシャンですが、それが合体し現代のアメリカンロックの至宝ともいえるサウンドを作りだしています。
  メインの 2人に加え、ホーンセクションが 3人、コーラス 2人、ドラムス 2人、キーボード 1人、ベース 1人という編成で渋谷公会堂のステージはほぼ一杯に。 19 時ちょうどに時間どおりにメンバーが登場。 フレッド・ニールの「噂の男」でコンサートはスタート。 ジャケットやポスターで見る Susan Tedeschi より、生のほうがずっと可愛らしいと思ったら、その声の迫力に圧倒されてしまいました。 アンプの調子が悪いのか、デレクの背後にあるアンプを調整するためにステージの袖からスタッフがなんどもやってきたりして、序盤は集中力をやや欠いたような気分になってしまいました。 でもそれは観客のほうであって、Derek Trucks のギタープレイや音色に影響が出たとまでは言えないような気がします。 コーラスやホーンのメンバーが陽気に踊ったり、キーボード奏者がフルートを演じたりと、個々のメンバーがしっかりとフューチャーされながらライブは進行。 どの曲か忘れてしまいましたが、トロンボーンが曲のなかで歌いながらメンバーを紹介するあたりは、余裕綽々という感じでした。 
  デレクはチェリーのギブソン SG を時々持ちかえながらも、神がかったソロを披露。 ピックはいっさい使用せず、爪でも引っかけない独特の奏法はまさにオリジナリティのかたまり。 おそらくは指のハラの部分でなでるように弾いているのだと思いますが、まさにミリ単位以下の精度があのうっとりするような音色を作り出しているのでしょう。 デレクの奥さんでもある Susan Tedeschi のほうも激しいギターソロを披露。 それを腕組みしながら眺めている Derek Trucks といった場面もあって、ライブっていいなあとしみじみ感じたりして。
  結局、昨年のアルバム「Revelator」からは「Learn How To Love」、「Bound For Glory」、「Midnight In Harlem」そして「Love Has Something Else To Say」の4曲のみでしたが、毎日セットリストが変わるという彼らですので、いつでもなんでもできてしまうのでしょう。

  ライブが終わってから友人と 3人で吉祥寺に移動して飲みに行き、盛り上がってしまって深夜 1時を過ぎてしまいましたが、この感動の余韻を消したくない気分です。次回、来日したら毎回行くぞと誓い合ったのでした。

■渋谷公会堂 / Tedeschi Trucks Band■

2012年2月9日
東京 渋谷公会堂

<Set List>

Everybody’s Talkin’
Comin’ Home
Days Is Almost Gone
Rollin’ And Tumblin’
Learn How To Love
Wade In The water
Stevie Groove
Darlin’ Be Home Soon
Nobody’s Free
That Did It
Uptight
Bound For Glory

Midnight In Harlem
Love Has Something Else To Say

19:00頃開演 21:20頃閉演

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Ron Cornelius

2012-01-28 | SSW
■Ron Cornelius / Tin Luck■

  年始になると、「ミュージック・マガジン」のベストアルバムや「レコード・コレクターズ」の再発ベスト 10 みたいな企画が毎年盛り上がります。 再発ものなどを見ていると、オリジナル盤の初 CD 化というものはめっきり少なくなり、発掘音源とのセット売りのようなものが増えているように思います。 さすがに CD が生まれて 30 年以上経過しているので、この期に及んで世界初 CD 化みたいなことは稀なのかもしれません。 
  そんなことを思いながら、メジャーの Polydor からリリースされたにも関わらず、さっぱり CD 化の気配がない Ron Cornelius のアルバム (1971年) を取り出してみました。 このアルバムは 7 年近く前に安価でシールドで入手できたのですが、CD 化されるのを期待して聴かずにずっと保存していたものです。 しかし、さすがに中身を聴きたい気持ちが抑えられずに、さきほど開封してしまいました。

  レコードを手にすると、参加メンバーが Ron Corneluis を含めて 3 人しかいないことに引き寄せられます。 プレイベート盤かと見間違うほどのクレジットですが、サウンドはそのとおりで 3 人編成によるきわめてシンプルで素朴なもの。 けしてスカスカという感じではなく、必要最小限の音によって音の隙間を意図的に描き出しているというようなイメージでした。 
  多くの人がこのアルバムのベストトラックとして、1 曲目の「I’ve Lost My Faith In Everything But You」をあげていますが、その論調にはまったく同意です。 このアルバムの最初の音、それは優しいピアノの音色なのですが、もしかするとそのままピアノソロのアルバムなのではないかと思ってしまうほどでした。 たまたま個人的にここ数日、Bill Evans を聴いていたからかもしれませんが、この曲は僕にとって少なからず衝撃的な出会いでした。 もっと早くシールドを破っていればと後悔です。それにしても、この曲は素晴らしいの一言。 ピアノからボーカルが入ってくるあたりの時の流れは至高のひとときでした。 ベースやドラムスが徐々に荒々しく迫ってくる中盤も見事です。
  2 曲目以降はギター主体のサウンドとなり、スワンプ色が濃いギターの弾き語り「Swim Brown Dog」、ブルージーな「Like It Used To Be」、Neil Youngみたいな「How Could You」、バーボンでも飲みながらギターを弾いているようなインスト「Left Handed Lover」と続きます。
  B 面も流れは変わらず、ゆったりとしたミディアム「Evening Is Coming」、アコースティック・スウィング「Indoor Outdoor Lovin’」と進み、大作の「I Wonder」へ。 この曲は久しぶりにピアノの音色も入り、ギターとのオーバーダビングによってアルバムの中でも最も厚みのあるサウンドに仕上がっています。 1曲目につづくハイライトはここでしょう。 ラストの「Still Gone」はギターの音色が硬めな弾き語り。 孤独感とか喪失感みたいなものが全編に漂っています。

  この名盤をリリースした後の Ron Cornelius の活動はよくわかりません。彼のソロ名義の作品はこのアルバムだけとなってしまったようですが、その謎めいた消息不明もこのアルバムの枯れた味わいとシンクロして、このアルバムの評価をゆるぎないものとしているのでしょう。 
  ところが、ネットの威力はすごいもの。 何と Ron Cornelius が 2010 年に「Like It Used To Be」を歌っている映像が YouTube に存在していました。 なんと彼は健在であるばかりでなく、しっかりと音楽と向き合っていたのです。 素晴らしいことではありませんか。

■Ron Cornelius / Tin Luck■

Side-1
I’ve Lost My Faith In Everything But You
Swim Brown Dog
Like It Used To Be
How Could You
Left Handed Lover

Side-2
Evening Is Coming
Indoor Outdoor Lovin’
I Wonder
Still Gone

Produced by Ron Cornelius for Tin Luck Ink.
Engineers : Neil Wilburn & Robin Cable
Album Cover : Henry Beer
Photography : Mr. & Mrs. Elliott Randy
All songs by Ron Cornelius except ‘I Wonder’ & ‘How Could You’

Ron Cornelius : guitar, keyboard
Joe Davis : bass
Paul Distel : drums

Polydor PD5011
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Ellis And Lynch

2011-12-24 | Christian Music
■Ellis And Lynch / Life Is You■

  今年最後に取り上げるアルバムです。 震災以降、めっきりアップする回数も減ってしまいましたが、これからも月に 1 回か 2 回程度のペースでゆっくりとやっていきたいと思っています。

  Ellis And Lynch は Ron Ellis と Rob Ellis そして Collene Lynch と Mike Lynch という二組の夫婦によって結成されたグループ。 こちらのサイトによると、5 枚のアルバムを発表しているようです。 そのなかでも愛らしいジャケットが素晴らしい「Life Is You」は 1976 年に発表された 3 枚目の作品。 全体的にアコースティックな音作りを基本としながら、リラックスして余裕のあるクリスチャン・ミュージックが堪能できるアルバムとなっています。 曲のタイトルを見ても、すぐにクリスチャン・ミュージックだと判るものばかりです。

  アルバムはソフトロック的なハーモニーが美しい「Life Is You」でスタート。 背後で薄く弾かれるピアノが気品を高めています。 教会の合唱隊向けのような「Blessing On The King」は SSW 的な味わいはないものの軽やかなフルートが彩りを添えています。 つづく「Hymn To The Father」は暗闇から光を求めて歩み出すような力強さを感じる曲です。  「Praise Song」はシンプルなワルツですが、ここでもフルートやストリングスなどのアレンジセンスが光ります。 イントロのトロピカルなパーカッションにびっくりする「Come Lord Jesus」はハワイアンっぽさが意外ですが、ハーモニーの美しさに集中すればさほど気になるものではありません。

  B 面に入ると木漏れ日フォークのような小曲「Choices」から一気に癒され、つづく「Listen To The Word」でも良質なフォークロックが継承されます。 美しいフルートが聴こえてくると、「A Song For Mary (Meditation)」のはじまり。 唯一のインスト・ナンバーはピアノとフルートによるヒーリングの世界です。 心が開かれたあとにつづく「Father Of Peace」はスロウなワルツ。 クリスチャン・ミュージックの教科書みたいなメロディーと普遍性にあふれています。 「The Light Has Come」はマイケル・フランクス的なサウンドに絶妙なハーモニーが添えられるあたりが聴きどころ。 ラストの「May The Roads Rise Up」はマンドリンの音色がクリスマス気分にさせってくれる素晴らしい曲。 ゆったりとしたバラードからは、すべての人々の幸せを願っているかのように聴こえます。

  やはりこのアルバムは B 面でしょう。 A 面は「Life Is You」が出色ですが、その他の曲がいまひとつ。 それに比べて、B 面は個々の楽曲の出来栄え、曲順ともに素晴らしい仕上がりです。 Ellis And Lynch のアルバムはこの「Life Is You」しか聴いたことがありませんが、他の作品への期待感は高まるばかりです。

  今年は本当に悲しくてつらい出来事が起こりました。 音楽を聴く気分にもなれないほどの人も多かったと思います。 そんななかで、今年最後に取り上げたのが、人類の平和、神への祈り、家族への愛を歌ったアルバムでした。

  「Life Is You」

  まさに人生とはきみのこと。 レコード収集に関して何の文句も言わない嫁さんとまだサンタクロースのことを信じている娘にこの言葉を捧げます。

■Ellis And Lynch / Life Is You■

Side-1
Life Is You
Blessing On The King
Hymn To The Father
Praise Song
Come Lord Jesus

Side-2
Choices
Listen To The Word
A Song For Mary (Meditation)
Father Of Peace
The Light Has Come
May The Roads Rise Up

Written, arranged and produced by Ellis and Lynch
Recorded and mixed at Kaye-Smith Studios, Seattle, Washington

Ron Ellis : guitar, bass, mandolin, lead vocal
Rob Ellis : piano, fender Rhodes piano, finger cymbals
Gregg Keplinger : drums, cow bell, tambourine, vibra-slap, maracas,congas
Collene Lynch : 6-string guitar, lead vocal, harmony, triangle
Mike Lynch : guitar, 12-string guitar, bells, harmony, soprano recorder, arp string ensemble
Mary Lowney : flute, wood block
Dave Lemargee : 5-string banjo
Buzz Richmond : cabasa, claves

Ra-o Records R14-1976
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Ragnarok

2011-11-26 | Sweden
■Ragnarok / Ragnarok■

   長い間、ひそかに愛聴しつづけてきたアルバムが紙ジャケットで CD 化されたことを知りました。 北欧の秘宝ともよべるスウェーデンのフォークロックバンド Ragnarok が 1976 年に発表したファースト・アルバムです。 このブログではイギリス・ヨーロッパのレコードは取り上げていませんので特別な扱いとなりますが、このアルバムの素晴らしさを多くの人に知ってもらいたい思いで取り上げてみました。
   このレコードとの出会いは 1980 年前後だったと思います。 当時プログレにも興味を持っていたので、自然とスウェーデンの Silence レーベルの存在を知るようになりました。 そのなかでもジャケットの素晴らしさから手に取ったのがこの Ragnarok だったのです。 フォーク調ということは、何かしらの情報で知っていたのですが、このアルバムがまさか全編インストゥルメンタルで幻想的かつ叙情的なサウンドだったとは思いも知りませんでした。 しかし、その内容の素晴らしさはブリティッシュ・フォークのファンをも唸らせるもので、ほぼ完ぺきな楽曲と構成からして、まさに名盤と呼べるものだったのです。

   アルバムは 2 本のアコースティック・ギターによる変奏曲のような「Farvel Kopenhamn」で幕を開けます。シンプルな響きはまさにアルバムのプロローグです。つづく「Promenader」はエレピとギターのユニゾンが幻影的な名曲。 中盤から後半にかけてのエレクトリック・ギターのソロの官能的な音色、そして変化を重ねるアレンジなど彼らのサウンドを象徴する代表曲といえるでしょう。 2 本のギターを軸にした「Nybakat Brod」は主旋律をフルートに委ねながら、急ぎ足で家路につく人のようなテンポで進んでいきます。途中で入ってくる人の嗚咽のような SE も素晴らしい効果をあげています。 「Dagarnas Skum」は、即興的な入り方から徐々に主題が明確になってくる入り方が素晴らしく、ツインのエレキギターが登場するあたりの抑制的で且つエモーショナルな盛り上がりは見事としか言いようがありません。 フルートによるクールダウンなど、ジャズ寄りな展開を演じながらも、Ragnarok の作曲能力の高さを痛感する出来栄えです。 この曲も何度聴いても飽きることのない名曲中の名曲です。

   遠くからの呼び声のようなフルートだけのイントロ楽曲「Polska Fran Kalmar」につづく「Fabriksfunky」は、最もジャスっぽい展開をみせる楽曲。 叫ぶかのようなフルートを効果的に交えつつ、叙情派のプログレに似た味わいが魅力となっています。 アコースティック・ギターとフルートによるアンサンブル「Tatanga Mani」、印象的なイントロで目が覚めた感じの「Fjottot」は遊園地で遊んでいるような気分になるユニークな存在。 この 2 曲の流れは静と動のコントラストがはまっています。 透き通ったピアノの音色から始まる「Stittje-Uppbront」は徐々にギターやフルートに主導権を渡しながらも、次第にドラマティックに展開していきます。 アルバムを締めくくる「Vattenpussar」は心のひだのようなエレピから徐々に感情が揺さぶられるように盛り上がりをみせ、ソプラノサックスが交差するあたりでの恍惚とした雰囲気はオーロラを見ているような気分です。 そして徐々に音数が減り、楽器たちも退いて、見事なクロージングを迎えます。 

   こうして数年ぶりにアルバムを聴きましたが、すべての楽曲や展開が頭に入っていました。 そういえば、レコードを買った当時はカセットにダビングして何度も聴いていたような気が。 このように唯一無比の出来栄えを見せた、奇跡的なアルバムですが、かなり強引に似たアルバムを一つ上げるとするならば、アメリカの CCM 界の巨匠 Phil Keaggy がリリースした「Beyond Nature」ではないかと思います。サウンドの空気感や叙情感はまったく異なりますが、アコースティックな楽器によるアンサンブル重視の展開という点では類似点があるように思います。 どちらも NHK スペシャルのようなドキュメンタリーの BGM に使われてもおかしくないということも共通点でしょう。

   北欧の Silence レーベルを代表する名盤を生み出した Ragnarok ですが、合計 4 枚のアルバムをリリースしています。 セカンドもアナログで持っているのですが大幅にメンバーチェンジをしており、いきなり後期のクリムゾンのようなメタリックなサウンドに変化しているのには驚きました。 ですから、ここにお越しの方は、このファーストだけを気にかけていただければと思います。 秋から冬への季節がお似合いな名盤です。

■Ragnarok / Ragnarok■

Sid-1
Farvel Kopenhamn
Promenader
Nybakat Brod
Dagarnas Skum

Sid-2
Polska Fran Kalmar
Fabriksfunky
Tatanga Mani
Fjottot
Stittje-Uppbront
Vattenpussar

Lars Peter Sorensson : trumoor
Stefan Ohlsson : trummor, git
Pedek Nabo : tvarflojt, piano, git
Staffan Strindberg : elbas
Peter Bryngelsson : gitarrer
Henrik Strindberg : elgitarr, tvarflojt, sopraninoblockflojt, sopranosax

Musik inospelad hosten 75

Silence SRS 4633
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桐ヶ谷俊博

2011-10-23 | Japan
■桐ヶ谷俊博 / 秋・あなたに■

  秋・・・いくつかのハーフトーンの中に すんだハイトーンが映える。

  これはレコードの帯に書かれたキャッチコピー。 紅葉が徐々に始まりだしたこの季節にぴったりなアルバムを取り出してみました。 桐ヶ谷俊博が 1979 年、22 歳のときに発表した唯一のアルバムです。 桐ヶ谷俊博は、当時すでにデビューしていた桐ヶ谷仁の弟。同時代の松任谷由実のアルバムに Buzz の二人とともにコーラスでクレジットされていることでも知られています。 
  そんな桐ヶ谷俊博の最大の魅力はキャッチコピーにもあるとおりのハイトーンボイスです。 その声は小田和正でもなく細坪基佳でもない繊細さと気品高さを兼ね備えており、国立音大で学んだというプロフィールからか、クラシカルな佇まいも感じさせます。 その彼の声が唯一味わえるのこの「秋・あなたに」なのです。

   アルバムは何と言ってもシングルとなった「ひとりで海に」の素晴らしさに圧倒されます。 ♪ひとみをとじてしまえば~♪で始まるサビのスケール感とセンチメンタリズムは弱冠22歳の男子が作り出したものとは思えません。もちろん全編にわたってアレンジを行った後藤次利のサポートがあってのサウンドだとは思いますが、この曲だけでもこのアルバムを持っている意味があります。 動画サイトで検索すると出てきますので、興味あるかたはチェックしてみてください。 A 面の次点は純粋さが前面に出たワルツ「手紙」でしょう。 「立ち話」はアップな曲調が彼の声に合わない気がしますし、「夢」のような和風な作品は「ふきのとう」に軍配があがります。 「大人になると」はスタジオ・ミュージシャンがちょっと出しゃばりすぎでしょう。
  B 面は、リラックスした気分の「パリアッチョ(道化師)」でスタート。 爽やかなポップ感が個人的には気に入っています。 以降もクオリティーの高い曲が並び、流れとしてはA面よりもスムースです。 当時のシティ・ポップス感あふれる「改札口」、ピアノをバックにしたシンプルなバラード「夢多き旅人よ」、一転してギターのみの「おやすみ」もゆったりしたワルツ。 兄の桐ヶ谷仁的なワールドです。 そしてラストの「秋・あなたに」へ。 この曲が「ひとりで海に」に優るとも劣らない素晴らしさです。 アルバムのラストに相応しいメランコリックなイントロ&アウトロ、そして秋のうろこ雲を見上げているかのような壮大なメロディーは、完ぺきに近い楽曲となりました。 欲を言えば、サビをもう一度リピートしてほしかったところですが、それはリスナーの勝手なわがままでしょう。 「ひとりで海に」とともに、この曲は布施明などの歌唱力のあるシンガーにカバーしてもおかしくありません。 

   桐ヶ谷仁のオリジナルアルバムは、4枚目の「バーミリオン」以外は CD 化されましたが、このアルバムは未だに CD 化されていません。 「ひとりで海に」や「秋・あなたに」を秋の海辺で聴いて、その世界にどっぷり浸かっみたいので、早く CD になって欲しいものです。

  ♪うなずくだけのやさしさと秋をあなたに返して閉じる♪  ~ 「秋・あなたに」

■桐ヶ谷俊博 / 秋・あなたに■

Side 1
ひとりで海に
立ち話
手紙

大人になると

Side 2
パリアッチョ(道化師)
改札口
夢多き旅人よ
おやすみ
秋・あなたに

Produced by 末弘厳彦
Directed by 木崎純久
Arranger by 後藤次利

Electric guitar : 松原正樹、土方隆行
Acoustic guitar : 笛吹利明
Bass : 後藤次利
Keyboard : 佐藤準、田代真紀子、桐ヶ谷俊博
Drums : 林立夫、田中清司
Latin : 斉藤伸、穴井忠臣
Harmonica : 八木伸郎
Horns : Jake H. Concepcion、斉藤清、衛藤幸雄、数原晋、新井淑之
Percussion : 渋井博
Strings : 加藤グループ
Chorus : 岡崎広志、尾形道子、伊集加代子、門司肇、桐ヶ谷俊博

SMS Records SM-25-5039
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Stone House

2011-10-02 | SSW
■Stone House / New Again■

  いよいよ 10 月ということで秋らしいジャケットの作品を取り上げました。 シアトル出身の男女デュオ Stone House が 1978 年に発表したアルバムです。 Stone House はすべての作曲、多彩な楽器とボーカルを手掛ける Mark Brown と Kathy Hundley によるグループ。 アコースティックなサウンドをベースに、二人の伸びやかなボーカルと息の合ったコーラスが堪能できる等身大のナチュラルさが最大の特徴です。 ちょうどジャケットのような草原に佇んでいるかのような清々しさと、心の翳りを投影するような物憂げな感覚とが絶妙に交錯しながら、アルバム全体の色彩感が保たれているという印象です。

  美しいピアノのイントロに導かれた「Those Days」は、KathyとMark が交互にボーカルを務め、次第に重なっていくという展開が見事なバラード。 Tom Sparks による天に駆け昇るようなギターも魅力です。 つづく「Tangled」はギターを軸としたカントリー・タッチの曲。 「Michigans」はピアノとヴァイオリン、そして透明感あるギターの音色が絡み合って、夕暮れのうろこ雲をみているような気分にさせられます。 Mark がひとりで歌いきることで、雄々しくも淋しげな情景を描き切っていました。 アレンジがジャズっぽい「Blue Day」につづく「But Love Me」は、Kathy の独壇場というバラード。 彼女のアルト・ボイスが全編に広がり、ちょうど「Michigans」と対の存在のように感じられました。

  B 面に移りましょう。 「Bless My Soul」は Kathy と Mark のハーモニーが緩急自在に展開される表情豊かな楽曲。 アレンジも素晴らしく、Stone House の典型的なサウンドとして紹介できる仕上がりです。 つづく「Make It New Again」は、リリカルなピアノに Kathy のアルトが重なり、美しいメロディーが奏でられる気品あふれる佇まい。 クリスチャン・ミュージックのような「Father」は Muriel Saunders のヴァイオリンとピアノの間奏部分が聴きどころ。 静寂が打ち破られギターが激しく刻まれ「Denver」へ。 この曲は個人的には今一つですが、つづく「Fallin’ Star」はラストに相応しいスケール感と美しいハーモニーに満たされた楽曲です。 これぞStone House という楽曲でしょう。 彼らが表層的な情緒指向に陥らないのは、ふたりの低音の魅力だということをここで再認識することができました。 
  このようなアコースティックなサウンドを奏でた Mark Brown と Kathy Hundley ですが、どうして Stone House というハードロック・バンドみたいな名前にしたのでしょうか。 その理由は判りませんが、ちょっと勿体ないという印象は否めません。

  さて、このアルバムには 1980 年に AOR の名盤といわれる「Rain Or Shine」を発表した Dave Raynor が参加しています。 当時のシアトル人脈だと思いますが、彼のファンであれば要チェックですね。 もちろん彼のソロ作品を期待してはいけませんが。

■Stone House / New Again■

Side-1
Those Days
Tangled
Michigans
Blue Day
But Love Me

Side-2
Bless My Soul
Make It New Again
Father
Denver
Fallin’ Star

Produced by Mark Brown and Kathy Hundley
Engineered by Jim Wolfe and Cal Wood
All Songs by Mark Brown

Kathy Hundley : vocals
Mark Brown : piano, acoustic guitar, organ, vocals
Garrett Smith : bass
Martin Lund : sax, flute, clarinet
Dave Raynor : electric guitar
Tom Sparks : electric guitar on ‘Those Days’
Muriel Saunders : violin on ‘Father’
Rob Shaw : violin on ‘Michigan’

Windmill Records WM 8447


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Rick Lane

2011-09-23 | SSW
■Rick Lane / Then Came A Wind■

  前回に続いて詳細が不明な SSW を取り上げます。 アルバム発表当時はミネソタ州 Wayzara に住んでいた Rick Lane の唯一と思われるアルバムです。 レコーディングはメイン州で行われ、レーベル名も存在しないという自主制作盤です。 レーベル名が存在しないというのは自主制作盤のなかでも珍しいことですが、なぜか品番らしき 10 桁の数字だけが不思議に堂々とクレジットされています。 アルバムの発表年のクレジットが無いので、この数字に何かヒントや暗号が隠されているか思いましたが、とくに何もなさそうです。 
  買った当初は 1970 年代のかなり前半のものだと推測したこのアルバムですが、ある 1 曲の存在で 1976 年以降の作品だということが判明しました。 それは、Paul McCartney の「Silly Love Songs」(邦題は「心のラブソング」)のカバーが収録されているからです。 この曲は 1976 年の 4 月にシングルカットされていますので、Rick Lane が耳にしてカバーしたのは、それ以降ということになります。 ミネソタの自主制作盤にしては、意外にもメジャーなヒット曲のカバーですが、仕上がりはとても素晴らしいもので、Paul McCartney のコアファンの蒐集アイテムになってもおかしくありません。

  このアルバムは Rick Lane のアコースティック・ギター&ボーカルと、Doug Russell のベースによって構成されており、Rick Lane の瑞々しく心洗われるような美しいボーカルが全編にわたって堪能できる作品です。 多くの SSW ファンが理想的なサウンドと考えている領域の中に確実にタッチしており、躊躇せずに名盤と呼ぶことができます。
  クレジットによると Rick Lane は結婚してからメキシコに移住していたのですが、不幸なことに癌に冒されたことを契機に、ミネソタに戻ってきたようです。 その闘病生活のなかで制作されたのがこのアルバム。 そうした背景を想像しながら聴くと、Rick Lane の震える声からは生への欲望、未来への希望、そして神への祈りといったものを感じ取ることができます。 そうした歌詞からはクリスチャン・ミュージック的な要素も強く感じ取れますが、ここにはあくまでも自然体な Rick Lane の姿が投影されており、それがメイン州の冷えた空気感とともに封じ込めらているのです。
   オープニングの「Then Came A Wind」は重苦しい楽曲なので、アルバムの今後の展開を考えると、息がつまりそうになります。 しかし、Lee Sklar を思わせる Doug Russell のベースがリズムを刻む「Twenty-third Paslm」や「Blessed」から、落ち着きを見せてきます。 そして「Silly Love Song」では、オリジナルに登場するメロディーはすべて網羅するなど、多重録音やコーラスのないカバーとしては申し分ない仕上がりです。 自然への畏敬を感じさせる「Tree Song」や「Flyin’ Like A Eagle」とアルバムは充実した流れで A 面を終えます。

  B 面はやや軽くなった感じがするのですが、それは 1曲 1曲が短いからかもしれません。  アルペジオの音色が清々しい「Lost Horizon」、激しい曲調が生へのパワーを感じさせる「You’ve Heard My Voice」、Doug Russell のベースが歌うような「The Lord’s Prayer」、トラディショナルのような「Weave Me The Sunshine」とスムースに進んでいきます。 ラストの「Thank You For The Day」は今日一日、無事に過ごせたことへの感謝の気持ちを表した曲。 病気からの回復を期しているRick Lane の気持ちが痛いほど伝わってきます。 ♪Thank You For The Day♪ を執拗に繰り返すさまは、彼の偽らざる心境なのでしょう。

  秋の夜長に SSW は良く似合いますが、季節的にもぴったりなこのアルバム。 日が短くなった淋しさを感じる夜、人の心にそっとしのびこみ、魂を震わせる力を持っています。

■Rick Lane / Then Came A Wind■

Side-1
Then Came A Wind
Twenty-third Psalm
Blessed
Silly Love Songs
Tree Song
Flyin’ Like A Eagle

Side-2
Lost Horizon
You’ve Heard My Voice
The Lord’s Prayer
Weave Me The Sunshine
Thank You For The Day

Thank you Doug Russel gor the fine bass.
Thank you Syu Davis for producing and engineering
Recorded and mastered at Eight Track Recording Studio, South Blue Hill, Maine

No Label 911068-1877


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Paul Carney

2011-09-17 | SSW
■Paul Carney / Threshold■

  詳しいプロフィールのわからない Paul Carney が 1970 年代初頭に発表した唯一のアルバムです。 「Vacation (Spring 1970)」というタイトルの曲があることから、1970 年の作品だとする向きもありますが、この情報だけでそれを結論付けることはできません。 そこで、あまりに少ないクレジット情報をたよりに、このアルバムそして Paul Carney について探ってみました。 ところが、Stanley Kahan と Billy Arnellで検索しても、ほとんど出てきません。 どうやら二人の共同プロデュース作品はほとんど存在しないようなのです。 1968 年の Billboard 誌に二人の名前を発見しましたが、その時点で Billy Arnell が 19 歳だったことが判明した程度です。 このアルバムが仮に 1970 年の作品だとしたら 21 歳ということになります。 そのことから、Paul Carney もおそらく 20 代前半の若さだったのではないかと勝手に思い込みながら、成熟しきっていない果実を食すように、レコードに針を落としてみました。

  控えめなピアノの音色に導かれて始まる「Save This Wednesday」は、落ち着いたバラード。 次第に厚みを増してきてからの女性コーラスがソフトロック的な佇まいです。 つづく「Lady Love」も似た傾向ですが、今度はホーンセクションが色づけ役として登場。 そのせいで少しファンキーなアレンジに仕上がっています。 「When I’m Not With You」はギターと軸にした音数の少ない楽曲。 リズムセクションが排除されたことで、耐えきれない淋しさや喪失感がじわりと伝わってきます。 ピアノ系の楽曲に戻った「Don’t Go Away」は広がりのあるミディアム。 曇り空の下にいるような翳りからは英国的なものを感じます。 A 面ラストの「I Need To Find Myself」はやや毛色の違うソウルフルなアレンジ。 ホーンセクションも耳障りな感じがして、ここまでの雰囲気を損ねてしまっている気がして残念です。

  B 面に入ります。 「Product Of The Past」は複雑なピアノからプログレ的な展開となり意表を突かれます。 ちょうど Andy Pratt の初期のような異彩を感じますが、ボーカルパートが始まると落ち着きを見せてスケール感のあるストリングスも登場します。 この曲のアレンジはさきほど述べた若き Billy Arnell によるものでした。 つづく「There We We’re Together」は典型的なピアノ系バラード。 のちに映画音楽界で活躍する Lee Holdridge の気品あふれるアレンジが魅力的です。 「Pawned My Soul」はその雰囲気を引き継ぎ、より浮遊感を加えたような仕上がりで、このあたりの流れがアルバムのハイライトという印象です。 つづく「Hangover」は Al Gorgoni がアレンジでクレジットされた小曲。 3 分に満たないインタリュード的な楽曲ですが、間奏部でこのアルバム唯一のギターソロが短めに挿入されてるのは Al Gorgoni の意志表示でしょう。 ラストの「Vacation (Spring 1970)」は逆に 6 分を超える大作です。 この曲ではラストに相応しくPaul Carney のエッセンスがすべて吐き出されていると言えるようなサウンドです。 けして華美なものではありませんが、ストリングスやフルートなどによる荘厳なオーケストレーションと濃淡を鮮明にしたアレンジは見事です。 この曲も Billy Arnell のアレンジということで、彼の才能の片鱗を感じ取ることができました。

  冒頭にも書きましたが、あまりに情報が少ない Paul Carney のアルバム。 おそらくはニューヨーク産だと思いますが、ここに閉じ込められたほんのりとした甘さと切なさは、当時の空気感をそのまま閉じ込めたものでした。 このアルバムは Paul Carney の謎めいた登場と失踪が生み出した、幻のような作品かもしれません。

■Paul Carney / Threshold■

Side 1
Save This Wednesday
Lady Love
When I’m Not With You
Don’t Go Away
I Need To Find Myself

Side 2
Product Of The Past
There We We’re Together
Pawned My Soul
Hangover
Vacation (Spring 1970)

Produced by Stanley Kahan & Billy Arnell
Engineer : Bob Fava

Mercury SR-61345
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Bill LaBounty

2011-08-07 | AOR
■Bill LaBounty / Promised Love■

  夏らしいジャケットの代表格といえば、このアルバム。 AOR のなかでも、通に人気の高い Bill LaBounty が 21 世紀レコードから 1975 年に発表したファースト・ソロ・アルバムを取り出してみました。 Bill LaBounty といえば、Curb Record s時代の 3 作「This Night Won’t Last Forever」(1978)、「Rain In My Life」(1979)、「Bill LaBounty」(1982) が有名ですが、このファーストのみ未だに CD 化されていません。 

  あまり知られていませんが、Bill LaBounty はソロ・デビュー以前に Steve Eaton と Fat Chance というバンドを結成していました。 今から思うと、スーパー・グループのように思いますが、さほどの内容ではありません。 しかし、ここから巣立った2人がともに名盤を世に残すことになったことを考えると意義深いものを感じます。
  1974 年に Steve Eaton が「Hey Mr. Dreamer」をリリースした翌年に発表された本作は、すでに Bill LaBounty の魅力であるセンチメンタルな男の哀愁が十分に感じられる作品となっています。 

  このアルバムには後に「This Night Won’t Last Forever」で再収録される曲が4曲収録されています。 全 9 曲ですから、その比率はかなり高いですね。 その中でも彼の代表曲のひとつ「Lie To Me」を「This Night」バージョンと聴き比べをしてみたところ、ほぼ同じだということが判明しました。 サックス・ソロの有無とかボーカルの微妙な違いはあるので、おそらくは「This Night」バージョンはオリジナルに手を加えたものか、別テイクだったのではないかと推測します。 憂いを帯びたバラード「Crazy」、「I Hope You’ll Be Very Unhappy With Me」に至ってはほぼ完全一致なのですが、このアルバムで聴くことのできるソウルフルなシルキー・コーラスが「This Night」バージョンでは切り落とされ、その代わりにストリングスなどで厚みを補充していることがわかりました。 これは、今回はじめて聴き比べて初めて発見できたことです。 残る 1 曲、「Open Your Eyes」はコーラスも含めて全く同じバージョンではないかと思います。 

  こうして耳慣れた 4 曲を聴き比べましたが、さすがに再録されるだけの楽曲のクオリティだという印象でした。 残る 5 曲については、まず「Take A Step (Yesterday Waltz)」が筆頭格でしょう。 ストリングスが緩やかに包み込む憂いを帯びたワルツですが、徐々に高揚するエモーションを抑える Bill LaBounty のボーカルが素晴らしく、個人的にはアルバムのハイライトです。 「Together」はディープなソウルのようなテイスト。 「Always Be Near」ノリのいいサザン・ロック風。 巷ではフリーソウル系として人気のナンバーだとか。 ふうん、という感じです。 「Pretty Little Angel」は軽快なサビだけが印象に残るがその他は凡庸な出来。 ラストの「Another Drunk」も、サウンドは悪くないのですが楽曲の出来はいまひとつ。 フェード・アウトしたかと思ったら、ゆっくりフェード・インしてくる感じは悪くないのですが、ほろ酔いセッションみたいな、緩さのほうが前面に出てしまっています。

  Bill LaBounty の習作ともいえる本作から3年して、名盤「This Night Won’t Last Forever」が誕生することになるのですが、その際に Bill LaBounty がこのアルバムから 4 曲を選んだ経緯は判りません。 シングルがスマッシュ・ヒットしたので、アルバムの完成を急いだというのが、最も考えられるストーリーではないかと思います。 あまり夢がない話ですけど。

素敵な裏ジャケはこちらから。

■Bill LaBounty / Promised Love■

Side 1
Lie To Me
Together
Crazy
I Hope You’ll Be Very Unhappy With Me
Always Be Near

Side 2
Take A Step (Yesterday Waltz)
Pretty Little Angel
Open Your Eyes
Another Drunk

Produced by Jay Senter

20th century records T-492

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Bat McGrath

2011-07-23 | AOR
■Bat McGrath / The Spy■

  前回とりあげた Robert John のジャケットに雰囲気が良く似ていることから、今日は Bat McGrath が 1978 年に発表したアルバムを取り上げてみました。
  Bat McGrath は、1969 年に Bat McGrath and Don Potter でレコード・デビューした SSW 。 その後 1970 年にファースト・ソロ「Friends And Love」を発売し、この「The Spy」が 4 枚目のソロとなります。 彼のソロは本作しか聴いたことがありませんが、初期のフォーキーなサウンドから徐々に AOR 寄りに変化していったようです。
  クレジットを見ると、プロデューサーには Jimmy Webb や Randy Edelman などを手がけた Matthew McCauley と Fred Mollin の強力タッグに加え、盟友 Don Potter も全面的に協力しており、盤石な態勢でこのアルバムが作られたことが想像できます。

  オープニングを飾る「The Spy」の流麗な始まり方は、贅沢な味わいの AOR アルバムの始まりを予感させる素晴らしいもの。 シルクのようなストリングスや甘いギターの音色も相まって、欠点の見出せない名曲に仕上がっています。 ホーンセクションが入って賑やかな「Grow Light」に続くメロウなバラード「You Should’a Asked」は適度にエモーションが抑制された佳作。 「How Would You Like A Punch?」はカントリー・テイストが感じられるワルツ。 スケール感のあるバラード「You Never Fooled Me」で A 面はゆるやかに幕を閉じます。

  テンション高めのロックンロール「Naples」で B 面がスタート。 つづく「Perfect Fool」はアルバムを代表する秀逸なバラード。 堂々とした佇まいと哀愁が重なり合った曲調は後世に残るべき出来栄えだと思います。 つづく「I Think It Stars With ‘M’」はさりげないタッチだけが印象に残る2分20秒の小曲。 つづく「Angel」はアコギのソロやフェンダーの音色が切なく響くメロウなナンバー。 サビのメロディーなどは AOR のコンピレーション・アルバムに選曲してもけして劣ることのない味わいです。 ラストの「Mornin’ Harv」も流れを組みながら、よりリラックスしたムード。 過ぎ去っていく夏を惜しむかのようにアルバムはエンディングを迎えます。

  こうしてアルバムを聴き通してみると、AOR のアルバム・ガイドに入れても差し支えのない作品だということを再認識しました。 あいにく CD 化されていないことから、あまり認知されていないことはもったいないと思います。 前回の Robert John もそうですが、良質な大人向けのロックを奏でながら、もてない片思いの男を想起させるジャケットなのは、その時代の流行りだったのでしょうか。 それとも、一人でもてまくっていた Boz Scaggs を意識してしまったからなのでしょうか。
  Bat McGrath のサイトを見るとすっかり白髪になった初老の男性が写っています。 きっと、彼は気ままにマイペースで音楽をやっているのでしょう。 そして今はより身近な形での音楽を楽しんでいるようで「House Concert」という宅配ライブを行っていました。 

■Bat McGrath / The Spy■

Side 1
The Spy
Grow Light
You Should’a Asked
How Would You Like A Punch?
You Never Fooled Me

Side 2
Naples
Perfect Fool
I Think It Stars With ‘M’
Angel
Mornin’ Harv

Produced by Matthew McCauley and Fred Mollin
Strings Arranged by Matthew McCauley
Horn Arranged by Matthew McCauley
All Lyrics and music ny Bat McGrath except ‘ I Think It Stars With ‘M’’ by Bat McGrath and Don Potter
Recorded at Manta Studio Company, Tronto

Fred Mollin : acoustic guitar, percussion, background vocals, saxophone
Matthew McCauley : percussion, background vocals, synthesizer
Don Potter : acoustic guitar
Tony Levin : bass
Tom Szczesniak : bass
Terry Clark : percussion
Etha Potter : electric guitar
Bob Mann : electric guitar, slide guitar
Bobby Ogdin : fender rhodes, piano, organ
John Capek : fender rhodes
Larrie Londin : drums
Debbie Fleming : backgrounda vocals
Colina Phillips: backgrounda vocals
Sharon Lee Williams: backgrounda vocals
Liam McGrath : background vocals
Bert Hermiston : saxophone
Russ Little : horns
Pat LaBarbera : horns
Don Englert : horns
Gary Morgan : horns
Ron Dann : steel guitar
Andrew Hermant : banjo

Amherst AMH-1011
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Robert John

2011-07-18 | AOR
■Robert John / Back On The Street■

  節電の夏が始まりました。 連日のような猛暑日、そして熱帯夜。 まだ 7 月下旬なのであと 1 ヵ月以上もこんな毎日が続くかと思うと体じゅうから力が抜けていく感じです。

  そんななか、1980 年の AOR 名盤がようやく CD 化されるというニュースを知りました。 数ある AOR の名盤のなかでも、納涼効果は指折りの存在ともいえるこのアルバムが夏の盛りにCD化されるとは節電対策の一環ではないかと思えるほど、ぴったりなタイミングです。 

  本作「Back On The Street」は Robert John の 4 枚目のアルバムにして彼の現時点での最終作です。 1 枚目「If You Don’t Want My Love」(1968)と 2 枚目「On The Way Up」(1972)はレコード会社の事情による再発というニュアンスが強く、ほとんどの曲がだぶっているので、このアルバムが実質的には3枚目と考えたほうがいいかもしれません。 
   12 年間で 4 枚とは、かなり寡作な人ではありますが、そのキャリアは侮れません。 彼は 1979 年に発表した「Robert John」から、シングル「Sad Eyes」をわずか 1 週ではありますが、全米ナンバー 1 に送り込んでいるのです。 The Knack と Michael Jackson の間にうまくハマった幸運もありますが、全米チャート 1 位を記録したミュージシャンにしてはその存在感はあまりにも希薄です。 しかも彼は 1972 年に The Tokensの「ライオンは寝ている」をカバーして、全米 3 位に送り込んだ前歴もあるのです。 それなのに、彼の存在はウスバカゲロウのように、弱々しくはかなく思えます。 それは、1980 年以降の消息不明とウスバカゲロウの短命がオーバーラップすることもありますが、Robert John の最大の魅力である独特のファルセット・ボーカルに通じるものを感じ取ってしまうからでしょう。

  アルバムは完ぺきな入り方をします。 イントロのエレピ、やや遅れて入ってくるリズムセクション。 この数秒間だけで至福の空間へ誘われる感じです。 その「(So Long) Since I Felt This Way」は素晴らしいメロディとノスタルジックな歌詞が融合した傑作で、しかもエレクトリックシタールまで挿入され、すでにメロメロになってしまいます。 つづく「Hey There Lonely Girl」は 1970 年の Eddie Holman の名曲のカバー。 ほんのり甘く香る彼女の匂いを感じながら、海辺の夜にこんな曲を聴けたら最高に幸せでしょう。 ちなみに、この曲は山下達郎もカバーしています。 つづく「Just One More Try」も流れを汲んだメロウなバラード。 「On My Own」は、キャッチーなサビが日本人受けしそうなミディアム。 恋の甘さと切なさがまじりあった「Give Up Your Love」はメロウなさざ波のように完ぺきな A 面を締めくくっていきます。
  B 面は誰でも知っている The Four Seasons の「Sherry」のカバーで幕開け。 Robert John のボーカルと選曲センスのマッチングの正しさを実感する出来栄えです。  つづく「Winner Take All」はやや憂いのある感触からさりげないサビへの移行が素晴らしく、地味ながらこのアルバムを引き立てる名曲です。 サックスソロもクールな後味を残します。 ギターのイントロは日本のニューミュージックのような「Hurtin’ Doesn’t Go Away」は Robert John の自作曲。 曲が少し弱いかなあという印象です。 タイトル曲の「Back On The Street」は Jackson Browne が歌ったほうがいいのでは、と思うような爽快なナンバー。 サビのリピートで転調することもリスナーに読まれてしまうような予定調和な展開に好感するのですが、3回もするとは侮れませんね。 ラストの「You Could Have Told Me」は、お決まりのスムース&メロウな楽曲。 夜の海辺でモヒートでも飲みながら、アルバムを聴き終えた後のことを考えるカップルのために与えられた 3 分 22 秒です。
 
  しかし、34 度くらいある昼間に窓を開けて自然の風だけでこのアルバムを 2 回聴きましたが、不思議と熱さを感じませんでした。 冗談のように聞こえるかもしれませんが、このアルバムは体感気温を 2 度くらい下げて感じさせる効能を持っていると思います。 嘘だと思ったら、Amazon で CD を買ってみてください。
  
  いまは 2011 年、ほとんどの名盤が CD 化されているのに、今日まで忘れられてしまったこのアルバムが今年再発されるのは、何かの奇遇としか思えません。 今年の夏はクルマのなかではこのアルバムばかり聴くことになるのでしょう。 映画「波の数だけ抱きしめて」のような世界感に浸りたい方にもお薦めの名盤です。

■Robert John / Back On The Street■

Side 1
(So Long) Since I Felt This Way
Hey There Lonely Girl
Just One More Try
On My Own
Give Up Your Love

Side 2
Sherry
Winner Take All
Hurtin’ Doesn’t Go Away
Back On The Street
You Could Have Told Me

Produced by George Tobin
Arranged by George Tobin and Mike Piccirillo
Recorded and mixed at Studio Sound Recorders, North Hollywood, California

Drums : Craig Krampf, Ed Greene on ‘Hey There Lonely Girl’
Bass : Scott Edwards, Wade Short on ‘Hey There Lonely Girl’
Guitars : Mike Piccirillo, Bill Neale played solo on ‘Just One More Try’
Keyboards : Stewart Levin, Bill Cuomo on ‘Just One More Try’ and ‘Back On The Street Again’
Synthesizers : Mike Piccirillo
Sax : Joel Peskin
Harp : Katie Kirkpatrick
Bells : Mark Zimosky
Electric Sitar : Mike Piccirillo
Background Vocals : Robert John and Mike Piccirillo, Edna Wright and Darlene Love on‘Hey There Lonely Girl’

Horn arrangements : Gary Scott on ‘(So Long) Since I Felt This Way’ and ‘winner Take All’

EMI America SW-17027

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Gene Corbin

2011-06-19 | SSW
■Gene Corbin / Caribbean Moon Over Pittsburgh■

  ペンシルベニア州ピッツバーグ産のほぼ自主制作盤と思われる Gene Corbin のアルバムです。 タイトルからは、Nick DeCaro で有名な「Under The Jamaican Moon」を思い出しますが、多少は意識したのかもしれません。 アフロヘアでギターを抱える Gene Corbin の姿を見ると、彼が抱いていたカリブ海へのイメージは夢とか妄想に近いものだったような気がします。 レゲエのリズムを取り入れたとか、カリビアン特有の楽器が使われているという形跡はありません。 むしろ、Gene Corbin はアコースティック・ギターを軸としたオーソドックスな SSW だと思います。 ニューイングランドの独特の森の香りや冷たい空気感がまったくないのは、彼の南国指向の現れですし、それをタイトルとして伝えたかったのでしょう。

  アルバム全体はミディアムなテンポに支配され、Gene Corbin の低音ボイスがマイルドに楽曲を包み込んでいます。 SSW の声としてはかなり低いものなので、苦手な人も少なからずいるかもしれません。 弾き語りの声ではなく、むしろソウル系の声だと思います。 ただ、それを彼が自己分析して起用しているのか時おり挿入されるソプラノ・サックスの音色が好対照となっており、効果的に使われています。 そのクールな音色と鋭角な存在感は、実はこのアルバムの大きな魅力となっています。

  その影の主人公は David Kreimer という人物です。 A 面では「Hurry Home Babe」と「Please Stay」で、B 面では「New England Song」で見事なソロを決めています。 クレジットを良く見たら彼は「New England Song」では Gene Corbin を追いやってリードボーカルまで務めていました。 プロデューサーとエンジニアにも彼の名前があるので、このアルバムの主導権は David Kreimer のほうに分があったのではないかとすら思ってしまいます。 

  Gene Corbin のトロピカルな嗜好が表れた楽曲としては、「Caribbean Moon」や「Hole In My Pocket」などがあり、ジャズっぽい雰囲気が強く出た「Backpackin’ Blues」も彼の持ち味がうまく出ていました。 深みのあるバラードとしては、「Point Of View」や「Wanderer’s Waltz」などもあげられるでしょう。

  このアルバムが発表されたのは 1978 年ですが、この作品を同時代のクオリティの高い SSW や AOR 作品と比べてしまうのは酷かもしれません。 ギターの音色やアレンジ、曲の水準もそれほど悪いものではないのですが、どことなく野暮ったい雰囲気が全体を覆っているのが気になります。 それを唯一、突き破るのが前述のソプラノ・サックスだったというわけです。 Gene Corbin の唯一と思われるこのアルバムは、その後の消息不明を必然と思わせるような微妙な完成度とともに、徐々に人々の記憶から消えていくことでしょう。

■Gene Corbin / Caribbean Moon Over Pittsburgh■

Side-1
Caribbean Moon
Hurry Home Babe
Tiffany Jean
Human Bean
Please Stay
Linin’ Track

Side-2
New England Song
Hole In My Pocket
Country Dream
Backpackin’ Blues
Point Of View
Disillusiooned Gypsy
Wanderer’s Waltz

Produced by David Kreimer and Gene Corbin
Engineers : Jerry Reed, Davie Kreimer, God, Bill Thompson
Recorded, mixed and mastered at Jeree Recording Studio, New Brighton, PA

Gene Corbin : acoustic guitar, lead vocals(except track 7), hand and mouth
David Adomites : bass on tracks 10,12, vocals
David Kreimer : soprano and alto saxophone, vocals, lead vocals on track 7
Mike Evert : bass on track 1,2,4,5,7,8,9,11
Howard Bennett : drums and percussion
George Jones : congas
Carol Chew : flue on track 5
Matt Blistan : trumpet on track 11

Jeree Records 811077X-174
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Rumer

2011-06-03 | Live Report
■Shibuya O-east / Rumer■

  久しぶりのライブレポートです。 この間に、まったくライブに行かなかったという訳ではありませんが、ここで紹介するに値するライブになかなか出合えませんでした。 しかし、今年になって姉妹ブログ「Till The Sun Turns Black」で絶賛したイギリスのシンガーソングライター Rumer が一夜限りのプレミアム・ライブを行うということで、渋谷の O-east まで出かけてきました。

  まず驚いたのは、Rumer 本人の姿です。 ジャケットでは華麗でソフトロックっぽさを感じさせるソフトフォーカスな写真でしたが、いざ登場となるとかなりの迫力ボディー。 水色のワンピースは一歩間違えるとハワイのムームーみたいな感じです。 とはいえ、いったん彼女が歌いはじめるとアルバムそのままの空気が会場全体を包み込みました。

  編成は、ギター、ベース、ドラムス、キーボードに加え、トランペット、サックス、コーラス 2 名という大編成で Rumer を含めると 9 名。 これだけのバックを従えてのライブは、ある程度予想した通りのアルバム再現に近い演奏。 ライブならではのチャレンジやアレンジはほとんどありませんでした。 それも無理は無いと思うのは、Rumer はまだアルバムを 1 枚しか発表していない新人だからです。 彼女の唯一のアルバムは、2011 年のベストアルバムに選ばれること必至の名盤ですので、まだチェックしていないかたは、こちらをご参照ください。
  ライブは、Hall& Oates の「Sara Smile」や、モータウンの「You Really Got A Hold On Me」などのカバーを無難にこなしつつ、アルバムでもラストを飾った David Gates の「Goodbye Girl」では、最も大きな拍手を浴びるなど、かなり想定内の展開で 1 時間があっという間に過ぎ去って行きました。
  アンコールの「Stone Cold」が終わり、照明も明るくなり、BGM もメジャーな「After The Love Has Gone」になってので、すべてが終了かと思ったら、メンバーがステージに表れて、「実は今日はLumerの誕生日なんだ」と….。 そして、スタッフからバースデー・ケーキが持ち込まれ、観客も一体となって「Happy Birthday」を合唱するという展開に。 ローソクの火を Lumer が一気に吹き消して、さすがにここで終わりかと思ったら、アンコールの拍手が鳴りやまず。 

  まさかと思ったら、Rumer が再びステージに表れて 「Anything Particular? 」と尋ねると、観客から「Alfie」の呼び声が。 「Challenge」と一言そえつつ、Rumer がバカラックの名曲を歌ったところで、コンサートは終了。 ここまで 1 時間とちょっとくらいで終了しました。 時間的には短いですが、無駄な MC や引き延ばしもなかったこともあって、かなり密度の濃い時間を過ごすことができました。
  このようなライブは渋谷ではなく、六本木の Billboard Live が良く似合うと感じながら、会場を後にしました。 

■Shibuya O-east / Rumer■

2011年6月3日
東京 渋谷 O-east

<Set List>

Come To Me High
Am I Forgiven
Saving Grace
Slow
Blackbird
Sara Smile
Lady Day
Take Me As I Am
Goodbye Girl
Aretha
You Really Got A Hold On Me
Thankful

Stone Cold

Alfie

19:10頃開演 20:10頃閉演




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The Way

2011-05-29 | Christian Music
■The Way / Can It Be ?■

  5 月なのに梅雨入りということで、憂鬱な季節の訪れが例年に比べて非常に早くやってきました。 日本全体を覆う不透明感と夏の電力不足を目前にして暗い気分にはなりたくないのですが、この梅雨入りの早さが悪い方向に影響が出ないように願うばかりです。
  そこで、西海岸の爽快なクリスチャン・ミュージックを取り出してみました。 The Way という 5 人組が 1975 年に発表した彼らのセカンドにあたります。 同時代の作品と比較しても洗練されたアレンジとグルーヴ感あふれる演奏が彼らの魅力となっており、CCM 臭さもほとんど感じないことから、AOR ファンを中心に幅広い層に受け入れられる内容に仕上がっています。 さっそく、全 8 曲を聴いてみることにしましょう。

  オープニングの「A Cowboy’s Dream」はいきなりウェストコースト・サウンドの教則本みたいな楽曲。 爽やかなメロディーとコーラス、駆け抜けるようなペダル・スティールそしてギターソロには、この土地の乾いた空気と青空無しでは生まれてこないものでしょう。 欠点の見出せない仕上がりでした。 やや落ち着いたミディアムの「Days Of Noah」は親しみやすいメロディーとそれを増幅する間奏のギターソロが魅力的。 テンポを落とすエンディングからメドレー的に「I’ve Been Sealed」が始まるあたりのアレンジも見事です。 この曲も息のぴったり合ったハーモニーが魅力で、ややカントリー色が出ているもの全く問題ありません。 アグレッシブなドラム、そして鋭角的なギターに導かれてアップテンポの「Do You Feel The Change」へ。 パーカッションがラテンっぽさを出していますが、メインのコーラスの美しさは滑空感あふれるもので、そこへ粘っこいツイン・ギターソロが挿入されるあたりは完ぺきに近い展開。 このギターソロは日本人にはたまらないインパクトがあり、この曲をアルバムの代表曲に推す人が多いのも十分に納得できます。

  充実度の高い A 面に比べると B 面はやや劣勢です。 「Living On The Bottle」は Stevie Wonder の「迷信」を連想させるリズムセクション、そしてキーボードの音色に彼らの嗜好が反映されています。 つづく「Sittin’ In The Pew」はバンジョーやペダルの音色からしてカントリー色の濃いミディアム。 切れのいいギターソロで持ち直しますが平凡な出来でした。 「Beared Young Man」はストリングスの展開など重々しい雰囲気のスロウで、美しいハーモニーが聴きどころですが、彼らの持ち味である爽快感に欠ける仕上がりです。 ラストの「Can It Be ?」はややトロピカルな雰囲気を漂わせた浮遊感あふれるメロウなナンバー。 この微妙な翳りは Seals And Crofts を連想させるものでした。

  こうして、アルバムを振り返ってみましたが、B 面でやや勢いを失うものの、トータルのクオリティはかなり高いものでした。 大胆な表現をすれば、The Eagles の「On The Border」(1974年)が好きな人には躊躇なくお薦めできると思います。 これほどポピュラーな作品なのにもかかわらず、世の中に浸透しなかったのは、やはり CCM というジャンルにカテゴライズされてしまったことが要因なのかもしれません。 The Way はこのアルバムを発表して惜しくも解散してしまうのです。

■The Way / Can It Be ?■

Side-1
A Cowboy’s Dream
Days Of Noah
I’ve Been Sealed
Do You Feel The Change

Side-2
Living On The Bottle
Sittin’ In The Pew
Beared Young Man
Can It Be ?

Produced by Al Perkins
Engineer : Bill Taylor
Recorded at Mama Jo’s Studio, North Holywood, California

The Way
John Wickham : lead guitar, bass, acoustic guitar, background vocals
Gary Arthur : bass, acoustic guitar, synthesizer, background vocals
Alex MacDougall : drums, congas & timbals, percussion
Dana Angle : lead & slide guitar, banjo, acoustic guitar & vocals
Bruce Herring : acoustic guitar, bass, vocals

Michael escalante : keyboards
Dave Diggs : piano on ‘‘A Cowboy’s Dream’
Al Perkins : pedal steel on ‘A Cowboy’s Dream’

Maranatha Music HS-777/16
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